幸田フミの2018年気になるITトレンド:AIによる影響
最近のITトレンドの中でも私が最も気になっているのは、AI(人工知能)の普及が私たちに与えるインパクトです。AIが今以上に身近な存在となった時に、家庭やビジネスにどのような影響が生じるのか。そして人類は、社会でどんな役割を果たすことになるのかに興味を持ったので、研究機関の発表やニュースをもとに自分なりに考察してみました。
<生活編>
日常生活をサポートするAIの普及
昨年11月に国内発売された「Amazon Echo」をはじめとするAI搭載スマートスピーカーの音声検索により、PCやスマホを必要としない検索方法が普及し始めました。この新しい検索方法(「コミュニケーション」と呼んでもいいかもしれません)は私たちの日常生活に急速に浸透し、2020年までに検索方法全体の30%を占めると見られています。
そして近い将来、オンラインサービスのインターフェースがテキストでのやりとりではなく、チャットボットとの会話形式になるという予想もあります。日常で話すほかの誰よりも、チャットボットと会話をする回数が多くなる可能性だって否めません。仲の良いカップルには信じ難い状況ですね。あと1、2年もすれば、家の中でパートナーの名前を呼ぶことよりも、「Alexa(※1)」を呼び出してチャットボットに話しかける回数が増えてしまうのかもしれません。
家庭用AIロボットはどうでしょうか。まず連想するのは2017年に一般販売がはじまった「Pepper」ですが、高額な維持費がかかるため、興味はあっても一般家庭ではなかなか手を出しづらく、販売台数は伸び悩んでいます。
そんな中、2万円台で手に入るAIロボット「COZMO(コズモ)」が登場しました。タカラトミーが発売した手のひらサイズのCOZMOは、人工知能によってその場の状況を自分で判断し、まるで人格をもっているかのように喜怒哀楽の感情を豊かに表現するロボットです。
そして12年前にサポートが終了した犬型ロボット「aibo(アイボ)」も、1月11日(ワンワンワンだそうです)にWi-FiとLTEを搭載した、AIロボットとして再発売されることになりました。
他にも英語学習用AIロボット、ペット見守り用AIカメラなど、用途に特化したAI機器も次々と登場しています。高齢者福祉施設では介護用ロボットの導入も進みはじめ、家庭用ヒューマノイドロボットの販売準備も始まりました。近い将来AIロボットと暮らす日常が当たり前になりそうです。
<ビジネス編>
世界的に拡大し続けるAIビジネス
2017年は「AI元年」でした。AIロボットは自動車、医療、製造業での普及がめざましく、北米における昨年の受注台数は前年同時期の14%増、売上高は10%増と産業として大きな成長を見せています。
供給量拡大の要因としては、センサーの値下がりにより、AIロボットの導入を試みる企業が増えたこと、そして需要拡大を見込んで倉庫や工場向けのオートメーションロボットを製造販売する企業が増加したことなどが挙げられます。Amazonによる商品出荷自動化促進の試みも、小売流通業に大きなインパクトを与えましたね。
1,000万枚の猫の画像を学習してインターネット上にある猫の画像を識別できるようになったグーグルのAIや、プロの棋士に勝利した囲碁AIの「Alpha Go」で知られるようになったディープラーニング技術は、パターン認識と自律学習が得意です。身近なところでは、ショッピングサイトでのオススメ商品のレコメンドなどに活用されています。この関連技術は現在アメリカや中国を中心に、日々刻々と開発が進んでいます。
身近なビジネスではどうでしょうか。AI開発の分野では少し遅れをとっている日本でも、AIが活躍するようになりました。たとえばパン屋さんのレジとして開発された「BakeryScan(ベーカリースキャン)は、トレーに載っている複数のパンを自動的に判別して価格を算出するAIレジ。人為的ミスを防いだり人手不足を解消するのに役立ちそうです。
自治体の職場でもAIが活用されはじめています。さいたま市ではAIによる「保育施設入所希望者の割りふり」実験が行われました。毎年市役所では保育施設への入所を希望する8,000名の児童を、300の施設へ様々な条件にそってふり分けていました。毎回30人の職員が50時間をかけて行っていたこの作業を、AIはわずか数秒で完了させました。今後は全国の自治体でAIの活用が見込まれています。
2018年以降は、レストランや、ホテル、病院などの施設でAIの活躍の場がさらに増えると予想されています。
<人間編>
改めて考えたい人間の役割
ミスを起こしたり労働時間に制約がある人間に変わって、AIが仕事をするようになったら、コスト削減はもちろん、作業のスピードアップを劇的に図ることができるでしょう。そして作業の効率化に留まらず、AIは示された課題に対してあらゆるデータを集積し、高度な知能によって最適な答えを導いてくれます。
では人間の役割はいったいどこにあるのでしょうか。「AIが普及した社会で、私たちに仕事は残されているのだろうか?」と不安を抱いてしまいそうです。しかし事業においても社会においても、問題意識を持ち「課題」を見つけ出すのは私たち人間です。そして未来がどうあるべきなのか、理想とするゴールを見出すのも人間の役割です。
ちなみに2020年には、AIが人間から180万の仕事を奪うと同時に、230万の仕事を創り出すのだそうです。たとえばAIをうまく活用するためのトレーナーなど、AIに特化した新しいITのスキルは求められるでしょう。
また、研究開発やエンジニアリング分野においては、ソリューションをAIに任せたとしても、課題を提示し、向かうべき方向性を描き、プランニングをする役目は私たち人間にあります。
私たちが人としてあるべき姿までマシーンに決めてもらう、なんて残念なことにならないように、正しいことを判断・選択できる美意識を磨いておきたいものです。
AIと共存する社会の中で価値を持つ人の手仕事
ものづくりの世界でもAIによるオートメーション化が進み、目の前のものを忠実に再現したり、市場のデータをもとに売れ筋商品を予測して商品を生産することが以前よりも簡単にできるようになりました。売れているものを単純に真似て作られたものが、これまで以上の速さで売られては消えていくでしょう。
しかしそんな時代だからこそ、使う人や環境のことを考えて作られたもの、匠の技によって生み出されたものに人は惹かれ、愛着をおぼえるのではないでしょうか。
AIの普及によってものづくりの過程が効率化され、より良いものを作り出すことができるのはとてもありがたいことです。そんな時代の恩恵に感謝しつつ、働く女性にとって使いやすく、他には代えがたいと思ってもらえるものづくりを通して、FUMIKODAが提案する「スマートラグジュアリー」を伝えていきたいと思います。
※1:Amazon Echoシリーズにも搭載されている、Amazonの音声認識AIエージェントの名称
Author:幸田フミ