開発ストーリーvol.2〜神戸の人気パティスリー「à la campagne」グランシェフの挑戦

ビジネスパーソンの皆さまは特に、自分自身のためだけではなく御礼や会合のお土産のお品としてお菓子を購入される方も多くいらっしゃると思います。しかし、お酒がお好きな方には甘いものは喜んでいただけないかもしれないと、お土産選びに迷う方も多いかもしれません。

そのようなお声を伺う事も多かったため、この度FUMIKODAはお客様であるビジネスパーソンにも楽しみながら食の選択肢を広げていただきたいという想いで大人のヴィーガンサブレ「Veblé(ヴィブレー)」をプロデュースしました。

今回は、「Veblé」のレシピを監修いただいた、神戸発のパティスリー「à la campagne(ア・ラ・カンパーニュ)」のグランシェフの寺家 裕司さんにプロフェッショナルの視点から今回の開発について振り返っていただきました。

ヴィーガンサブレ「Veblé」とシャンパーニュ「Duval-Leroy」

シャンパーニュにも合う大人のヴィーガンサブレ。バターを使用せず、植物性の食材だけでしっとりとしたリッチな味わいに仕上げた大人のためのスイーツです。糀甘酒やてんさい糖、淡雪塩など自然の素材を使用したやさしい食感に、ブラックペッパーで深みとスパイス感を加えました。

Veblé


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バターの風味を高いレベルで再現、プラントベース食品へのイメージが変わった

「à la campagne(ア・ラ・カンパーニュ)」は1991年に神戸で生まれた、こだわりタルト専門店です。手作りのタルトをコンセプトに北海道産発酵バターや選りすぐりの素材やフルーツを使用してメニューを開発しています。

なので、正直なところ「Veblé」のレシピ開発に携わるまで動物性の素材を使わないという制限の元でのメニュー開発は考えた事もありませんでした。

今回は、サブレの要となる植物性油脂に植物性原料のみで“動物性油脂の特長を活かしたおいしさ”を創り出しているミヨシ油脂株式会社の「botanova(ボタノバ)」を使用することとなったのですが、当初はプラントベースの油脂といえばいわゆる油っぽいマーガリンのイメージで、製品化にあたって懸念もありました。

ところが、実際に使用してみるとバターの風味を高いレベルで再現している事に驚きました。提供いただいた「botanova」を開封した際にバターの香りがしっかりと感じられた事が印象に残っています。サブレの製造工程でも動物性のものと変わることなく非常に扱いやすく、第一回目のサンプル品は想定していたよりスムーズに製品を仕上げる事ができました。

第一回目の試作品 FUMIKODAでの試食の様子

シャンパーニュに合うサブレという新しいコンセプトへの挑戦

元々はプレーンのサブレを想定して、てんさい糖をあえて粉砕せずに使用するなど工夫を加えたことにより、動物性の素材を使わないという制約の下ながら風味も食感も非常に完成度の高いものが作れました。

しかし、そこからが挑戦となりました。というのも、ア・ラ・カンパーニュではお祝いの席でのケーキなどを想定してご家族でお召し上がりいただくメニューを中心に開発していたので「お酒に合わせる」というコンセプトは初めてでした。そうしたコンセプトを大切にしながらも、サブレとしての完成度とのバランスを取るのが非常に難しかったです。

神戸の工場での試作の様子 ひとつひとつ丁寧に製造されています

第一回目のサンプルとして出来たサブレの試食を経て、FUMIKODAからのリクエストとして出たのは「お酒に合わせる」ための味の調整でした。

当初から、FUMIKODAの顧客のライフスタイルに合わせて大人も楽しめるお菓子にするというアイディアはあったのですが、第一回目のサンプルを香味分析により、方針がより具体的に定まりました。

試作したサブレは”シャンパーニュと食べ合わせが良い”という分析結果が出たのです。その結果を踏まえて開発に関わる三社で話し合い、よりコンセプトを尖らせて”シャンパーニュに合うサブレ”を目指す事となりました。

そのためには、塩加減やペッパーの分量を増やしたり、ナッツの風味を加えるという調整をかける事となったのですが、この調整が困難なポイントでした。
塩やペッパーを増やしすぎると、”おつまみ”のようになってしまうので、あくまでもお菓子としてのサブレでありながらもお酒に合うものに仕上げるために試作を重ねました。

社内で試食をして協議するだけではなく、老舗シャンパーニュバー「Cave de Champagne DIVIN(カーヴ・ド・シャンパーニュ・ディヴァン)」グランシェフ・ソムリエの齊藤氏にも意見を仰ぐなど、様々な方と連携しながら細かな調整を重ねました。

「Cave de Champagne DIVIN」グランシェフ・ソムリエ 齊藤氏に試食いただいた際の様子

出来上がったのは、リッチな味わいの”大人のためのおつまみスイーツ”

結果として、バターなど動物性の素材を使用していないとは思えないと言っても過言ではない風味で、開発に関わる三社はもちろんシャンパーニュの専門家にもお墨付きをいただけるサブレが仕上がりました。

今回商品の開発にあたりご意見を頂戴したシャンパーニュバーのソムリエ 齊藤氏からは、「シャンパーニュを口に含んだ後に「Veblé」を食べると、まず最初にバターを連想させるふくよかさがあり、その後にピノノワールのタンニンが引き出されて白桃のようなニュアンスが感じられます。次にペッパーのピリッとしたスパイス感がとっても心地良く、一緒に味わうとシャンパーニュの複雑味が増して美味しくなります。」というコメントもいただくなど、コンセプトに合わせて完成度の高いものにできた事を実感しました。

開発途中の打ち合わせや試作など、通常よりも時間と手間がかかりましたが、今までに挑戦した事がないテーマに取り組むことで、今後につながる新たな視点も得れました。

お酒に合う”おつまみ”的な要素がありながら、お菓子としてのバランスもとったので「Veblé」には”大人のためのおつまみスイーツ”というネーミングがピッタリだと感じています。ぜひ、様々なシーンで「Veblé」を楽しんでお召し上がりください。

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編集後記:〜シャンパーニュと「Veblé」のマリアージュの楽しみ方〜

実はシャンパーニュに焼き菓子が合うことをご存知ですか?
今回、「Veblé」の商品開発にご意見をいただいたシャンパーニュバーのソムリエから教えていただいたシャンパーニュと「Veblé」のマリアージュの楽しみ方について、記事のライティングを担当したFUMIKODA広報担当の杉村からご紹介します。


「Veblé」はお酒と共に召し上がっていただく事を想定して開発を重ねたため、シャンパーニュに非常にマッチします。ところが、一般的に焼き菓子単体として完成されたものはバターが強すぎるなど、シャンパーニュにマッチするものを選ぶのはなかなか難しいのだそうです。

「Veblé」はピノノワール多めのシャンパーニュに特に合いますが、辛口・甘口それぞれのシャンパーニュともマッチし、シャンパーニュを飲んだ後に「Veblé」を食べると全く違う味の広がりを感じます。

  • 辛口のシャンパーニュ・・・「Veblé」の甘みがたって白桃のようなフルーツ味が感じられる。
  • 甘口のシャンパーニュ・・・「Veblé」の甘みがマスキングされて塩味とスパイスが強く感じられる。

明るいうちは辛口のシャンパーニュと共に、夜はディナーの後に締めくくりで甘口のシャンパーニュと共に、など様々なシーンでマリアージュを楽しむことができます。
是非、食べ比べて楽しんでみてください!

Veblé

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パティスリー「à la campagne(ア・ラ・カンパーニュ)」
à la campagneは、1991年に神戸で生まれたこだわりタルトの専門店。南仏プロヴァンス地方伝統の素朴なお菓子をコンセプトに、旬のフルーツタルトや焼き菓子・ジェラートなどを展開しています。
特に、自慢の手作りタルトはクリームやタルト生地にもこだわり、旬のフルーツの個性が引き立つよう一つひとつにアレンジが施され、数万通りにも及ぶ組み合わせから毎日厳選された10~15種のタルトがショーケースを彩ります。

寺家 裕司(株式会社 ハット・トリック 製造部 部長) 
専門学校卒業後、パティシエとして活躍した後、ア・ラ・カンパーニュを運営する株式会社 ハット・トリックに入社。ア・ラ・カンパーニュのグランシェフとして全店のメニューを監修している。