ビジネスのイニシアチブを0.1秒で取るための装い:CLUB FUMIKODAレポート

1120日にNY流 ビジネス人生を大きく変えるパーソナルイメージ・マネジメント講座」が開催されました。講師はニューヨークと東京を拠点に、数々の企業トップのイメージコンサルタントとして活躍する日野江都子さん。ビジネスプロフェッショナルとしての女性のプレゼンスを高めるコツや考え方についてレクチャーしていただきました。

今日あなたがそれを着ている理由を説明できますか?

日野:ここ数年、ウーマノミクスという言葉がメディアでも採り上げられるようになりました。安倍政権になってから、女性がもっと活躍して2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にするという方針が決められ、20164月に女性活躍推進法が施行されました。

そんな流れもあり、日本でも女性の役員や管理職が増えてきました。ですが、私から見ると、なぜこの人たちは自信がなく、こんなにも自分を抑えているように見えるのだろうと感じることがあります。せっかく内実があるのに、それを表現する正しい方法を知らない方がたくさんいるのです。それは例えば自分のポジションを表現する手段としての装い方もふくみます。では、どうしたらいいのかということを今日はお話します。

私が従来企業トップに向けて行ってきメディアトレーニングエグゼクティブ・プレゼンスイメージコンサルティングは、完全に男性対象でしたから、役員になった女性に対して同じ内容を提供しても通用しません。

「このような時、女性の役員は具体的にどのような服を着たらいいの?質問されても、ふさわしいアイテムやその判断基準となるルール日本国内では整っていませんでした。当然、そういう立場の女性たちも、それぞれの判断により、立場にそぐわないプレゼンスとなってしまっているという問題が明らかになってきました。

例えば今日の皆さんは、お仕事に今日行ったその足でこちらにおいでになりましたよね。では、質問をしますが、今日の服装、なぜそれを選んだのでしょうか?

……って考えたことありますか? これは結構大事です。というのも、ある程度立場がある人には、課せられている任務があって、他人はそれに期待します。でもその人から「あれ?(何か違う)いう印象を受けてしまうと、最初の期待値を大きく損ねてしま、零点ではなくてマイナス点になるんですよ。

相手もある程度の立場にいる人であれば、長いキャリアの中で多くの人に会ってきて、「こういう感じの人はこう」というデータが蓄積されています。なのでパッと見た時に、「こちら側の人なのか? あちらの人なのか?」という分別を瞬時にするんですね。好き嫌いとは違い、「アリかナシか」。それを判断する時間は、人が一目惚れをするのと同じ時間である0.1私は説いています

メラビアンの法則というのがあり、これはビジュアル、ボーカル、バーバルの3つのVがコミュニケーションのインパクトを決める要素と言われています。それぞれの比率は視覚情報が55%、聴覚38%、言語は7%。つまり人は言語よりも非言語を信じるということが実験でも証明されていす。

そして目で聴き、耳で聴く、と言われます。例えば、スーツを着た人が「私これからキャンプに行くんです」って言ったら違和感を覚えますよね。逆も然りです。ビジュアルで間違えた情報を発信してしまうと、伝えたい話を相手に届ける前に、目の前にたくさんのハードルを作ってしまうことになるんです。

ランジェリー、名刺、リトルブラックドレスに気を配るべき理由

CLUB FUMIKODA

日野:女性のビジネスのスタイルで絶対に必要なのはジャケット、ご自分の足にも合っていて美しいパンプス、ギラギラするものではなく耳に首もとに沿うシンプルなジュエリー、そして見落としがちだけど大事なのがブラジャーです。着物と違って洋服は、あるべきものをあるべき位置に、なかったとしても然るべき位置にあることが重要です。

今は亡き川島なお美さんが言った、いまだに忘れられない言葉があります。「女の胸はプッチンプリン」と。バストの大半を占める脂肪は、あるべき位置に入れる枠がないと、全部身体の違う部分に流れてしまうんです。

ご自分の体を管理できていないという印象って、年齢を重ねて行くほどだらしなく清潔感を欠いて見えるものですその上現役感がなく見える、当然「この人ナシ」と判断されてしまう。特に欧米社会で生きていると常々思うのが、女の人は女の人として一生生きていかないと評価されないということです。常に現役あるべき。なので、皆さん何らかの努力をしています。

ところで皆さんの中には、名刺にお写真をつけている方ってどれくらいいらっしゃいますか? お勤めの会社の規定がある場合は何とも言えませんが、名刺には顔写真をつけない方がいいです。なかには「顔を覚えてもらえやすいので、顔写真をつけた方がいいですよ」とアドバイスをするビジネス系や起業系コンサルタントもいるようですが、そこまでしないといけないほど君の顔は覚えてもらえない顔なの? という話なんです。顔だけじゃなくて存在として覚えてもらったなら、顔写真なんかいらないですよね。

名刺って何が一番重要かというと、その人が何をどう伝えたくて、どれだけの格があるかを表現することです。一番格を示せる名刺は、いい紙を使ったいい印字のものです。でも、顔写真を印刷できる名刺には良い紙を使えないはずです。なので、顔のついている名刺を持つ判断は、自分の格を自ら下げることを良しとした判断であるということは覚えておかれた方がいいです。

さらに言えば、ビジネスの集まりが名刺交換だけの場になっているのは、日本特有です。北米の社会では、「こんにちは」と挨拶から始まり話をして「後で連絡取り合うのにどうしたらいい?名刺持ってる?」というくらいの感覚だったりします。ですから、あまり名刺に固執せずに、知り合いたい方ときちんとコミュニケーションを取る方が、当然顔も覚えられますし、質の良いつながり方ができます。

そして、人の集まる場所というつながりで、リトルブラックドレス。最近日本でもリトルブラックドレスを着てレセプションやパーティーに行かれる方が増えました。今年のはじめにニューヨークの国連全権大使公邸でレセプションが催され、そこに日本から研修いらしていたある百貨店の方々が大勢参加されことにな「ドレスコードをどうしようか」と主催側からご相談を受けました。

百貨店の方々ならTPOに合わせた装いもお手の物でしょうから、腕を見せてもらおうじゃないかということで、「エレガントなビジネス・カジュアルで」とお題を投げたんです。そうしたら、男性の多くはビジネスのダークスーツに普段よりは少し華やかかな?というネクタイをして来られた方がほとんど。でもエレガントなビジネス・カジュアルですから、本当はネクタイ不要なんです。もっと上品に洗練されたビジネスカジュアルということだったのですが…。

そして女性揃って黒いワンピースだったんです。それがリトルブラックドレスなのかと言えば、残念ながらそうではなく、黒のワンピースでも、光を吸っしまう質感の生地のものばかり。さらに日本パール信仰がとても強いので、多くの方が、普通のパールを合わせていらした。それではまるで喪服ですよね。

本来ならパーティー会場の照明に煌めく黒いワンピースを選ぶべきでした。というのも、夜のライトって蛍光灯ではないオレンジ系のライトなのです。それに照らされてきれいに反射することで、シンプルなリトルブラックドレスでも着ている人が美しく見えます。ところが服の生地が光を吸ってしまうと、ただの地味な人になってしまう。さらに合わせているパールが、こぞって定番の8ミリ珠くらいの一連パールネックレスとくれば、みんな揃って葬儀に参列しに来たかのような雰囲気になってしまいます。

このパールの選び方、特に粒の選び方ってどうしたらいいかご存知ですか? 日常的に日中身につけるパールの最大の円の大きさは、ご自分の瞳のサイズ。夜はもっと大きくてもOK40代以上の大人の女性が、当たり前のサイズのものをすると、きちんとしてみるのは良いのですが、それが全面に出すぎて父兄参観日や入学式のお母さんかな…という装いになってしまいます。

大きめのを選ばないと、特にパーティやレセプションなどの場や、リトルブラックドレスに合わせるにはつまらなく見え、せっかくものその価値は見えないも同然になってしまいます。もしくは、思い切って何連かのものをつけたり、幾つか重ね付けするかのいずれかです。ただ、日本人女性のそれほど大きくない体には、ジャラジャラ着けてしまうと首が重たそうに見えるので、「いつもより気持ち私には大きいかな思うぐらいのものをお持ちになるのが扱いやすいですね。

女性政治家が信号機カラーのスーツを着るのはなぜ?

CLUB FUMIKODA

質問1:私は技術系の企業で男性の多い職場にいます。毎週の定例会議に、唯一の女性として参加しているのですが、そこではあまり女性っぽさを出さず、でもちゃんと見られたいと思っています。でもあまりカッチリすると、職場の他の女性の中で浮いてしまいそうです。うまく間を取るにはどうしたらいいですか?

日野:女性管理職として、会議に行くと、周りは年上の男性ばかりなので、いつものまま入っていくと“女の子”と見られて正当な扱いをされにくいことがありますよね。ではピシっとした格好で会議に出た後、他の女性たちの中に行くと、「あの子だけなに?」とにらまれる。そんな相談を実際に受けることがあります。まずひとつ言えるのは、どっちにも効くものというのは無いということ。しっかり分けてしまうしかありません。例えば、ジャケットはシャープでキリッとしているものを選び、それを脱いだらそこそこカジュアルダウンできるコーディネートをしておく。これが一番簡単なオンオフの切り替え方です。あと、靴はcmヒールとまでは言わずとも、スマートなパンプスを履くことで、格を感じさせる女性として、きちんと扱われます

質問2:小池百合子さんの演説を見て面白いと思うのは、彼女の着るスーツの色が普通の人と全然違うということです。あのようなパワープレゼンテーションをしたいと思ったら、何色のスーツを選ぶのが良いのでしょう?

日野:紺色一択です。勿論、どのような業種の人がどういう目的でその一着を選ぶのかにもよりますが。というのも、小池百合子さんは政治家ですよね。企業所属のビジネスパーソンではないんです。彼女たちが担う役割は、ビジネスのそれとは違います2016年のヒラリー・クリントンの選挙キャンペーンの時もそうでしたが、赤青黄色みたいな、まさに原色プラス鮮やかな色を選びます。人前に出てパワーを示す時には、強くわかりやすい色を着ろという戦略は実際ります

でも一般的なビジネスの場に、パワースーツとして、どういう場面でも臆することなく着用できるのは紺色です。グレーを選ぶ方もいますが、これは昼間の色です。日中の自然光がないと全く良く見えない。でも、紺は昼も夜もいける。それに紺黒に準じていて闇の中でもとても美しいんです。ということはとても強いですよね。

白いスーツやジャケットを着る方もいますが、「白を着てきたんだ」と見られます。白を選ぶ必然性が生まれる話の筋道やメッセージ、その人の役割といった仕事の文脈と照らし合わせて白を持ってくる意味がないのであれば、それは無駄な頑張りになってしまいます。むしろ、やり過ぎ感やあざとさが出てマイナスです。

何よりも大事なのは、最初の質問「どうしてそれを選び、着てきたのか?」自分の言葉で説明し、相手を納得させられるかどうか。それができて初めて無言でも説得力を持つプレゼンスをてにいれることができ、それぞれのビジネス人生を大きく変えていく一歩とにできると確信しています。