高岡銅器 – 400年の歴史が生み出す「Orii Blue」|FUMIKODA紀行
FUMIKODAのラインナップのひとつに用いられている金具のターコイズブルーは、日本の伝統工芸士、折井宏司氏により生み出された貴重な色です。
折井氏が代表を務める「モメンタムファクトリー・Orii」は、北陸の中都市として栄える富山県高岡市の工房です。
銅器製造で国内トップのシェアと高い技術力を持つ高岡。1611年に加賀藩主前田利長が高岡城築城の際に、7人の鋳物師を高岡へ集めたのがきっかけで、文具、香炉、花瓶、茶器、仏具など、たくさんの銅鋳物が作られ「高岡銅器」と呼ばれて全国に広がっていきました。
ARIANNA Takaoka-Douki:ショルダーバッグ (ホワイト)
高岡銅器の製造工程は、しっかりと分業化されており、各工程を高度な技術を持った職人がそれぞれ受け持ちます。 その行程のなかでモメンタムファクトリー・Orii(当時:「折井着色所」)は着色行程を専門に担ってきました。赤みや青み、茶褐色など、銅の持つ多彩な 表情を引き出す独特の色味に定評があり、南蔵院の釈迦涅槃像や皇居の装飾具も手がけるほど、その実力は認められています。
銅の色付けに必要な素材は、大根、糠(ぬか)、米酢、梅干、日本酒など天然の素材が使われていて、大根おろしと一緒に煮たり、糠みそをつけて赤くな るまで熱したり、日本酒や食酢などで作った液体を焼き付けたり、化学反応を起こし、腐食や錆を起こすことで色を表現しています。
これらの伝統的な着色技法には、化学反応を起こすために、熱を加えなければいけないものが多くありますが、熱を加えてしまうと金属が柔らかくなってしまうため、板材などの薄い素材には色を着けることが困難とされていました。
モメンタムファクトリー・orii 折井宏司氏
折井氏は、これまで培われてきた伝統技法を応用し、 試行錯誤を繰り返し、開発までに2年、そこから安定して着色を行うまでに、2ヶ月の歳月を費やし、1mmに満たない薄さの金属にも着色できる技法と「orii blue」を生み出したのです。
色彩や模様は、一つとして同じものはできないため、一つ一つのプロダクトが世界で一つだけの作品になります。
400年の歴史を経た今、高岡銅器の美しさは、「orii blue」を生み出す伝統工芸士、折井氏によって磨きあげられているといっても過言ではありません。
折井氏は、1人の職人として自らが先頭にたち最先端の「ファッション」と相反する「伝統」を融合させることは、新しい産業や職人像を生み出すことに繋がると考え挑戦を続けています。