「秘書のポテンシャルをビジネスに活かしたい」株式会社ぐるなび 『こちら秘書室』担当室長 渡邉華織:FUMIKODA WOMANインタビュー vol.04
「FUMIKODA WOMANインタビュー」では、さまざまな仕事の現場で活躍する女性たちへのインタビューを通し、仕事への取り組み方から、生き方やライフスタイルまでをお伺いします。今回は、株式会社ぐるなび 「こちら秘書室」担当室長の渡邉華織さんにお話を伺いました。聞き手はFUMIKODAのクリエイティブディレクター幸田フミです。
秘書はさまざまな仕事に応用できる高いスキルを持っている
幸田:華織さんからはトークショーやFUMIKODA JOURNALで、秘書としての経験から得た、色々な知識を教えていただきました。現役秘書の方々を支援する現在のお仕事について教えていただけますか?
渡邉:はい、もちろんです。私が株式会社ぐるなびに転職をして3年になります。転職をするきっかけは、天職と思っていた秘書業務をもっと世の中の人に認知していただき、現役の秘書の応援をしたかったからです。「こちら秘書室」に入って、今までに延べ数万人の秘書と接してきましたが、一生懸命秘書業務に従事している秘書がいる一方で、世間の「秘書」のイメージとの間に大きな差があることに非常にショックを受けました。
というのも、秘書の仕事は庶務的で誰でもできるものだと思われたり、場合によっては男性が愛人として妄想する対象になっていると勘違いされていたからです。真剣にプロフェッショナルとして秘書のスキルを磨きながら仕事に取り組む人たちがいる一方で、実際は庶務的な仕事しか任せてもらえない秘書もたくさんいるという現実を受け止めざるをえなかったのです。
ですから、本当にがんばっているエグゼクティブ秘書たちの地位向上と同時に、庶務的な秘書業務しか任せてもらえていない秘書の意識やスキルの底上げも必要だと思いました。
そして、もうひとつ。実は秘書という仕事は孤独なものなのです。社内に秘書仲間がいる人であれば同僚と情報交換をしたり、悩んだ時にもお互いに意見交換をして解決することもできますが、多くの場合は会社の中で秘書はたった一人だけで、ほぼ独立した、孤独な立場にある職業です。20〜30年のキャリアを持つ秘書でも、社内に自分しか秘書がいないので、自分の判断が本当に合っているのか分からず、悩みも愚痴も誰にも打ち明けられない人たちがとても多い。ですから、その人たちの横のつながりを作ってあげたいと思いました。
あと、秘書はスケジュール管理くらいで大した仕事をしてないと思われがちなので、評価もされにくいという現実があります。例えば、営業だと営業成績、企画だとプロジェクトなど、仕事の実績を数字や成果で残せますが、秘書の仕事は客観的な評価指標になるような実績を示すのが難しい性質の仕事です。
ですから、人事考課もずっと横ばいのままだったり、周りの人からも「ボスの近くにいるけれど、いつも何をやってるのか分からない」と思われがちです。そういう所に秘書たちはストレスを抱きながら仕事をしてきたので、その人たちの活躍の場を会社の外にも作りたいと思いました。
彼女たちが積み重ねてきた経験や知識は非常に素晴らしいものです。そこで培ってきた経営センスなど、色々な能力を持っています。ですから、それを、例えば商品開発につなげたり、プロモーションに活かしたり、その知見をメディアに出すということをしていかないと、彼女たちの能力が発揮できず自信をなくしたまま終わってしまうと思いました。
私自身が秘書時代にずっと黒子として仕事をしてきたので、まさか、このように営業や企画、広報の仕事をできるとは思っていませんでした。ですが、いざやってみると、それまでトップの方の横にいたことで、知識とスキルは頭に入っていたので、即戦力で仕事ができたのだと思います。そのようなことは、秘書の仕事だけをしている時はまったく自覚していませんでしたが、知らず知らずのうちに身についていることに、秘書の仕事から離れたことで初めて気がついたのです。
そのような価値を現役の秘書の人たちにも分かってほしいと思います。自分はもう秘書しかできないと思わず、今いる環境の中で何を身につけることができたのか、今後何を活かして次のステージに進めるのかを考えてほしいと思います。必ずありますから、自信を持っていただきたいと考えています。
今の仕事に就いてからは、苦手ではありましたがメディアに出たり、秘書たちの前に立ってお話しています。一企業の黒子として仕事をしてきた人間が、今このように成長しているというモデルになればと思って苦手を克服しました。
幸田:確かに秘書って、一般から見ると、華やかだけれどちょっと謎めいていて、実は何をしているのか分からないと思われがちですよね。でも華織さんからお仕事内容を伺って、誰にでもできる仕事じゃないなと思ったんです。ドラマでもステレオタイプに扱われがちなので、秘書のロールモデルがなかなか思い浮かばないので、こうしてスポットを当てることによってイメージが変わるといいですよね。
渡邉:変えていきたいですね。例えば「秘書」という良からぬ言葉のイメージを払拭するため、「秘書」に変わる新しい呼び名を作れないかなと考えています。そして、秘書のいないエグゼクティブに対しては、秘書の果たす役割や、秘書が持つスキルをご自身が取り入れることで、ビジネスにおいて、さらによい結果を出せるということを伝えていきたいと思っています。たとえば接待のお店を決める時に大事なことや、手土産を選ぶポイントなど、おもてなしのノウハウなどについてです。
幸田:秘書の方はボスについて、色々な良いものを見てきています。そのようにして目が肥えた方たちが開発した新しい商品や、セレクトした商品に関心を寄せる方は、きっと多いと思います。例えば秘書の方が選んだスーツを着れば間違いがないという信頼感があったり。そのような商品開発のスキルは、きっと世の中に必要とされるのではないかと思います。
渡邉:そうですね。女性向けの商品のセレクトや開発のポジションは、これまでCAが先を行っていたと思いますが、秘書ですと男女両方に対しての目利きができると思います。女性に対しては、「ビジネスシーンでは、この方がいいですよと」美容やファッションをお勧めできますし、男性に対しては「こういう服装でこのネクタイをしていれば、エグゼクティブとして間違いないですよ」とアドバイスができます。主にオンの時間をサポートするほうが秘書なので、例えば、ステーショナリーや眼鏡など、オフの時は許されても、オンの時は間違いがあってはいけないアイテムについても、秘書の目線で情報発信ができるかなと思います。
幸田:男性のビジネススーツやネクタイのコーディネートでも、迷っている男性は多いので、百貨店などとのタイアップ展開も考えられますよね。こんな風に秘書の立場を守って底上げしながら、ビジネス化していく仕事は華織さんにしかできないと思います。
実感するのは原点回帰の時代が来ているということ
渡邉:最近思うのは、やはり、いいものを知っている人は原点に行き着くということです。この3年間、「接待の手土産」の仕事で、年に1000点近い商品を味見して、選んだものを紹介させてもらいました。ここ2年くらい手土産ブームが続いていたので、目新しいものやインスタ映えするものも、たくさん出てきました。でも良い意味で記憶に残っているものは意外と限られます。結局は素材の良いもの、信頼できるもの、安心するものが残り、「原点回帰だな」と思ったんです。
つまり、最初はすごく目移りをしていたけれども、最終的には、何かしら選ぶ理由づけができる商品が残ると実感しました。それは手土産の商品以外にも言えることだと思います。FUMIKODAもそうですが、いいものを使っていると、他の物に目移りをしても最終的にはFUMIKODAに戻ってくる。いいものを知っている人は、良質な物を長く使い続ける時代になっているのだと思います。
幸田:世の中に選択できる物が増えれば増えるほど、そうなっていくかもしれませんね。感覚的に使いやすいとか、体が受け入れやすいとか、そういうものが残っていきますね。
渡邉:いくらかっこいいバッグでも、重かったり使いにくかったりすると、そのストレスが四六時中ある状態になります。でも、FUMIKODAのバッグを持っていると、下に置いても形が崩れず安定するし、どの業界のどんな方に会う時も安心です。抱えているものや責任がある人ほど、持つ物や着る物は信頼できる物でないと、1日の生活が疲れるものになってしまいます。そういった意味では、身につける物を選ぶことは、すごく大事だと思います。遊ぶ時はすごく高いヒールを履いて行きますけれど。
幸田:刺激物が欲しい時もありますものね。奇抜な物を身に着けたい時も。でも、仕事って毎日のことだから、私はコンサバティブでいいと思います。大切なのは使いやすさと無難さで、刺激は違うなと。
渡邉:本当に自信のある人や自分のポリシーがある人って、若い頃は高いブランドの大きいマークがついたバッグを持っていたけれど、この年齢になってくると選ぶ基準はそこじゃなくなりますよね。
幸田:皆さんそうおっしゃいますよね。もうブランド名では選ばなくなったって。それも原点回帰と言えるのかもしれません。
渡邉:接待店にしてもそうだと思います。本当に美味しいお店や心地のいいお店は、どんなに不景気で飲食業界が苦しい思いをしていても、毎日人が入っています。
幸田:結局、長い目で見ると正統派は勝つということですね。
渡邉:古き良き日本のものが、これからは今まで以上に注目されると思います。AIなど新しいテクノロジーがビジネス転用される時代だからこそ、伝統文化を大事にして行く動きが出てきているのを感じます。
お仕事バッグはビジネスの良き相棒
幸田:バッグはファッションアイテムではあるけれど、働く女性にとってはそれ以上のものです。華織さんにとってバッグとは何でしょうか?
渡邉:ビジネスシーンでは大事なビジネスツール、プライベートシーンではアイデンティティを伝えるツールです。ビジネスではバッグは仕事を円滑に行う上で大事な役割を果たします。そして相手に敬意を表して、きちんとしたものを持たなければなりません。華美なものやブランドが前面に出すぎたものはNGです。
それとは対照的にプライベートでは、自分の好きなブランドやデザインのものを身に着けてテンションを上げます。そういう意味で、私は名刺入れもオンとオフで使い分けています。秘書という仕事をしていると、所作の一つひとつをすごく細かく見られます。名刺の抜き方、渡し方、入れ方、全部を完璧にしなければいけない時、FUMIKODAの名刺入れはすべての所作をとてもきれいにできます。それは私にとっては、すごくストレスフリーなものであって、本当にいいビジネスの相棒なのです。
渡邉華織(わたなべ・かおり)
ぐるなび運営サイト「こちら秘書室」担当室長。サイト登録の秘書3万5000人の「まとめ役」。日系航空会社勤務を経て、大手金融会社や流通会社の会長・社長秘書、外資系コンサルタント会社の会長秘書――と20年にわたり大企業のトップ秘書として活躍してきた経歴を持つ。自身もふくむ現役秘書が直接目利きした手土産情報サイト「接待の手土産」も手掛ける。
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