サスティナブルな暮らしのために 「電力」もエシカルな視点で選べる時代へ

電力自由化でエシカルな選択が可能に

食べものや着るものと同じように、私たちの生活に欠かすことのできない「電気」。これほど身近で、毎日その恩恵を受けているにもかかわらず、電気がどのように作られ、どのように私たちの元に届くのかについて、私たちが意識することはほとんどありません。

世界中で環境意識が高まるなか、「サスティナブルで環境にやさしい電気を使いたい」と願う人は多いにもかかわらず、日本では長い間、ユーザーが自由に電気を選ぶことができませんでした。なぜなら、一般家庭は地域で決められた電力会社としか契約することができなかったからです。

一方、世界に目を向けてみると、多くの先進国では日本に先駆けて電力自由化が進んでいました。欧州では、英国(1999年)、ドイツ(1998年)、フランス(2007年)などが全面自由化を導入済み。世界最大のエネルギー消費国とされる米国でも1997年から導入が始まり、13の州とワシントンD.C.で全面自由化が実施されています(2016年1月時点)。

電力自由化については国ごとに賛否がありますが、環境に配慮した電気の選択肢が増えたという点では、消費者にとって大きなメリットがあります。 そんななか、2016年4月にようやく日本でも電力の小売全面自由化がスタートしました。これによって従来の電力会社に加え、多くの電気事業者(新電力)が新たに参入。一般家庭でも電気の購入先を複数の電力会社から選ぶことができるようになりました。それはつまり、環境にやさしい自然エネルギーを扱う電力会社を選ぶことで、私たち一人ひとりがサスティナブルな社会に貢献できるようになったことを意味します。

何を基準にどの電力会社を選ぶ?

オーガニックやフェアトレードにこだわって野菜や服を選ぶように、電気もエシカルな視点で選ぶことができる、ようやくそんな時代が日本にも訪れたわけですが、そこで直面するのが「どの会社を選べばいいの?」という疑問です。 現在、日本国内で小売電気事業者として登録されているのは、なんと約390社にものぼります。さらに、サービス内容や料金体系はもちろん、どのような電源から電力を調達しているかも、各社ごとに条件が異なります。これでは選択肢が多すぎて、比較検討する気も失せてしまいますね。

そこで、エシカルな電気選びの目安となるのが「電源構成の比率」です。電源構成とは、火力や原子力、太陽光や地熱といったさまざまな電源から、どのぐらいの比率で電力を調達しているかを表す数値です。現状、電力会社に電源構成の比率を表示する義務はありませんが、情報を公開しているところは少なくありません。その中から、より環境負荷の低い「再生可能エネルギー」の比率が高い会社を選ぶことで、私たちも間接的に地球環境に貢献できるというわけです。

再生可能エネルギーとは、「水力(大規模水力を除く)」「風力」「地熱」「バイオマス」「太陽光」の5つを指します。ただし、これらが日本の発電電力量に占める割合はわずか4.7%にすぎません(経産省『エネルギー白書2017』より)。その比率は年々増えてはいますが、発電量はまだまだ十分ではなく、安定供給やコスト面での課題も残っています。そのため、再生可能エネルギーを高比率で提供できる電力会社は、限られているのが現状です。

そこで注目したいのが「FIT電気」です。FIT(Feed-in Tariff)とは、再生可能エネルギーを一定の期間、国が決めた固定価格で電力会社が買い取る制度のことです。このFIT制度を利用して調達した電力は、同じ再生可能エネルギーでも「FIT電気」と表記しなければならない、というルールがあります。つまり、FIT制度の利用の有無によって呼び名が変わるというイメージです(※1)。

エシカルな電気の選び方について少し整理できたところで、ここからは「再生可能エネルギー」と「FIT電気」の電源比率が高い電力会社をいくつかご紹介しましょう。

GREENaでんき(グリーナでんき)

GREENAでんき(グリーナでんき)

日本初となる「100%再生可能エネルギー」の電力プランを実現した「GREENa」。運営するのは、2003年に長野県で設立されたネクストエナジー・アンド・リソース社です。自然エネルギー(FIT電気)とグリーン電力証書(※2)を活用することで、これまで提供が難しかった100%再生可能エネルギーの電力プラン(GREENa RE100プラン)を実質的に可能に。上記プランの他に、再生可能エネルギーの電源構成比率を50%(2017年計画値)として価格を抑えたリーズナブルなプラン(GREENa スタンダードプラン)も用意している。供給エリアは、東京電力、中部電力、関西電力エリア。

ソフトバンク自然でんき

ソフトバンク自然でんき

ソフトバンクグループの小売電気事業者SBパワーが提供する電力サービス。中でも注目は、「年間のFIT電源比率50%以上」と「CO2削減」を目標に掲げる「自然でんき」プランです(2017年度の計画値はFIT電気70%)。基本料金0円でお財布にやさしく、さらにソフトバンクを通じて毎月50円を環境保全団体に寄付することができます。ソフトバンク・ユーザー以外も申し込み可能。供給エリアは、北海道電力、東京電力、関西電力エリア。


みんな電力

みんな電力

「みんな電力」は、東京都世田谷区でエネルギー事業を展開する新電力ベンチャー。電力自由化の際に、世田谷区が東京電力から購入先を「みんな電力」に切り替えたことで、大きな話題になりました。

FIT電気の電源構成比率は60%以上(目標値)で、他社と比べても高い水準です。また「みんな電力」は、電気の生産者と消費者が直接つながる「顔の見える電力」というコンセプトを大切にしています。ユーザーが応援したい発電者を選ぶと、電気料金の一部が「みんな電力」からその発電者に支払われ、活動をサポートできます。このようにエネルギーの生産と消費のあり方を問い直す企業姿勢にも好感が持てますね。供給エリアは、現在のところ東京電力エリア(離島地域を除く)のみとなっています。

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今回は特に再生可能エネルギーの電源比率が高いサービスを選んでご紹介しましたが、この他にもさまざまな電力プランがありますので、これを機にぜひ一度、「エシカルな電気選び」について考えてみてはいかがでしょうか。サスティナブルな未来を支えるのは、そんな私たち一人ひとりの小さな意思表示の積み重ねなのですから。

※1 FITでは、再生可能エネルギー発電所から作られた電気を電力会社がすべて買い上げます。しかし、その買取りに使われる財源は「再エネ発電賦課金」という形で実際は利用者が負担しています。つまり、FIT電気の環境価値について利用者はすでに対価を払っているとも言えるため、電力会社は電気を売る際には環境価値をイメージさせる「再生可能エネルギー」という文言を使った表記ができないそうです。ややこしいですね。

※2 グリーン電力証書とは、電力が持っている環境価値のみを切り離し、それだけでも取引できるようにした証書です。利用者は、環境にやさしい電気を扱う事業者から電気を買う際、代金に上乗せして「グリーン電力証書」を購入します。その上乗せ分は、最終的に環境にいい電気を作る発電者に助成金として渡る仕組みです。利用者は、証書の購入によって再生可能エネルギーを消費し、普及に貢献したとみなされます。グリーナでんきは、この仕組みを使って実質的な「100%再生可能エネルギー」を実現しています。