女性起業家の「失敗」経験から学ぶ、自分らしい生き方|MASHING UP

11月29日、30日の二日間にわたり、渋谷のTRUNK HOTELで開催されたビジネスカンファレンス「MASHING UP」。累計1,000名を超える参加者が集い、熱気にあふれかえるイベント会場に、FUMIKODAのクリエイティブディレクター幸田フミもモデレーターのひとりとして足を運びました。

起業の道は”幸せな”七転び八起き

女性をはじめとする多様な人々が、しなやかに活躍できる社会を創出するための場をつくる。

そんなビジョンを掲げ、「カフェグローブ」や「ライフハッカー」などのウェブメディアを運営するメディアジーンが「Bravery & Empathy – 勇気と共感」をテーマにセッションを企画し、国内外の様々な業界からスピーカーを招聘して開催したのが「MASHING UP」です。

幸田フミがモデレーターを担当したのは、1日目の女性起業家によるトークセッション「起業の道は”幸せな”七転び八起き」。そしてスピーカーとして登壇していただいたのは、「IT業界の女帝」と呼び名が高い株式会社ウィズグループの奥田浩美さん、清酒「白鹿」の老舗日本酒メーカーから社内起業されて社長に就任された株式会社六自の中野佳子さん、そしてFUMIKODA WOMANでもインタビューさせていただいた家事代行サービスのパイオニア、株式会社ベアーズ副社長の高橋ゆきさんの3名です。

左から、幸田フミ、中野佳子さん、高橋ゆきさん、奥田浩美さん

幸田も尊敬する人生経験豊富な女性経営者の皆様には、あえて経営者インタビューにありがちな成功ストーリーではなく、泥臭さが漂う起業家ならではの「失敗談」を赤裸々にお話いただきました。そして失敗経験活かしてどのように人生を好転させたのか、また、起業という選択をとおして「自分らしく幸せな生き方」をどのように探してこられたのかを伺いました。

失敗から学んだ「軸がぶれない幸せな生き方」

「起業後すぐに大型案件を受注して自信満々でプロジェクトを進めていたら、本番直前にビジネスパートナーが資料ごと失踪した」と、失敗経験を話してくださったのは奥田浩美さん。

今では業種や運営スタイルが異なる3つの会社を国内外で経営されているほどのベテラン経営者ですが、二十代で大きなチャンスを手にした矢先、ビジネスパートナーに裏切られるという絶体絶命のピンチを迎え、呆然としたそうです。

「コーヒーをこぼしたぐらいでは失敗と思わなくなる」と、奥田浩美さん(右)

その場をなんとか乗り切り、その後自分がやりたいことを実現するために組織のあり方や働き方を最適化された奥田さんは、”失敗”についてこう語ります。

「たとえば水をこぼしてしまった時に、ただ焦って何もできずにいるか、吹き方を知っているかで大きく違います。どう吹けばいいのかを知っていれば水をこぼしたことは「失敗」ではありません。そしてこぼしたものが水なのかコーヒーなのか、どれぐらいの量なのかによって最適な吹き方が違うなんてことは、小さな失敗を積み重ねていかなければ学ぶことができません。そのうちコーヒーをこぼしたことぐらいで”失敗”と思わなくなります。

挑戦しなければ失敗することもない。そしてそのまま一生学ぶこともないのかもしれないのであれば、”失敗”は人生において必ずしもネガティブな出来事ではなく、むしろ経験すべきことなのかもしれません。

また、リーマンショックの時にすべての事業を失ってしまうという、大ピンチに立たされた奥田さん。しかし、当時小学三年生だった娘さんは、「自分が一番家の中で貢献することができた時だった」と話してくれたそうです。苦境の時こそ、周囲の愛が見えるチャンス!失敗と気づきは常に隣り合わせにあるようです。

「そこに愛はあるのか?」高橋ゆきさん(左)

「起業してとにかくがむしゃらにがんばっていたら、3年後に社員全員が同時に退職した」と話すのは、いつも優しい笑顔が印象的な高橋ゆきさん。

「それまでずっと「社員のために」と思って一生懸命やっているつもりだったのですが、結局自分たちのことしか考えていなかったと気付いて猛省しました。」

そんな高橋さんが”失敗”から得た教訓は、「愛」だそうです。

「事業は「何のためにやるのか?」が大事です。私達が家事代行サービスを通して皆さんに届けているのは「愛」です。そのミッションを実現するためには会社に愛が溢れていること、すなわち社員全員を心から愛することは必須なのです。やることなすことすべてに「そこに愛はあるのか?!」といつも問いかけています。

失敗を恐れずに挑戦し続けるためのキーワード

今年5月に社内起業されたばかりの中野さんは、まだ起業家として大きな失敗は経験されていないそうです。

しかし、500年の歴史を誇る清酒メーカーは、言わずとしれた男性社会。そんな環境の中で中野さんは長年営業として活躍され、会社から後押しされる形で社内起業できるほどの実績を重ねてきました。そこに至るまでこだわり続け、今でも大事にしている信条は、「自分がやりたくないことはやらない」ということだそうです。

「やりたいこと以外はやらない」とキッパリ。中野佳子さん(右)

「やや自己中心的に聞こえる言葉ですが、自分の感性を信じ、信念を貫きとおすためには周囲の環境やそれまでの慣習に迎合することを断つ必要があります。親会社からのプレッシャーもないとは言えませんが、別会社を立ち上げて新しい試みにチャレンジするからには、心から「やりたい」と思えること以外はNOを選択することが大事なのです。」

リスクを負いながらもやりたいことをするのは起業家としての醍醐味です。そして、たとえ逆境に立ったとしても「やりたくないことはやらない」を貫くのは、強い信念が無くてはできないことなのかもしれません。



「ワクワクとグラグラを大切に」と語るのは奥田さんです。

「変化の早い今の時代、安定が何よりもよくない。周りがすごいスピードで変わっていく中、何もせず同じ場所に居続けることが最大のリスクです。楽しいことをやりつつつつ(ワクワク)、どこかで不安を感じている状態(グラグラ)は、ちゃんと攻めている証拠です。チャレンジに失敗はつきもの。失敗をエネルギーとして大いに活用しましょう。」

私達を取り巻く環境は日に日に進化を遂げています。安全だと思っている場所に居続けている方が、かえって大きな失敗を招くのかもしれません。



「命の使い方を常に自問自答してほしい」と話すのは高橋さん。

何のためにここにいるのか、自分が何をすべきなのかがわかれば、恐れることはなにもありません。ただその使命に対して尽くすのみです。やりたいこと、やるべきことをしないまま命を終えてしまったら、生まれてきた意味がなくなってしまいます。特に若い方には迷うことなく、どんどんチャレンジしてもらいたいです。」

何度失敗を重ねても、信念さえ貫き通せば何度でも再起できる。それを自ら証明していらっしゃる高橋さんならではの説得力のあるメッセージでした。

☆☆☆

まさにタイトルどおり、「起業の道は”幸せな”七転び八起き」を語り合った40分はあっという間でした。赤裸々に失敗経験やご自身の信条についてお話いただいた奥田さん、高橋さん、中野さんには心より感謝いたします。

様々な業種、性別、国籍、コミュニティの人々が一堂に集い、マッシュアップすることで新しい価値感にふれあうことができたMASHING UP。2日間にわたり、スピーカーたちの熱い想いや参加者の感動を肌で感じながら、世界中がバーチャルでつながっている世の中だからこそ、リアルの場での対話や相互理解が重要なんだとあらためて気付かされました。

そして、会場のあちらこちらで「FUMIKODA」のバッグや名刺ケースを見かけることができて嬉しかったです(!)

沢山の参加者とともにFUMIKODAもマッシュアップさせていただいた、とてもエキサイティングなイベントでした。次回のMASHING UPにも参加させていただけると光栄です。