「質」と「魅力」の両輪を求めたバイオヴィーガンレザー開発 〜FUMIKODAの新たな取り組みVol.1

倫理やサスティナビリティへの意識が高まる中で、ファッション業界でも地球環境への配慮が大きな課題とされ、新素材の開発が進んでいます。

そんな中、今世界中で注目を集めているのが「バイオヴィーガンレザー」です。まだ耳慣れない言葉ではありますが、マッシュルーム、りんご、サボテンなど、石油に由来しない植物素材で作られたヴィーガンレザー(※1)のことをいいます。
※1 FUMIKODAの使用する素材「ヴィーガンレザー」について

「地球にも、動物にも、ひとにも優しく」というコンセプトのもと製品を開発してきたFUMIKODAも、日本の放置竹林の「竹」や、食品加工後に廃棄される「貝殻」、ジュースの絞りカスの「りんご」などを使用した国産のバイオマス素材使用した製品の企画を進めています。

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FUMIKODAの製品開発にもご協力いただいている素材メーカーの「共和ライフテクノ株式会社」は、数年前からバイオヴィーガンレザーの研究に取り組んでこられました。
開発担当の藤原ちえ子さんより製品開発への熱い想いをうかがうことができましたので、FUMIKODAのコンテンツディレクター白井愛奈がレポートいたします。 

左から、共和ライフテクノ社の福嶋さん、専務の澤根さん、藤原さん、FUMIKODAの杉村、白井

パートナーと共に取り組む
サスティナブルな商品の開発

白井愛奈(以下白井):バイオヴィーガンレザー開発のきっかけをお伺いできますでしょうか?

藤原ちえ子(以下藤原):バイオマス素材(※2)の商品は原材料が身近なものである事も多く、消費者にダイレクトに伝わり、響きやすいため、エシカルな商品を手に取ってもらうきっかけになるのではないか。そんな想いからプロジェクトはスタートしました。
※2 バイオマスとは、「動植物から生まれた、再利用可能な有機性の資源(石油などの化石燃料を除く)」

白井:そうだったのですね。製品開発を進めていく上で大変だったことはありますか?

藤原:新たな製品開発に取り組む上で、環境問題には自社だけ取り組む事はできず、「パートナーと共に取り組む事」が必要であることを今回の開発を通じて痛感しました。

素材を開発しただけでは持続可能な形で環境問題への貢献はできず、ビジネスとして成り立たせるために生産量を増やし、さらにそれを継続的に供給するサイクルを構築する事が必要です。

今回の新素材開発を実現するためにも、社内の技術部門の協力、バイオマス素材の原材料を提供してもらう会社の協力、そして目的を理解した上で”環境に配慮した形”にこだわって企画販売してもらえるブランドが必要でした。
サスティナブルな商品は上記のようなパートナーとの協業なくして生み出せないため、多くの方々の理解や協力が必要であるということを実感しました。

2年前から構想し、まずは社内の技術部門の方に理解を得るために尽力しました。
技術部門からすると、完成されている商品に違うものを混ぜる事自体が当初は理解が難しかったので、消費者が何を求めているのか、1年半ほどかけて現場に出向いて繰り返し様々な形で伝え続けました。


こうして素材の開発が動き出しましたが、魅力的に消費者に伝わる意匠も必要です。技術の力で環境に配慮した素材ができても、消費者にワクワク楽しんでもらえるものでないと手に取ってもらえないからです。
「質」と「魅力」の両輪が揃って初めて開発が成功すると考えており、どのブランドに商品化してもらうかという点にもこだわりました。

FUMIKODAは以前から代表の幸田さんが「地球や動物、そして人々が持続可能な社会で心地よく暮らせることを願ったものづくり」にこだわり製品を作られていると良く知っており、そのコンセプトに深く共感しておりましたので、是非素材が完成した際にはFUMIKODAに商品化してもらいたいという想いを持っていました。

国産のオリジナル素材
「LeNaシリーズ」

白井:共和ライフテクノ社が開発した「LeNaシリーズ」について、詳しく教えていただけますか?

藤原:共和ライフテクノ社は、製品開発をする上で「繋げていくこと」、「創り続けること」、「日本製にこだわること」の3つを軸にして、ものづくりに取り組んでいます。バイオマス素材を使用した商品はメジャーになりつつありますが、多くが海外製であったため何としても日本製で商品開発を実現したい。という思いがありました。
そして長い期間をかけて誕生したのが、国産のバイオヴィーガンレザー「LeNaシリーズ」です。

実際生地に使用している3つの原材料をご紹介いたします。

1. アプレナ(りんごを使用したバイオヴィーガンレザー)

ふじのりんごジュースの絞りカスを使用したアプレナは、CO2の排出を軽減する特別な機械を使用するなど、原材料の製造段階でも環境に配慮した取り組みが実施されています。

2. バンブレナ(竹を使用したバイオヴィーガンレザー)

竹を使用したバンブレナは、竹の成長スピードの早さによる原材料としての継続供給可能性と、間伐した竹を使用することで放置竹林問題(※3)の解決に寄与できる点に着目しました。
※3 竹は繁殖力が高く、根を浅くはる特徴があるため周囲へと浸食し、他の樹木の成長に大きな影響を及ぼします。

徳島県の企業と協業し生地の開発に取り組み、日本で初めて竹を原材料に含んだバイオヴィーガンレザーを製品化することに成功しました。


3. シェレナ(貝を使用したバイオヴィーガンレザー)

シェレナは原材料に「ほっき貝」を使用しています。水産加工業の中で、日々大量に貝殻が産業廃棄物として処分されており、その中でもホッキ貝は大きな2枚貝のため、加工性に富むことから原料元様と協業し開発に挑みました。PVCを製造する際に使用する工業用化学原料から、自然由来原料へとシフトさせることができると考えたためです。
PVCは原料の60%は塩でできており、さらにシェレナはCO2排出量が少ないエコマテリアルとして誕生しました。

日本発のバイオヴィーガンレザーを世界へ

白井:今後さらなる目標があれば教えていただいてもよろしいでしょうか?

藤原:現在の技術では100%バイオマス素材で耐久性など質を維持した素材を作ることは難しいのが現状ですが、さらに可能な限り、環境負荷低減を目指してバイオ化を検討していきたいと考えています。

今回弊社が開発したバイオヴィーガンレザーは、ポリウレタン素材の5〜30%をバイオマス素材に置き換えたものです。これで完成ではなく、更にバイオマスの割合を高めるべくパートナー企業と共に開発を継続しています。

「倫理」、「道徳」、「安心安全」を担保しつつ、日本発のバイオヴィーガンレザーを世界に広めていくという大きな目標に向かって尽力していきます。

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共和ライフテクノ株式会社がこだわりを持って開発した国産のバイオヴィーガンレザー「LeNaシリーズ」から出来上がるFUMIKODAの新しいアイテムをどうぞお楽しみに!

藤原ちえ子氏(営業本部 営業企画 Group Leader )プロフィール
営業企画歴25年。海と山がある神戸を愛する生粋の神戸っ子。プライベートではライフワークとして、2009年より地球環境を考える「アースデイ神戸」の実行委員として参加。世代を超えた仲間とともに様々なアプローチから楽しくつながるイベント運営に携わる。

共和ライフテクノ株式会社
1850年、株式会社ナンカイテクナートの前身である南海ゴム株式会社として設立。2018年、株式会社ナンカイテクナート・日本グラビヤ工業株式会社・株式会社キョーレの三社合併により、共和ライフテクノ株式会社を設立。2020年に創立70周年を迎えた合成皮革製造メーカー。
いつの時代も常に安全で安心なレザーをお届けすることをモットーに、お客様からのご要望、社会の変化に対応し、ものづくりをしている。現在は環境への取り組みを重点に、安心してご使用いただける日本製のクオリティを魅力ある意匠表現力とともに、ユーザー様へよりわかりやすいカタチとして提案する。
私たちがめざすは「ecoREND®」「ワクワクするカッコよさを未来へつなげる それが私たちのエコレンド」