クローゼットから未来を考える。衣料廃棄問題とFUMIKODAの「捨てない」選択
私たちの日常に彩りを与えてくれるファッション。新しい服に袖を通す瞬間の高揚感は、何物にも代えがたい喜びです。しかし、その華やかな世界の裏側で、深刻な問題が進行していることをご存知でしょうか。それが、アパレル業界の「衣料廃棄問題」です。
今回は、この問題に真正面から向き合い、サスティナブルな未来を創造しようとするFUMIKODAの取り組みについてご紹介させていただきます。
日本の衣料廃棄、その驚くべき実態
環境省の調査によると、現在、日本国内で供給される衣料品は年間約82万トン。その一方で、家庭や事業者から手放される衣料品は年間約51万トンにも上ります。
驚くべきことに、そのうちの実に9割以上にあたる約48万トンが、焼却や埋め立てによって処分されているそうです。これを大型トラック(10トン車)に換算すると、1日あたり約130台分もの衣服が、一度も袖を通されることなく、あるいは短い期間でその役目を終え、ゴミとして処分されていることになります。
なぜ、これほど多くの服が捨てられてしまうのでしょうか。
その大きな要因の一つが、現在のファッション業界の主流である「大量生産・大量消費」というビジネスモデルです。目まぐるしく移り変わるトレンドを追い、短いサイクルで次々と新作が市場に投入されます。そして、売れ残った商品はセールで安売りされ、それでも残ったものは最終的に廃棄処分となるケースが少なくありません。
このサイクルは、環境にも大きな負荷をかけています。衣服の生産には、大量の水やエネルギー、化学薬品が使われます。そして焼却されれば二酸化炭素を排出し、地球温暖化を加速させる一因となります。私たちが何気なく手に取る一着の服が、知らず知らずのうちに環境問題に繋がっているのです。
FUMIKODAの哲学 ― 「捨てない」ものづくりへの挑戦
「このままではいけない」。FUMIKODAを創業したクリエイティブディレクター幸田フミの強い想いから、FUMIKODAはブランド設立当初からできるだけサスティナブルなものづくりを目指してきました。
私たちの答えは、実にシンプルです。
「廃棄を前提としたものづくりは、しない」
この哲学を貫くため、FUMIKODAは業界の常識とは異なるいくつかのユニークな試みを実践しています。
1. シーズンコレクションを作らず、セールをしない
FUMIKODAには、春夏(SS)や秋冬(AW)といった、いわゆる「シーズンコレクション」のためのラインを作っていません。定番アイテムの素材の一部を季節性のある素材に置き換えることはありますが、流行に左右されることなく、いつでも、そして長く愛用できるタイムレスなデザインのアイテムだけを創造し、通常価格で販売しています。
FUMIKODAの製品は長く使用できる素材とベーシックなデザインが特徴
トレンドに合わせて商品を入れ替える必要がないため、過剰な在庫を抱えるリスクがありません。そして、私たちは自社の製品の価値に誇りを持っているからこそ、正規品の割引セールは実施しません。
セールをしないことは、お客様にいつでも適正な価格で商品をお届けするという約束であり、作り手の技術や素材の価値を正当に評価することにも繋がります。このビジネスモデルが、売れ残りによる廃棄を未然に防いでいるのです。
2. Made in Japanにこだわった、顔の見える少量生産
FUMIKODAのすべての製品は、日本の熟練した職人たちの手によって、一つひとつ丁寧に作られています。私たちは、職人たちの高い技術と経験を未来に継承していくことも、ブランドの重要な使命だと考えています。
FUMIKODAの製品はすべて国内の工房で生産しています
一度に大量生産するのではなく、必要とされる分だけを大切に作る「少量生産」を基本としています。これにより、需要を正確に予測し、無駄な生産を徹底的に排除。素材のロスを最小限に抑えるとともに、製品一つひとつに作り手の想いを込めることができるのです。
3. 地球の未来を見据えた、革新的な素材選び
FUMIKODAは、美しさや機能性だけでなく、その素材がどこから来て、どこへ行くのかという点にもこだわっています。動物の革を一切使用しないことはもちろん、環境負荷を最小限に抑えるための革新的な素材を積極的に採用しています。
◎海のゴミを宝物に変える「リサイクル漁網ナイロン」
海洋プラスチックごみの中でも特に深刻な問題となっているのが、海に投棄された「廃漁網」です。私たちは、この廃漁網を回収・リサイクルして生まれた高機能ナイロンを、一部のバッグ本体や内装の素材として採用しています。
漁網リサイクル素材を使用したコレクション
本来であれば海の生態系を脅かすゴミであったはずの漁網が、最先端の技術によって、軽量かつ耐久性・撥水性に優れた美しい素材へと生まれ変わるのです。これは、廃棄物を価値ある資源へと転換する「アップサイクル」の精神を体現しています。
◎廃棄される植物性素材を使用した「バイオマス人工皮革」
徳島県で伐採された竹や、青森県のリンゴジュースの搾りかすなど、植物由来の再生可能な資源を原料とした「バイオマス人工皮革」を一部製品に採用しています。
バイオマス素材を使用したコレクション
これにより、限りある石油資源への依存を減らし、製品ライフサイクルにおけるCO₂排出量の削減に貢献しています。しなやかで高級感のある質感でありながら、地球環境にも動物にも優しい。これからの時代のラグジュアリーを象徴する素材です。
廃棄ゼロを実現する、FUMIKODAの循環システム
これらの取り組みの結果、FUMIKODAは創業以来、商品の廃棄ゼロを継続しています。
しかし、私たちの挑戦はそれだけではありません。お客様が大切に使ってくださった製品を、その役目が終わった後も決してゴミにしないための仕組みづくりにも力を入れています。
それが、使用済みのFUMIKODAバッグを回収し、新たな価値へと生まれ変わらせる「リユースプロジェクト」です。
リユースプロジェクトでバッグを受け取った学生たち
このプロジェクトでは、回収したバッグを専門の職人が丁寧にメンテナンスし、リユース品として再びお客様の元へお届けしたり、素材を分解して新たな製品の一部として活用したりしています。これは、製品のライフサイクル全体に責任を持つという、私たちの覚悟でもあります。
一人ひとりの買い物が、未来を変える力になる
衣料廃棄問題は、アパレル業界だけの問題ではありません。何を選び、どう使い、どう手放すか。私たち消費者一人ひとりの選択が、未来のファッションのあり方を大きく左右します。
- アイテムを、長く大切に使う。
- 流行だけでなく、その背景にあるストーリーや哲学に共感して選ぶ。
- 手放す時も、次の使い道を考えてみる。
FUMIKODAの製品を選ぶことは、単に上質なバッグを手に入れるということだけではありません。それは、日本のものづくりを応援し、環境に配慮したサスティナブルな消費を選択するという意思表示でもあります。
バイオマス素材を原料の一部に使用した人工皮革の初サンプル
私たちはこれからも、デザインの美しさや機能性はもちろんのこと、その背景にあるストーリーや地球環境への想いも大切にした「捨てない」ものづくりを追求し続けます。
自身のクローゼットを見つめ直し、FUMIKODAと一緒に、心から愛せる一着を長く大切に使い続ける、そんな新しい豊かさを始めてみませんか?その一歩が私たちの未来、そして地球の未来をより良い方向へと変える、確かな力になるはずです。