ワイン愛好家こそ利用したいアマゾンのワインサービス:FUMIKODA SALON : June 2018レポート

6月21日に「FUMIKODA SALON : June 2018」が開催されました。今回はアマゾンジャパンでソムリエールをされている原深雪さんをお迎えし、オンラインでクオリティの高いワインを購入するためのノウハウや最近のワインのトレンドについてお話いただきました。

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私は1990年にソムリエールの資格を取った後、30年くらいワインの仕事をしてきました。アマゾンに入社したのは約2年半前のことで、その際にアマゾンのソムリエサービスができました。今アマゾンには、3万点くらいのワインの登録があります。それらの中から、お飲みになるシチュエーションや価格など、お客様の要望に合ったワインをお電話やメールでお答えするというサービスを展開しております。

実はアマゾンでワインを探す際には、色々なコツがあります。例えば、これはアマゾンのトップページです。見慣れた画面ですよね。皆さんの多くは画面上部の白い検索窓に自分が欲しいものを入力して利用されていると思いますが、他にも便利な使い方があります。

Amazon.co.jpトップページ

まず、これがアマゾンのサイトのトップになるのですが、この白い検索窓のすぐ下に、小さく「カテゴリー」という文字があります。ここにカーソルを合わせて開くと、すべてのカテゴリーが一覧できます。そこからご自身の好きなジャンル、例えばドリンクやファッション、あるいはキッチングッズなど、それぞれのカテゴリーのページに行っていただいた方が、お好みに合うものの展開が随分と広がります。

Amazon.co.jo ワインのカテゴリーページ

これはカテゴリーからワインのショップページに入った所です。このページに入ると画像に目が行ってしまうので、あまり文字に目が向かなくなってしまいますが、画面上部に並んでいる青い文字にぜひ注目してください。「ワイナリーから直輸入」、「Amazonソムリエに相談」というサービスもあります。「My Wine CLUB」というのもありますし、お好きなワインが定期的に届き通常よりも価格が安くお求めになれる「ワインの定期おトク便」、後は「お買い得クーポン」があります。今回は、このクーポンを手に入れる方法を皆さんにご紹介したいと思います。

ここに小さく「お買い得クーポン」と出ています。そこに入ってから下にスクロールしていただくと、お酒の種類を選べるようになっていますので、お好きなお酒のカテゴリーを選んでいただければと思います。今回はワインについてのお話なので、ワインをクリックするとワインクーポンのページに行きます。それぞれ何パーセントオフ、何百円オフといったことが商品のサムネイル下に表示されていますので、ご興味のあるものをクリックしていただくと、お得にワインを買うことができます。

ワインの種類絞り込み

検索窓で検索できるのは、すでに銘柄をご存じのワインですが、それ以外にも上記左下の赤で囲った部分に表示されている「絞り込み」を活用すると、お好みのワインをさまざまな条件から絞り込んで探すことができます。画面左の縦ラインに、検索条件とチェックボックスが並んでいます。赤ワイン、白ワイン、ロゼ、スパークリング。産地や年代も選択できます。ぶどうの品種を絞り込んでいただくこともできます。

商品販売元の確認

そして、ワインに限りませんが、アマゾンでお買い物をされる時に一番注意していただきたいのが、赤線と赤い四角の部分なんです。なぜかと言うと、「誰が販売しているのか」という重要なポイントがここに書いてあるからです。例えば、海外から入っているブランド品などをお求めいただく場合もそうですけれども、ここに「○○が販売」と必ず出てきます。それをよく確認せずに買ってしまうと、アマゾン直販ではなく出品者から購入している場合がよくあります。ちゃんと信頼のおける販売元かどうか、画面の中でしっかりと確認していただくのが、アマゾンで物を買う時一番大事なポイントなんです。

アマゾンの特徴は、とにかく非常に多くの出品者が同列に並んで販売しているということです。アマゾンも販売していますが、他の業者も販売しているので、ここでぜひ見分けていただきたいと思います。アマゾンが販売しているものは、直取引をしてアマゾンが責任を持って販売しているということになりますので、何か差し障りがあった時にはアマゾンが面倒をみますという意味でもあります。ぜひクリックする前に少し画面を確認していただくと、安心してお買い物ができると思います。

日本のワインは甲州種とマスカット・ベーリーAが人気

次に、日本のワイン、無添加ワイン、偽造ワインについてのお話を順にしていきたいと思います。今、日本のワインがブームですよね。その中でも甲州種のワインが人気です。甲州種は、ヴィニフェラ系というヨーロッパ系の品種の血筋を引いていると言われていて、シルクロードを渡って日本にやってきたという説があります。良質なワインが造れるとヨーロッパで認められた日本で唯一の品種です。白ワインですが、甲州種は冷やして飲んでいただくと、渋みがあり、他の白ワインのシャルドネやソーヴィニヨンブラン、リースリングと比べると非常にポリフェノールの含有率が高いのが特徴です。甲州種を飲んだ際には、後味の渋みを意識してみてください。

甲州種は長く日本の土壌で栽培されてきて、日本の気候に合っています。ですから、ワインになった時の香りが地味なんですね。醸造した時の香りしかしない。ということは、日本の繊細な和食に合うんです。グラスを持った時に、お出汁や煮込み料理の香りと違和感なく組み合わせることができます。あと和食は、お魚の料理が多いですから、お刺身やあんかけの魚料理、西京漬けといった、風味のある和食の邪魔にならずに飲める辛口の白ワインとして、非常に今人気があります。

あと日本のワインですと、マスカット・ベーリーAという黒ぶどうがありまして、これから作った赤ワインも非常に人気が高いです。もともと日本で栽培されているぶどう品種は、日本の梅雨の湿度によって病気になりやすかったのですが、その病気に対抗できるぶどうとして、川上善兵衛さんという方が、交配品種として作られたのが始まりです。

ぶどうは粒の一つひとつが接していますよね。果汁をふくんだ水分が皮一枚で接しているということですから、水をふくむとカビが生えやすいんです。つまり病気になりやすい。それに対抗できるということで、マスカット・ベーリーAという品種ができております。

マスカット・ベーリーAは非常に渋みがまろやかなのが特徴です。渋みが少ない分、旨みが感じられやすい。色合いはボルドーのカベルネソーヴィニョンなんかに比べますと、非常に柔らかくて優しい、ちょっと朱色がかったような透明感のあるほのかな赤い色をしています。渋みが少なく、ほのかな辛口の味わいは、お煮染めや、治部煮、生姜焼きなど、日本の食卓でポピュラーなお肉を使った料理と合うと思います。

山梨に行かれるチャンスがあったら、山梨の郷土料理の鶏のモツの煮込みとマスカット・ベーリーAを合わせていただくといいと思います。秋には山梨で一泊二日のワイナリーツアーというのをやっています。生産者の方の所に行ってみると、また愛情もひとしおになるかと思いますので、行っていただけたらいいなと思いますね。

本当は怖い酸化防止剤無添加ワイン

次に無添加ワインのお話です。ちょうど今日、「酸化防止剤の使われていないワインは、どのように検索したら出てきますか?」という質問をお客様からいただきました。お答えとしては、そういったワインの取り扱いを得意とする輸入元があるので、その会社名をお伝えしました。ご自身で調べられたいそうでした。

日本で販売されている無添加ワインでよくあるのは「酸化防止剤無添加」と書かれたコンビニやスーパーで数百円で売っているワインです。あれは、酸化したものを取り除くという手法で作られているため安くできていますが、酸化したものを取り除く時点で、ワインのバランスは崩れています。そういったワインを製造している大手メーカーさんを悪く言う意味では決してありませんが、400円ワインや600円ワインが、なぜあれだけ安くできるかというと、それなりの理由があります。

まず、アルゼンチンやチリから、ぶどうジュースを船便で運びます。あそこは関税がないから安くできるのですが、さらに安く持ってくるにはどうするかと言うと、船に積む前の段階で加工するんですね。水分を抜いてキャラメル状にして、半固形状態で持って来るんです。それを日本で薄めて液体にします。

そうすると、甘みや酸味のバランスも崩れてしまうので、香料、甘味料、酸味料といったものが、たぶん全部入っていると思います。そこで酸化したものを作って取り除くことで、480円くらいで販売できるワインができ上がるというわけです。製造工程は、このようなものですが、元はぶどうジュースなので、ワイン・果実酒と表記して販売することができるんです。

でき上がったワインから酸化したものを取り除くのは、ものすごく手間がかかります。あるいは酸化しないようにワインを造ることも簡単ではありません。ワインを酸化しないように造るには、まず酸化に耐えられるぶどうを作らなければなりません。ぶどうの根をきちんと生やして、ぶどうの実に養分が濃縮するように栽培する必要があります。こういう栽培の仕方は大量生産には向かないので、花が咲いて青い小さな実がついた時点で、ある程度選定しないといけません。これを摘花と言いますが、そうすることで残った房に養分を濃縮させます。そのしっかりとした実ができた所で収穫します。

でも収穫した瞬間から枝の酸化が始まりますよね。ですから、なるべくフレッシュなうちに集めてつぶします。その時に冷たい冷気などをかけて、腐らないようにします。あるいは余分な雑菌が増えないようにもします。そういうケアをすることで、酸化防止剤を使わなくても、プレスして作ったジュースを発酵させることができます。そういう訳で、酸化防止剤無添加のワインがそんなに安く出てくることはあまりないはずです。

あるいは海外で相当な規模で作っている所もあるので、かなり安くぶどうを収穫できる所では、一部安いものも入っています。ただ、私たちが頭の中でイメージするような完全に添加物なしというのは難しいかもしれません。

原産国で買ったワインなら身体に優しい?

ただ、添加物があることイコール悪いことなのかと言うと、必ずしもそうではないと思います。ヨーロッパからワインを輸送すると、移動時間が長くなりますよね。その過程で不安定な状態になってしまうと、売りにくい状態のものを輸送してくることになりますね。ですから、最低限の酸化防止剤は使った方がベターだと考えてみてください。日本の水際で行われる酸化防止剤のチェック基準は非常に厳しい数字です。イタリアではOKな数値でも、日本に輸入前の検査では難しいものが出てきます。

酸化防止剤が入っていても揮発成分が多くて、ボトルの栓のコルクから揮発していくという人もいます。ですから添加物は怖いものではないと。ある意味、品質を安定させて安全なものにするために入っているものと考えていただいてもいいと思います。一日に50本飲むような方はいないですよね。一般的な日常の消費に向けての防腐剤の基準値と思っていただけたらと思います。

ところで、日本で買ったインポートのワインは、酸化防止剤が入っていて飲むと頭が痛くなるので原産国で買うという方が結構いらっしゃいます。私も医者ではないので、はっきりとした根拠は申し上げられないんですけれど、確かに敏感な方はいらっしゃいますし、私自身も、ある特定の銘柄だと頭が痛くなることがあります。年間に2000〜3000くらいの銘柄をテイスティングしているんですね。その中で症状が出る銘柄は決まっています。

実は出荷先となる国によって同じワインでも好まれる味わいに近いものをタンク別に、あるいは樽別に選りすぐって輸出しているワイナリーはあります。フランスで買ってもらうためのロットの瓶詰めした量はこれだけ、こちらの何千本はアメリカ行き、こっちは日本行きと分けています。特にボルドーのシャトーものですね。シャトー・マルゴー、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・ラトゥールは、全部出荷する国別に瓶詰めをしています。

ロバート・パーカーという有名なワイン評論家がいますが、彼に評価してもらうための樽を、まず用意しているんですね。アメリカは比較的残糖感が感じられる甘いタイプが好まれるので、甘みを少し強く感じられるタイプのワイン詰めてアメリカに出荷します。

向こうで買ったワインの方が何となく身体に合っていると感じるのは、こういう事情も少し関係していると思うんです。輸送時間が短い分、原産国で買ったワインには酸化防止剤があまり入っていない可能性があるかもしれません。

急増する偽造ワインに要注意

これまでワイン市場は欧米が中心でしたが、最近は中国などでもワインが売れるようになったので、アジア市場にも力を入れるようになりました。ところが、それによって偽造ワインが多く出回るようになってしまいました。偽造ワインはすごく流通しています。特に香港などが多いですね。特にシャトー・ラトゥールのようなブランド力のあるワインは狙われます。ラベルを貼り替えるのは当然としてコルクも入れ替えるなどもします。

あとラスベガスでは、ペトリュスの出荷量よりも多くのペトリュスが飲まれていると言われています。アジアはシャトーものが狙われていますね。ブルゴーニュも、だいぶ増えてきていますけれどボルドーほどではありません。というのも、中国はすごくカベルネソーヴィニヨンが好きなんです。グレース・ヴィンヤードという有名な中国のワイナリーもそうですが、ほとんどがカベルネです。売り場に並んでいるワインも中国では95%くらいが赤ワインです。

後はヴィンテージですね。オークションに出てくるものは注意しないといけません。メオ・カミュゼやジョルジュ・ルーミエといった良い作り手の銘柄は市場に出る数が少なくなってきているので、そういうものがオークションに出て来ると、どうしても皆さん注目してしまいます。ただ、どうも怪しいと言われています。ですから、オークションでは誰が出品したかといった素性を見ないと危ないと思います。

もっと身近な所で言うと、ドン・ペリニヨンを買う時は、ぜひ正規のインポーターと正規の倉庫で保管したものを買ってください。アマゾンも専用の倉庫を持っています。偽物を買わないためということもあるのですが、年間を通してきちんと温度管理をしていない所からドンペリを買ってしまうと、本当に美味しくないです。ワインは発酵しただけの飲み物なので熱に弱い。特にシャンパンはガスが入っていので、その気体が液体以上に温度の影響を受けてしまいます。

きちんと温度管理をせずに輸送をすると何が起きるかと言うと、例えばフランスから出航した船が南アメリカ大陸まで南下します。すると、その経路で1回赤道を渡ることになりますね。次に南アメリカ大陸内の陸路で輸送して、また南アメリカ大陸のどこかの港から出るとします。そしてアメリカに行くとすると、2回目の赤道を越えることになります。さらにハワイかどこかに寄ってから日本に来るとすると、40度以上の船底に温まったシャンパンを置き続けて移動することになります。そうなると、もう香りなんかしません。多少の泡立ちはあっても熱で傷んでしまったシャンパンなんて本来の姿ではないのです。

今日みたいな華やかできれいな泡立ちが見られること。グラスを口に持ってきた時の香り。これがやはりワインの楽しみだと思います。ですから、ぜひきちんとした管理をした所からお求めになって楽しんでいただきたいと思います。

原深雪さんプロフィール

ワインに出会って30年。常にワインと共にある仕事に携わる。出身は長野県。東京の大学で生活造形学科を専攻(高校の教員免許取得)。社会人となって転職先の輸入酒販店でワインの魅力を知り、当時新設されたばかりのアカデミー・デュ・ヴァン校へ入学。ワイン中心の働き先を探し、企業向けワインパーティーを請け負う広告代理店へ移り、「キッコーマン~女性のためのワインスクール~」の運営・企画講師を担当する。1990年ワインアドバイザー資格取得(№747) スクール開催のかたわら、クイーンズ伊勢丹新宿店にてワイン売り場の仕入れ・販売を担当。その後、東急本店和洋酒売り場の専属ワインアドバイザーに。

1997年シニアワインアドバイザー資格取得(№158) 。クイーンズ伊勢丹に戻り、新宿店お酒売り場スーパーバイザーとして勤務。その後は酒販店店長、フレンチレストランにてシェフソムリエ、酒卸問屋のコンサルティング、酒販店顧客のためのワイン教室開催などに携わる。その間、ワイン情報誌の『リアル・ワイン・ガイド』誌のレギュラー テイスティングコメンテーターとして執筆。雑誌のワイン特集の監修、TV取材、ワインコラムの執筆なども行う。

数々のワインを扱う場面を経験後、201512月よりネット通販のアマゾンジャパン合同会社にて、酒類事業部 専属のソムリエとして従事。アマゾンジャパンでは世界のアマゾンの中でも日本だけで開設された、お客様からのワインについて、無料でさまざまな問い合わせに答える「アマゾンソムリエサービス」を20162月に開設し、チームリーダーを担当。サイト上のストアへのアドバイスなども行う。