ビジネスリュック「BILLY business」誕生の裏側 〜 銀座テーラー社長 小倉祥子さん : FUMIKODA WOMANインタビューvol.13

クラウドファンディングにて大きな支持を得た、FUMIKODAのビジネスリュックの進化版「BILLY business」。スーツでの打ち合わせや出張といったビジネスシーンに特化した機能性と洗練されたデザインが評価され、高価格帯ながらも多くの方からご予約をいただきました。

この成功の背景には、創業90年を誇る日本の名門テーラー「銀座テーラー」の心強い協力がありました。

銀座テーラーは1935年の創業以来、日本のオーダースーツ文化を築き上げてきた老舗の紳士服ブランドです。職人によるハンドメイドの技術と、着る人の品格を引き出す美意識は、戦後の復興期から現代に至るまで、歴代総理大臣や皇室関係者、世界的に知られる経営者たちに選ばれてきました。

銀座テーラーの、職人技術を次世代へと繋ぐ姿勢はFUMIKODAが掲げる「日本の伝統技術の継承」というテーマとも深く通じ合います。銀座テーラー四代目の代表を務める小倉 祥子さんにお話を伺いました。

職人の手から生まれる、一着の力

Q. 銀座テーラーでは自社で職人の育成までされていらっしゃいます。大切にしている“ものづくり”の哲学について教えてください。

銀座テーラーは、創業以来ずっと「自社でつくること」にこだわってきました。東京・銀座のアトリエで、熟練の職人たちが一着ずつ丁寧に縫い上げていく──そんな手間と時間を惜しまない姿勢は、今も変わりません。

自社の職人がいてこそ、銀座テーラー。そこを手放してしまったら、私たちの価値は失われてしまいます。分業や外注が主流となった今、自社ですべての工程を担うというのは、非効率に映るかもしれません。でも、それこそが他社では真似できない銀座テーラーの価値であり誇りです。

実は銀座テーラーは、創業者も技術者ではありませんでした。でも、その分「いい職人と共にあること」が使命であり、会社の核となってきました。だからこそ、職人の高齢化が進む中、将来への危機感を強く感じていました。

「突然募集しても来てくれない。だったら育てよう。」と、2006年には自社で職人を育成する学校を設立しました。卒業して実際に銀座テーラーで活躍している方も多くいます。

一人の職人が全工程縫い上げる「一着縫い」ができる人材は、今や本当に希少です。でも、それができるからこそ、修理しながら長く使い、親から子へ受け継ぐこともできるようなスーツを提供できる。

少しサイズが変わっても、直せば着られる。手を入れながら、長く大切に着ていただける服づくりを、これからも続けていきたいですね。

※銀座テーラー様公式サイトより


女性が“自分らしく”装うために──オーダースーツの新しい選択肢

Q. 女性のためのオーダースーツに取り組むようになった背景を教えてください。

銀座テーラーと聞くと、「男性のためのスーツ」というイメージを抱く方も多いかもしれません。でも、近年では女性のためのオーダースーツにも力を入れています。

きっかけは、2019年に私が社長に就任したことです。経営者であり、スーツを日常的に着る立場だからこそ「本当に心地よく、自信が持てる一着」を追い求めました。

女性用スーツは事業として成立させるのが難しいと感じていました。オートクチュールだと数十万円もするものが多く、セミオーダーでも男性用スーツを事業のメインとして事業運営しているなかで新規で立ち上げるのはハードルが高くて。

そのようななかで、コロナ禍で少し時間ができたのでレディースに取り組んでみることにしました。社会全体でもちょうど“女性の活躍”が注目され始めた頃です。そこで誕生したのが、ピークドラペルのダブルスーツでした。

ダブルのスタイルでオーダーできるのが珍しく、すごく好評でした。私自身もフルオーダーの快適さを体感していましたし、“着ることで自分らしさが引き立つスーツ”を目指しました。

「ちゃんとしたスーツを着たい。でも既製服は合わないし、大手のオーダーだとクラシックっぽい……」というお客様のリアルな声に寄り添いながら、女性たちが自信を持って働ける装いを提案しています。

スーツに寄り添う、ビジネスバッグ──BILLY business


Q. スーツの専門家として「BILLY business」についてどう評価していますか?

「スーツにリュックはちょっとカジュアルすぎる」と思っている方も、多いのではないでしょうか? そんな固定概念を覆すのが、FUMIKODAと銀座テーラーが共同開発したビジネスリュック「BILLY business」です。

リュックは便利ではありますが、スーツに合わせるとどうしてもスポーティーで安っぽく見えてしまうんです。でも「BILLY business」は違います。

100%ウールの手縫いスーツに合わせても違和感のない上質な素材感、かっちりしすぎないけれどきちんと見える絶妙なフォルム。そして何より、たくさん入って、使いやすい。

機能性と美しさの両立って、本当に難しいですよね。でも、FUMIKODAさんとなら実現できました。スーツの格を下げない、むしろ引き立てるバッグ。そんなアイテムが欲しかったんです。あえてスーツに合わせることで、おしゃれ上級者の着こなしが完成します。

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これからも銀座テーラーは、手仕事を大切にしながら、時代の変化に寄り添った新しいスタイルを提案し続けていきます。


小倉 祥子(おぐらしょうこ)

青山学院女子短期大学家政学科卒業。1999年英国王立音楽大学にピアノ留学。2004年マーケティングを学ぶため米国の大学に留学。2008年銀座テーラーグループ入社。専務取締役などを経て、2019年に代表取締役社長に就任。

株式会社銀座テーラーグループ
https://www.gintei.com/