「大切なのは、効率化と順位付け」フィナンシャル・タイムズ在日代表 星野裕子:FUMIKODA WOMANインタビュー vol.05
「FUMIKODA WOMANインタビュー」では、さまざまな仕事の現場で活躍する女性たちへのインタビューを通し、仕事への取り組み方から、生き方やライフスタイルまでをお伺いします。今回は、フィナンシャル・タイムズ在日代表の星野裕子さんにお話を伺いました。聞き手はFUMIKODAのクリエイティブディレクター幸田フミです。
これからの女性はもっと売上を追うべき/自分の影響の範囲とアクセスできる情報を把握すること
幸田:星野さんは、外資系企業で出世して来られました。その立場になるまで、どうキャリアを築いてこられたのかすごく興味があります。
星野:私がフィナンシャル・タイムズの在日代表に就任したのは、35歳の時でした。実は最初に上からオファーが来た時に、「無理です」と1回断ったのです。まだ若すぎると思いましたし、日本人のしかも女性が就任するのは私が初めてでしたから自信が持てませんでした。ですが結局上司に「あなたがやらずに誰がやるの?」と言われ、最終的に辞令を受けることにしました。その時ばかりは、仕事の上で女性が感じるとされている、女性だから話を聞いてもらえないんじゃないか?というプレッシャーを私も感じていました。気持ちがタイトル負けしていたのです。
幸田:ですが、そのプレッシャーに打ち勝って、10年間に渡って今のポジションを続けられたのですよね?
星野:はい。とはいえ、すんなりこの仕事ができるようになるまでは5年くらいかかったと思います。「出世して上り詰めた感がありますね」と人からよく言われるのですが、入社してから今までの間にやってきたことは、ごく基本的なことだったと思います。まず自分の仕事は120パーセントこなします。その上で自分の仕事ではないことも常にやってきました。他部署からのお願いごともきちんとやりますし、会社の業績アップになることなら、割と貪欲にやってきたと思います。
実は人前に出るのは苦手、と星野さん。意外と事務仕事が得意なんだそうです。
自分の仕事さえちゃんとやっていれば、それ以上やってもお給料が変わるわけではありません。ただ、会社に貢献できることは自主的にやろうと心がけてきました。それに、弊社のように比較的小規模な組織は、先にやったもの勝ちというところがあります。人事の人から「今年もガツガツとEmpire buildingしているね」と言われることがありますが、自分の帝国をどれくらい大きくしていくのかということや、自分がアクセスできる情報の範囲を意識していくことも、仕事をしていく上で大切なことだと思います。
幸田:組織の中でEmpire buildingをしていく上で、男女のハードルの差を感じることはありましたか?
星野:私はあまり感じることはありませんでした。差があるとしたら、子どもができた場合に子育てという仕事が追加されることくらいかもしれません。仕事の上で色々なことに気がつく人は女性の方が多いと思います。少なくとも私の場合は、細かい部分についても敏感に気付いてしまいます。
例えばエクセルで売上げなどを見ていても、必ず私が間違いを見つけたりするので、経理の人にも細かいと言われることがあります。私は何事も突き詰めないと気が済まないので、絶対に何かをやりっぱなしにはせずに、その場で必ず解決をしていく質です。それは性別とは関係なく、もともとの性格なのかもしれませんが。ただ、部下の仕事のやり方を細かくチェックすることはありません。
幸田:結果だけを見て評価するということでしょうか?
星野:そうです。確かに私のやり方というものはありますが、それが必ずしも万人にとってのベストとは限りません。その人にとってベストな方法で仕事をしてほしいという考えでマネジメントをしています。
ただ、仕事をしながら思うのは、女性で売上げを追いかけるポジションの人がなかなかいないということです。もう少し女性がリーダーとしてP/Lなどの収支を見たり、きちんと売上げを持つポジションに入っていってほしいと思います。
私の上にいる女性の上司がいつも言っているのは、女性はコストセンターのポジションが多いということです。内勤や人事もそうですが、自分で売上げを持っていない職業が多い。ということは、女性の平均年収が下がるということです。男女の収入格差を小さくするためには、もう少し女性の職種も多様化しなくてはいけないと感じています。
FUMIKODAのバングル「MILLA」の高岡銅器と、ブルーのネイルがぴったりでした。
仕事と家庭の両立は、徹底した合理化が鍵となる
幸田:星野さんは仕事と家庭のことを、どのように優先順位をつけて両立されているのでしょうか?
星野:うちは夫婦2人ともがフルタイム勤務なので毎日疲労困憊ですが、私も主人も、比較的フレキシブルな勤務体系なので、授業参観などがあれば出席できていますし、時間がかかりそうな時は半休を取ったりしています。子どもはすごく手厚いケアをしてくれる認可外の保育園に通わせています。朝に預けてお昼ご飯も夜ご飯もその保育園でお弁当を注文しているので、その分の負担は大分軽いと感じています。夜は、大体7時くらいにピックアップに行きますが、その保育園は24時間やっているので、2人とも会食などで夜遅くなる時は10時にお迎えに行くこともあります。
幸田:そのように手厚くケアしてもらえるのは安心ですよね。家での家事はどのようにされていますか?
星野:洗濯と掃除は主人が担当しています。彼はすごくきれい好きなので、自分のプロジェクトとして、ちゃんと回してくれています。色々なものの在庫管理や子どもの世話、料理は私の担当です。
お風呂の時間が遅くなってしまうので、夕飯はほとんど作りません。手作りのご飯を作っても、多分1歳や3歳だと、なかなか食べないものです。きっと子どもから見ても、「ママがキッチンにこもっている」という記憶が残るだけで、ご飯を作ってもらったことに対して感謝することもないと思います。そう考えているので、私は家事をできるだけ短縮・効率化して、子どもと遊ぶ時間を最優先にしています。
家事をこなすよりも、子どもたちと一緒に遊ぶ時間をつくることを優先させる。と、自宅での過ごし方にも優先順位をしっかりつけていらっしゃるそうです。
最近のSNSを見ると、皆さん見た目もきれいにしながら、ご飯をしっかり作って、子どもの面倒も見て、仕事もしてます、という具合に、何事に対してもパーフェクトを目指しているように見えることがあります。そういう投稿を見た人がプレッシャーを感じて、「とても自分にはできない!」と思わないか心配になることがあります。するべきことはしっかりやるけれども、力を抜ける所は力を抜いたり、お金で解決できることはお金で解決していくのがいいと思います。
幸田:星野さんのお話を伺っていると、仕事もご家庭のことも、しっかりと優先順位が立てられていると思います。そのように取捨選択をしてこられたからこそ、今のポジションに行けたのかもしれません。
星野:そうですね。意識して上に上がろうというよりは、もっと楽しいことをもっとやりたいという思いが勝っていたので、仕事の日々の生活も工夫しながらやってきました。
FUMIKODAの魅力はファンクショナルであること
幸田:日頃、お洋服はどういう所で買われていますか?
星野:私は服にはあまりお金を掛けないので、ネット注文で買うことが多いです。店舗に行って試着して買う時間はないので、サイズ違いでまとめて頼んで、合わないものは全部返品します。ファストファッションブランドだと、1回に10万円分買うとして15着は買えますよね。そのお得感が素晴らしいと思います。気に入ったパンツやトップスがあったら、4色全部揃えることもあります。貴金属は空港のデューティーフリーで買うことが多いです。ただ、最近はあまりアクセサリーを着けていないですね
幸田:星野さんのファッションは、どちらかというとシンプルですよね。効率性や合理性を考えると、アクセサリーは、あまりいらないものなのかもしれません。
星野:そうですね。例えば時計はずっとApple Watchをしています。Apple製品は好きで、新しい製品が出ると欲しくなってしまいます。他社のガジェットも好きですし、ソリューションに関わるものには結構お金を掛ける方だと思います。例えば最近だとマンションを買い替えてリノベーションもしましたが、その時も家具よりはシーリングファンのスペックを徹底的に調べて発注するなど、機能性のある物にお金をかけました。
幸田:電子レンジなど家電も一つひとつこだわりがありそうです。
星野:そうなんです。考えてみると、私は家電女子でした。電子レンジも、蒸し物から全部できる電子レンジを持っていますし、パン焼き器や無水調理でカレーなどを作れるスロークッカーも持っています。冷蔵庫にもお金を掛けました。
星野さんの家電への偏愛ぶりに、爆笑する場面も。
幸田:機能にこだわって効率性にこだわる所に通じると思います。
星野:そうですね。私にとってファンクショナルであるということは、すごく大事なのだと思います。
幸田:だからFUMIKODAのバッグを気に入ってくれているんですね。機能的であるように作りましたから。
星野:本当にファンクショナルなバッグですよね。でも、デザインもかわいいのが魅力です。ロンドンに持って行った時に同僚たちから、「どこのバッグ?」って、3人くらいに聞かれました。
幸田:いつも使っていただいて世界中に連れて行ってくださっていると伺ったので、とても嬉しいです。
星野:ロンドンもふくめて月1回は海外に持って行っています。先日、韓国への日帰り出張もこれ一つで行きましたが、全然大丈夫でした。
幸田:星野さんのように効率化を何よりも大切にしている方に評価していただけたのは、すごく嬉しいです。
星野:これからもたくさん使います。
幸田:ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。
星野さんに愛用していただいているのはラージトートバッグ「GINA」のホワイトカラー。
通勤時に留まらず、世界中海外出張に連れて行っていただいています。
星野裕子さんプロフィール
2000年フィナンシャル・タイムズ(FT)に入社。コマーシャル部門所属。2006年からFTのアジア地域のデジタルコマーシャルディレクターを務める。2007年1月から日本代表を兼任。2014年より現職。現在、東京で日本支社の陣頭指揮をとるとともに、アジア全域における広告営業を統括する。
https://www.ft.com/