「声」は最強のビジネススキル。コントロールできれば仕事も人生も変わる:秋竹 朋子氏 CLUB FUMIKODAイベントレポート
「メラビアンの法則」をご存じでしょうか。有名なアメリカの心理学者・メラビアン博士が提唱したもので、他人に与える印象を左右するのは、見た目・表情・仕草といった視覚情報が55%、声質や話のスピードといった聴覚情報が38%、何を話したかという言語情報は7%であるという法則です。
つまり話した内容がどんなに素晴らしくても、見た目や話し方が与える印象には及ばないということ。とくにビジネスシーンにおいては、声や話し方は他の何をもしのぐ最強のツールになるということを多くの方が実感しているのではないでしょうか。
CLUB FUMIKODAでは、キャリア女性に向けた“相手の心を掴む「ビジネスボイス」〜秋竹朋子先生による声が劇的に変わる実践声トレ〜”を開催。講師にお招きしたのは、これまでに4万人もの声をトレーニングしてきたビジネスボイストレーナー・秋竹朋子さんです。
誰でも必ず、よく通る美しい声が出せるようになる
会のはじまりに、いつもはマイクを使って講師のご紹介をさせていただくFUMIKODAクリエイティブディレクター・幸田フミですが、この日はマイクを置いてごあいさつ。実は、幸田もかつて秋竹さんのパーソナルレッスンによって話し方のコンプレックスを解消したひとりです。
「本の出版を機に、講演のご依頼をいただくことが多くなりました。しかしIT業界に身を置いてパソコンに向かうばかりだった私は、それまで人前で話す機会があまりなく、1時間も話すとのどが疲れてしまうし、声が届かないからか、聴く人の意識をこちらに向けることもできませんでした。そこで秋竹さんに悩みを打ち明けたところ、たった一度のレッスンで成果を実感することができたんです」と幸田。
よく聞き返される、声が通らない、長時間話すと声が枯れる、緊張すると声がうわずる、話し方に説得力がない……。秋竹さんのレッスンを受ける人の悩みは実にさまざまです。実際、サロンにご参加の皆さんも「声や話し方にコンプレックスがある」という方がほとんどでした。
「でも大丈夫です。声の通りや滑舌は、なんらかのご病気を抱えている方でない限り、正しいトレーニングとコントロールをおこなうことができれば、誰でも必ずよく通る美しい声が出せるようになります」(秋竹さん)
声は仕事の成果を変える。人生を変える。そんな秋竹さんの言葉を聞いて、「みんなの前で声を出すのは恥ずかしい」と控えめだった皆さんも、すっかりポジティブになった様子。明るく乗せ上手な秋竹さんに促され、いよいよレッスンのスタートです。
たった1時間でこれだけ変わる。4つの秋竹さん流メソッド
よく通る美しい声を出すためには、まずは自分の声質を知らなければいけません。秋竹さんは参加者全員の声を聞き、A・B・Cの3タイプに分けていきます。
Aタイプは聞き取りやすく、すでに正しい発声法に近い声。Bタイプは相手に伝わりにくい声。よく聞き返されたり、長時間話すとのどが痛くなったりする人はこのタイプです。Cタイプは滑舌があまりよくない人。Aは数人で、なかにはBとCの2タイプをどちらにあてはまる人も。こうして自分の声の弱点や課題が明確になりました。
そして声を決める4つの要素をひとつひとつ確認しながら、ボイストレーニングをおこないました。
●声を決める要素①「呼吸」
呼吸には、おもに胸の周りの筋肉を使っておこなう「胸式呼吸」と、おなかの周りの筋肉を使っておこなう「腹式呼吸」があります。声が通りやすくハキハキした印象の人は腹式呼吸寄りの呼吸で発声していることが多く、Bタイプのように聞き返されたり疲れたりしてしまう人は胸式呼吸寄りの呼吸で発声する人が多いそうです。
息を吸うとおなかがふくらみ、息を吐くとおなかがへこむ。理屈ではわかっていてもなかなか難しい「腹式呼吸」ですが、いとも簡単にできる腹式呼吸を秋竹さんが教えてくれました。片方の手のひらを口元にあて、寒さにかじかんだ手をあたためるイメージで「ハァ~」と5秒間、息を吐く。これが腹式呼吸です。もう片方の手でおなかをさわると、息を吐いたときにおなかがへこむのがわかります。
レッスンではこの腹式呼吸を意識しながら、強い息を吐く、同じ強さで長く息を吐くといった練習もおこないました。
●声を決める要素②「発声」
正しい腹式呼吸の感覚をつかんだら、吐いた息に声の成分をのせていきます。これが「発声」です。秋竹さんがひとりひとり背中に手をあてて発声を促すと、どの方もとてもきれいな声が出せています。
おなかからたっぷりと息を出しておこなう発声法のほか、呼吸の量を調節して小さくても通る声を出す「カラスの鳴き声」を真似た練習や、シンガポールのシンボルである「マーライオン」が吐き出す“水の流れ”を、“声と息の流れ”に重ねてイメージしながら声を出す練習などもおこないました。
●声を決める要素③「共鳴」
声を出しているとき、喉元に指を添えると内側で何かが振動しているのを感じます。それが声帯です。声は息が声帯にあたって初めて生まれるもので、声帯が伸縮したり開閉したりすることで、声質や高さが変わります。つまり声のコントロールを担うのが声帯です。
「声帯はからだの筋肉と同じなので、鍛えないと老けます。45歳を過ぎたらトレーニングをしないと若々しい声は出せません」と秋竹さん。声帯の鍛え方や声のコントロール法、ビジネスボイスの理想的な高さについても教わりました。
●声を決める要素④「滑舌」
言葉につまったり言葉が滑らかに出なかったり、何度も聞き返されたり。「滑舌」には、口や舌の動きが大きく影響します。レッスンでは「らりるれろ」を3回繰り返してみましたが、その言いにくさにサロンからは失笑が漏れました。
そこで秋竹さんが教えてくれたのが「舌」のストレッチ。舌を左右に伸ばす、口の中で円を描くといった動きを大きくゆっくりとおこないます。それだけで「らりるれろ」が驚くほど簡単に出るから不思議です。そして、滑舌がより良く聞こえるアクセントのつけ方も習得しました。
「どうせ声が低いから」「自分の声が好きじゃない」とあきらめないで
いつもは2時間でおこなう内容を、1時間に凝縮させたボイストレーニングでしたが、皆さんの声の違いは歴然。成果はもちろん、全員で声を合わせることの楽しさも感じる充実した時間となりました。
参加された皆さんからは「ずっと声を出しっぱなしだったのに喉の疲れもなく、声を出すのがラクに感じる」「少しできるようになると、もっと知りたくなる。秋竹さんのレッスンをもっと受けてみたい」「からだがポカポカ温まり、頭もすっきりした」などの声が聞かれました。
「声が変わると自分に自信が持てるようになり、その態度がさらに言葉に説得力を持たせます。トレーニングを重ねれば、シチュエーションごとに声を使い分けることも可能です。『どうせ声が低いから、自分の声が好きじゃないから』とあきらめないでくださいね」(秋竹さん)
秋竹さんはボイストレーニングのプロとして活躍する今でも、人前で話すときは発声練習を欠かさないそうです。理想の声で話すためには、正しいコツを押さえて、意識し続けること。今回のセミナーは、その大切な第一歩を踏み出すいい機会となったのではないでしょうか。
シャンパーニュ「Duval-Leroy」とバッチョーネ BACIONEのお料理
最後まで残ってくださった参加者の皆様と記念撮影
秋竹 朋子(あきたけ・ともこ)
1982年、福岡県生まれ。東京音学大学ピアノ演奏家コース卒業。聖徳大学大学院音楽文化研究科修了。ウィーン国際音楽コンクール及び国内の受賞歴多数。現在はビジネスボイススクール「ビジヴォ」の代表として「声」や「話し方」の悩みを抱えるビジネスパーソンのボイス指導を実施。音楽家ならではの聴力と技術を駆使した「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、これまでに4万人以上、250社を超える企業研修を実施。ビジネス各紙やテレビ番組にも多数出演する。2011~2012年には経済産業省のグローバル人材派遣として「ビジネスボイス」が選ばれてフィリピンに赴任、日本にとどまらずアジアにて「声」の指導をするなど幅広く活躍。『「話し方」に自信がもてる1分間声トレ』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。
公式ブログ:声が変われば人生が変わる
ビジネスボイストレーニングスクール:ビジヴォ