幸田フミが語る「FUMIKODA」のものづくり哲学と未来:第3回 FUMIBLUE SALONレポート
長年FUMIKODAのバッグをご愛用くださっている皆さまによって誕生した、ファンクラブ「FUMIBLUE」。その第3回目となるサロンが開催されました。
今回は、FUMIBLUE副理事の原田和佳子さんとの軽やかな掛け合いの中で、FUMIKODAクリエイティブディレクターの幸田フミが、ブランド誕生の舞台裏や、素材・職人・デザインに込められた哲学を語りました。
当日の対談の模様を、レポート形式でお届けします。
Q. FUMIKODAというブランドは、どんな想いから生まれたのでしょうか?
もともと女性用のバッグに、働く女性がビジネスシーンで「これがあれば安心」と納得できるものがないと感じていました。
そこで、「世界に通用するメイド・イン・ジャパンのビジネスバッグを、自分の感性でかたちにしてみたい」と思ったのがFUMIKODAの出発点です。
2016年にパリの展示会「トラノイ」でブランドを発表し、最初はオンラインブティックからスタート。その後、百貨店や中目黒の直営店での展開へとつながっていきました。
常に心がけているのは、「私自身が本当に気持ちよく使えるのか?」という視点です。デザインや使い勝手はもちろん、機能や素材に至るまで自分の感性を信じてものづくりを続けています。
Q. バッグのデザインは、どのように生まれているのですか?
頭の中のイメージをスケッチしてから、折り紙で組み立てるところから始めます。四方から眺めたり置いてみたりしながら、細部の角度やバランスを微調整していく作業です。
「床に置いても倒れない」「電車で膝の上にのせやすい」「背負っても女性らしさを損なわない」──そうした細やかな工夫の積み重ねが、FUMIKODAらしいデザインにつながっていると思います。
こちら、及川美紀さんが手に持ってくださっているのは、初めてつくったバッグのサンプル。「ARIANNA」の原型ですが、今見ると恥ずかしいです。
Q. 素材へのこだわりについても教えてください。
立ち上げ当初は、当然のように本革を使うつもりでいました。けれども素材について調べていくうちに、革の生産背景によっては環境負荷や動物福祉、人権問題などがあることを知って、「本当にそれでいいの?」と、自分の中に疑問が生まれました。
そんなときに出会ったのが、高級車の内装に使われている人工皮革。見た目も質感も非常に上品で、しかも軽い。動物由来ではないし、国産で生産過程を確認できる。この出会いが、FUMIKODAの素材選びの転機になりました。
以降は、バイオマス由来の人工皮革や、海洋プラスチックを原料にした高品質ナイロン生地などを含め、できるだけサステナブルな素材を使用しています。
Q. 職人との出会いやものづくりの過程で、印象に残っているエピソードはありますか?
何も経験がない素人が始めたので、最初は何のつてもありませんでした。どこに行けばバッグを作ってもらえるのかも分からなくて、口コミや紹介を頼りに日本中工房を探しました。
お願いしても、「そのロット数では無理です」と断られてばかり。でもあるとき、ある関西の縫製工場の方が「サンプルだけでも作ってみましょう」と引き受けてくださって…ようやく一歩を踏み出すことが出来て本当に嬉しかったです。
ものづくりの業界は私がそれまで当たり前に使ってきたメールが使えなかったりするときもあるので、仕様の確認や発注をFAXでやり取りすることもあります。慣れるまでに戸惑うことは沢山ありましたが、“時間がかかっても一緒にやりましょう”と言ってくれる職人さん達と出会えたからこそ、FUMIKODAはここまで続けてこられたと思っています。
Q. 商品名はどのようにネーミングしていますか?
私がバッグに名前をつけるときは、「こんな女性になりたい」と思える人物や、持つ人が自然と背筋が伸びるような名前を選んでいます。
たとえば「ARIANNA」は、ハフィントン・ポストを創業したアリアナ・ハフィントンにちなんでいますし、「GLORIA」はグローバルに活躍するしなやかな女性をイメージしました。
バッグはただの道具ではなく、人生をともに歩む“パートナー”だと思っています。
Q. ユーザーから長く愛されているヒット商品には、どんなものがありますか?
今一番人気があるのは「BILLY」ですね。
リュックというとカジュアルな印象が強いですが、「背負っても美しい」「ビジネスシーンにもふさわしい」を追求してデザインしました。正面・横・背面、どこから見ても凛とした佇まいになるように、パターンのバランスにはとてもこだわっています。
それから、定番の「ALEX」も長年ご好評をいただいています。これはお客様の声を細かく反映させてアップデートを重ねてきたモデルで、まさに皆さまと一緒に育ててきたバッグ”という感じです。
Q. FUMIKODAは基本的にセールを行わないスタンスですが、それにはどんな想いがありますか?
FUMIKODAでは、アイテムの価格を「最初から誠実に設定する」ことを大切にしています。セールを前提とした値付けや生産ではなく、「必要な数を、必要な価格でお届けする」という考え方を貫いてきました。
利益率でいうと、他社さんに比べて高くないと思います。それでも、素材や縫製に妥協せず、職人さんの技術に正当な対価を払うことは、FUMIKODAとして絶対に譲れない部分です。
Q. ブランド9周年に向けて、どんな挑戦を予定されていますか?
2025年10月に、代官山でブランド9周年記念イベントを開催します。
テーマは「海」。これは、昨年から取り組んでいる海洋プラスチック再生素材への想いが背景にあります。世界中の海に流れ着いたプラスチックを回収し、新たなバッグの素材として生まれ変わらせるという挑戦です。
この新作は、クラウドファンディングで先行販売する予定です。FUMIKODAをずっと応援してくださった皆さまと、“未来につながるものづくり”の次の一歩を一緒に踏み出せたらと思っています。
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FUMIKODAのバッグに込められているのは、単なる機能やデザインを超えた、「生き方そのもの」。
そしてバッグを選ぶという行為は、“どんな想いを手にしたいか”を選ぶこと。
FUMIKODAはこれからも、ユーザーの皆さまの毎日に寄り添いながら、誇りを持てる選択肢を届けていきます。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。