黄金キャリアを築くための心得 TANAKAホールディングス 理事 原田和佳子氏✕幸田フミ FUMIKODA SALONレポート
幸田:
キャリア形成を目指す中で、人脈作りやリーダーシップの心得について学びたいと思う方は多いと思います。今日は金融業界や外資系企業を経て、現在はTANAKAホールディングス理事として活躍されている原田和佳子さんにお話を伺います。和佳子さん、本日はよろしくお願いします。
原田:
よろしくお願いします。今日は私の経験が少しでも参考になれば嬉しいです。
人脈作りの秘訣
幸田:
まず、和佳子さんは多国籍な環境やさまざまな業界で活躍されてきましたが、人脈作りのコツについて教えていただけますか?
原田:
大切にしてきたのは、「この人と話すと楽しかった」「面白いヒントが得られた」と次の日に思い出してもらうことです。特に国際的な場ではさまざまな経歴やバックグラウンドの方がおられるわけで、自分の気持ちのなかで「戦わない・くらべない」ことを意識していました。「笑わせてなんぼ」の気持ちで、自分の個性を活かした印象を付ける、さらにリスペクトするコミュニケーションを心がけていましたね。
幸田:
なるほど。まずは「楽しい人だと思ってもらう」ことが重要なのですね。
原田:
そうなんです。「この人とまた話したい」と思ってもらえれば、それが信頼のきっかけになります。何気ない会話の中で生まれるつながりが、後々大きな助けになることもありました。
管理職としての心得
幸田:
管理職になってからは、どのような姿勢でチームを率いてきましたか?
原田:
特に40代後半で異業界のメーカーに転職し、部長になった時が印象的でした。それまでの文化とは全く異なる環境で、部下から「この人、大丈夫かな?」と構えられているのを感じました。その時に意識したのが、「同じ船に乗りたい」と思ってもらえるリーダーでいることです。
幸田:
具体的には、どのようなことを心がけたのですか?
原田:
1+1+1が3ではなく、5になるチームを目指してきました。そのためには、まずチーム全体が「楽しく働ける環境」を作ることが重要です。ただし、自分の正義感や能力だけで突っ走らないように注意もしています。正義感が強すぎると、それが知らず知らずのうちに周囲へのプレッシャーやハラスメントにつながることがあるので。
D&I推進の現場での気づき
幸田:
現在、D&I(多様性と包摂)の推進にも力を入れていらっしゃいますが、具体的にどのような取り組みをされていますか?
原田:
研修を実施する中で感じるのは、参加者が「なるほど」と頷いていても、それが本当に腹落ちしているわけではないことが多いということです。変化を浸透させるには、一人ひとりが「自分事」として受け止めてもらうことが必要です。
幸田:
そのために工夫されていることはありますか?
原田:
言葉を徹底的に磨いています。専門用語やカタカナばかりだと伝わらないので、反応を見て何度も言い直すこともあります。きちんと考えをまとめて言葉にする、言葉を受け止め理解することが大切だと肝に銘じていいます。また、ハラスメントの背景には「時代の変化に気づかず、過去の成功体験に縛られた一方通行のコミュニケーション」があることが多いでので、「気づかないうちに自分が加害者になっているかもしれない」という自覚を持ってもらうことを目指しています。もちろんフィードバックや振り返りも大切にしています。
幸田:
なるほど。研修を通じて「自分事」として捉えてもらうことが課題なんですね。どのようにして、その壁を越えていますか?
原田:
参加者の反応を見ながら、伝え方を調整し続けています。研修でも1on1の場でも、「何が伝わらなかったのか」を問い続け、言葉を変えることで少しずつ理解を深めてもらっています。また、ハラスメントに関しては「加害者」「被害者」という二極的な視点ではなく、「あなたも加害者になるかもしれないし、被害者になるかもしれない」という視点で考えてもらうようにしています。そして「あなたならどうする?」と問いかけるわけです。
☆☆☆
読者へのメッセージ
幸田:
最後に、これからキャリアを築いていく方達に向けてメッセージをお願いします。
原田:
とにかく、いっぱい失敗してください。その失敗を最後の失敗と思わなければ、それで良いんです。目の前の課題に全力で向き合い、それをクリアすることに集中すれば、きっと大丈夫です。そして、最終的には「自分が幸せならそれでいい」と思えるくらいの働き方が一番だと思います。とにかく明るく、楽しく進んでいきましょう!
幸田:
力強いメッセージをありがとうございました!読者の皆さんも、きっと明日からの仕事に前向きな気持ちで取り組めるはずです。
原田:
こちらこそ、ありがとうございました。皆さんの未来が輝くものになりますように!
原田和佳子(はらだわかこ)
新卒で入社した総合商社で日本初の女性貴金属ディーラーとして貴金属業務に従事。その後、英系銀行本店に転職しロンドンへ。
帰国後は米系、スイス系証券会社、複数の総合商社で債券営業、コモディティー取引に従事。2011年に田中貴金属工業へ。スイス貴金属精練会社買収プロジェクトに参加し、統合チームとしてスイス・ニューシャテルに駐在。帰国後は田中貴金属グループのホールディング会社でリテール関連事業の業務監査などを担当。