女性弁護士はミタ! いざという時の懐刀になる3つの法律知識:FUMIKODA SALON:April 2017レポート

去る2017年4月27日に「FUMIKODA SALON : April 2017」が開催されました。数カ月に一度、中目黒のショールームで開催されるFUMIKODA SALONでは、毎回さまざまな専門知識を持つゲストをお呼びしてお話を伺いながら、シャンパンとお料理を楽しみ、交流を深めていきます。

FUMIKODA SALON 2017April

お料理は、リストランテ カシーナ カナミッラによるケータリング。ディナータイムに合わせて岡野シェフにお越しいただき、その場で作っていただいたパスタを堪能しました。

FUMIKODA SALON 2017April

会場で提供されたシャンパンDuval-Leroy(デュヴァル=ルロワ)のキーワードは女性的、繊細さ、気品です。これは当主キャロル・デュヴァル=ルロワとチーフ醸造家サンドリーヌ・ロジェット・ジャルダンが女性であることに由来しています。

FUMIKODA SALON 2017April

後半はゲストの弁護士の福崎聖子先生から、女性が幸せな人生を送るために知っておきたい法律知識についてご講演をいただきました。何かあった場合にも、最低限の法律知識を持っているだけで冷静になり適切な対応をすることができます。また、あらかじめトラブルを避ける自衛手段を知っておくことで、自分自身や身近にいる大切な人を守ることにもつながるはずです。

FUMIKODA SALON

福崎聖子先生:皆さんこんばんは。弁護士の福崎聖子です。今日はこのような素晴らしい機会をFUMIKODAさんに頂きましてありがとうございます。今日のテーマは、「女性弁護士はミタ!」。法律について女性が知っておきたいあれこれということで、FUMIKODA世代の方々がぶつかる3つの問題についてお話しようと思います。

まず親の老化の問題ですね。親の相続の話もあって兄弟関係が悪くなる、というのはよくある話です。次に、結婚・離婚・再婚に関連する問題。最後に、今の時代は結婚をすることが唯一の選択肢ではないので、ずっと女性が1人で生きて行く場合は、どういうことに気をつけたらいいか。その3つのテーマについて、順次お話をしていきたいと思います。

お父さんと介護ヘルパーさんが、まさか…?

まずですね、ご自分のご両親。たとえば、お母さんが亡くなってからお父さんの家に女性のヘルパーさんが来ているんだけど(あるいは昔からの知り合いや近所の女性という場合もある)、もしかしたらデキてしまったんじゃない…? うち結構お金持っているのよね…という相談が、結構実は多かったりします。ヘルパーさん(またはそれらの女性)が通帳を管理して勝手にお金をおろしてきたり、お家に入り込んだあげく、お父さんと再婚しちゃうという話も、ありました。

家族間のお金の問題だと、兄弟姉妹も争いの種になったりします。仲が悪い兄弟姉妹が、なぜか最近家に入り浸っていると思っていたら、ちょこちょこ親のお金がなくなるという話です。

このように兄弟姉妹やヘルパーから(生前にも、死後にも)何千万円も抜かれたのを、後から取り返すのは正直言ってすごく大変です。実際に今もそういう裁判があちこちで起きています。親が亡くなる直前に1日に500万円ずつ、合計数千万円も抜かれていたことが分かったケースもありました(もちろん、死後に抜くケースもあります)。

そういうことって、ちょっとおかしいな、と思った時点で信頼できる弁護士に相談したほうがいいんです。司法書士とか行政書士さんとかでもいいのですが、やはり弁護士がいい。なぜかというと、弁護士以外は、法律上、ほぼ紛争には対応できないことが多いですから。

予防策としては、まずご両親のどちらかの判断力が将来的に心配な状態になったり、体の自由がきかなくなった時には、「財産管理規約」を結べますので、それをしてください。その時には、親御さんから「あなた私の財産狙っているんでしょ、嫌な子ね」等と言われることも多いので、弁護士など第三者に入ってもらうと楽ですよね。

次に、本当に(親御さんが)認知症になってしまった場合には、裁判所を通して成年後見の手続きをします。その場合は、財産管理能力がないという証明のために精神科などで所定の検査をして診断書を取る必要があります。裁判所の監督も入るので子ども達の自由は利かなくなりますが、そういうことをやっておいたほうが後々の争いにはなりません。

後は、できればちゃんと遺言を書いてもらうのが色々なトラブルの予防になります。昔と違って今はそういう話題に対しても割とオープンじゃないですか。ただし、遺言は形式主義なので、自筆の場合には印鑑や日付などの決まった書式があります。形式を守らないと無効になってしまうのと、死後は家庭裁判所の「検認」という手続きが必要になりますので、できれば、自筆公正証書遺言よりは公証人役場に行って公正証書による遺言を最初からちゃんとやっておいたほうが、結局は、後々楽です。

離婚案件、やっぱり多いのはDVとモラハラ

次は男女問題に関わる案件についてお話します。離婚理由で一番多いのは性格の不一致ですが、今目立つのは夫からのDVやモラハラです。それから借金、女、もしくはその複合系です。だいたい借金をして女やギャンブルに使っていたりしますね。そのお金で飲みに行ったら女とデキちゃって不倫関係になったり。

モラハラはとにかく些細なことで機嫌を損ねて罵倒する奴ですね。もうしつこく何時間もネチネチやる。なかには監禁したり、お金を与えないとか罵倒したりして外界から隔離する人もいます。あと、自分の子どもなのに、焼きもちを焼いて辛く当たったり。

他には、ケチが原因になるケース。妻が使うお金を1円単位まで記録させたり、お金を渡さなかったり、結婚しているのに機嫌を損ねる毎に「婚約指輪を返せ、デート代を返せ、薬代を返せ」と言い出したり。中には出産費用や中絶費用も一切出さない人もいます。

もちろん女性に問題がある離婚のケースもあります。子どもを置いて素性の知れない男と駆け落ちしたり、家にいっぱいブランドの服があって、それをヤフオクとかで売っている人とか。女性の場合は、浮気と買い物依存、あとは鬱が原因になることが多いですね。

男の浮気ですけど、こんなケースがありました。知人に「旦那のDVとモラハラがひどいから離婚したいから相談に乗って」と言われたので、「それ、本当は女がいるんじゃない?」って私が言うと、「うちは絶対100%ないから。金ないし、ジジイだし」って言うんですよ。だけど、よく聞いてみると、兆候は必ずあります。洗濯物を持って帰ってこなくなるとか。それは一番に疑うべきところですね。あとは外泊をする、帰宅時間が遅くなる、「飲み会」の回数が増える、下着や洋服の趣味が変わるとか。急に冷たくなったり罵倒するようになった時は、だいたい他に女がいます。逆に急に優しくなる時は、ほぼ浮気…と私は思って話を聞いているんですけど、相談者は違うという。でも、私の経験では、十中八九、まずそうです。

そうなった時に、かなり酷い目にあっているにもかかわらず、「私に原因があるんだわ」と思う、あるいは相手に罵倒されて、そう思い込まされる女性がいるんですけれど、それは違います。要は相手が日陰であれこれ勝手なことをやっていても、正々堂々と調停の場や裁判所に引きずり出した時に、そこでも同じことが言えるか、そしてそれが認められるか、ということですよね。明るいお天道様の下に出せないことはやっていいわけがないんです。

さて、じゃあ離婚だな思った時に、何をやりますか? ということですが、まず証拠を取りましょう。浮気だったら探偵にお願いすることになりますが、探偵と弁護士の選び方は大事です。昔、ある興信所が依頼者の夫と不倫相手が居る部屋のドアに聴診器を当てて中の物音を聞くというふざけた調査をやったというケースがありましたが、それでも100万円も取っていました。そんな興信所に引っかかったら大変です。

派手に宣伝している興信所は、その分お金がかかって高くつくことが多いので、やめたほうがいいですね。弁護士の協同組合と提携している所は地味ですが料金は安いし、弁護士を通せば割引価格にしてくれたりします。

録音に関しては、他人の家に盗聴器を仕掛けるのは違法ですが、夫婦の部屋で会話などを録音しているものは証拠として認められます。ただし「自白した」というのは浮気に関しては強いかもしれませんが、DVに関しては「殴りました、ごめんなさい」という証言を録音できても「いやあの時に責められていたから、関係を修復するために自分を悪く言ったんです」なんて言い逃れされると裁判では不利なので、実際に暴力を振るっている時の音の方がよいです。

覚えていただきたいのは、裁判官は証拠を音声で聞かないということです。文書に起こしたものに目を通すんです。ですから、録音している時は下手に言い返さないでください。それを文書で読んじゃった時に、「なんだ、どっちもどっちじゃない」と、こちらの心証が悪くなっちゃうので。

浮気の証拠は、女の家かホテルの部屋で2人きりで2〜3時間過ごすのが証拠として認められることが多いです。ラブホテルだったら2人で入った写真だけでも証拠とみなされることが多いですが。DVなら傷、怪我の診断書、怒鳴り声の録音、物が粉々になった写真などが証拠になり得ます。

では、証拠を揃えたら何をやるか。一緒に住んでいて離婚調停をやるのは難しいですね。ですから別居してください。その時、向こうが「一方的な関係放棄だ、家事放棄だ、義務違反だ」ということを言ってくることが多いんですけれど、その時「ストレスでこんなに体調崩しちゃって、仕方がなくて家を出ました」と言うために、あらかじめ病状に応じた診断書を取っておくといいでしょう。

そして最近は、家を出てだいたい2〜3年で破綻ということで離婚が認められることが多いです。他の事情との関係で、1年で認められたケースもあります。もちろん双方の話し合いがつけば別居年数は関係ないので、協議で離婚できますが、話し合いがなかなかつかない時に調停になり、相手の浮気の証拠もない場合には「破綻した」というためにも別居期間はあったほうがいい。

調停というのは平たく言えば話し合いです。でも離婚自体は合意できても、財産分与や親権、養育費などについて決まらないと裁判にもつれ込みます。裁判にもつれ込んだ場合は、別居実績が2〜3年あれば向こうが嫌だと言っていても離婚は認められることが多いです。ただし、こちらが浮気をしてしまった場合は有責配偶者となるので、離婚請求はなかなか認められません。

離婚にかかる弁護士費用は弁護士により違いますが、だいたい一般的な着手金として30万円位を見てください(報酬は別途かかることが多いです)。でも、どうしてもお金がない場合は、持ち家や貯金がないかなどの審査がありますが国によって設立された「法テラス」(日本司法支援センター)で受け付けてくれます。法テラスは離婚案件なら大体15〜20万が着手金というところでしょうか。分割で、月々5,000円や1万円の支払いも可能です。

弁護士選びの基準は、もちろん相性もありますが、いい話ばっかりしない人がいいですね。「これは勝てます」とかすぐ言わない人。やたらと強気で攻撃的な人や感情移入しすぎる人は避けた方がいいです。あと大きい弁護士事務所の有名な弁護士にお願いしたいという人がいますが、こちらもお勧めしません。大企業のM&Aをやっているような弁護士が離婚裁判なんかやりませんから。300万円とか相場の10倍くらい払っても、ココだけの話、実際に裁判所に出てくるのは1年目の新人だったりします。

夫婦間に子どもがいる場合は、絶対忘れちゃいけないのは面会交流についての取り決めです。昔は家庭裁判所は、別れた夫と子どもを会わせないのが主流でしたが、今は逆に極端に面会を認めようとしすぎていると思います。もちろん子どもが望むなら会わせた方がいいんですけれど、子どもが本当に嫌がっているのを無理に会わせることが子どもの福祉のためになるのか。そこはもっと丁寧な対応を考える必要があると思います。「お父さんなんかに会うくらいなら」と子どもが言って道に飛び出して事故になったケースもありました。

(これは法律の話ではなくて一般論ですが、私が思うに)別れてしばらくして再婚したくなった場合、相手として避けるべきはケチ(笑)。結婚前からケチだったら、結婚したらもっとケチになります。また、人の悪口が多くて何でも人のせいにする人もやめておきましょう。束縛されると愛されていると感じられて嬉しいという人もいますが、結婚したら邪魔になりますので、これも避ける。後は、できないことや、やらないことに屁理屈をつけて逃げる人はダメですね。過剰なナルシストや…働かない人は、まず論外ですね。この辺も避けましょう。

最後になった時に「自分はこの人の何を見ているのか」ということは考えた方がいいかもしれません。たとえば環境や条件といったことは変わるものなので「自分が病気になっても、または相手が病気になっても、安心して一緒にいたいと思える人かな…」とか、「共に成長できる対等な関係かな」とかそういうことですよね。

離婚案件を担当して常々私が思っていることは、苦しみは必ず最後には乗り越えられるということです。その時は苦しくても、皆さんはちゃんとその後良い方と出会っていらっしゃいますから。それは苦労した分、許せる幅が大きく広がることで人として魅力的になり、公私ともに輝けるからだと思います。苦しいトンネルを抜けることで得られる学びは、たぶん人生にはあるのだと思います。

FUMIKODA SALON 2017April

お一人様を選んだ女性に必要なこと

さて、1人で生きるとなると、やはり身の安全が大事です。私には警察官の友人がいるんですけれど、彼女には「聖子ちゃん、日頃から、とにかく後ろをパッと見る(振り返る)のよ」とアドバイスされました。やましいことのある人は、見られると「この人にはスキがないな」と思うそうです。私も仕事柄、人から恨まれることがある仕事なので、やっています。

身の安全を守るために大切なのは、まずは君子危うきに近寄らずを徹底することです。でも、危ない人がいかにも危ない顔をしているとは限りません。むしろ優しい顔をして側にいたりします。そして、あなたが困るのを待って狙っています。すごくいい人で善人みたいな顔をしていながら、パッと困った時に足元を見てくるものなんです。ですから弱ったなと思った時は、客観的なことを言ってくれる人や違う人にも相談することが大事です。

あと皆さん、戸締りには気をつけてくださいね。性犯罪者は繰り返すことが多いので、忍び込むのは慣れているし空き巣もそうですから。オートロックはある程度の効果がありますよ。

ストーカーにも気をつけてください。彼らは目が合っただけでこちらに気があると勘違いするし、離婚した元夫とかもちょっと接触を持つと「まだ俺に気がある」と思ってストーカーになったりします。そういう男の人って粘着質だから、気をつけてください。

後は貸したお金は深追いしないことですね。前に1千万円を人に貸したら、そのトラブルでバラバラ死体にされて埋められた人がいました。その方は知人でした。ある時、家族の方から行方が分からないと電話があって、その数日後にニュースになっていました。その原因が借金の話のもつれだったんです。非常にショックでした。10万円でも人を殺す時代と言いますから、お金のトラブルには気をつけてください。

大切なのは、幸せに生き続けるための知恵を持つこと

色々と怖い話ばかりしてしまいましたが、私が今日一番話したかったのは、最近は政治もふくめて、世の中全体を見たときに、国民一人一人から、今まで当たり前のようにあった自由が…いつの間にか一つひとつ奪われようとしている時代だと感じます。そんな今、これから、どう自分自身や大切な人達の身を守っていくか、ということ。極端な話、こうやって集まってお酒飲んで楽しい話をしている所、そこに集まっている人たちを、今の政権と意見が合わないからというだけの理由で、正当な理由もなく捕まえられるような法律が、今まさに通ろうとしているように感じます(※)。

そんな時だからこそ、自分の目で正しい情報を見て選んでいかないと、ご自分の未来もそうだし、お子さんいらっしゃる方はお子さんの未来も守れないと思っています。だから自分なりの軸、智恵を持って、何が真実で大切なことなのか…今こそ、そしてこれからも、しっかりと情報を選び判断しながら生きていくことが大切だと思います・・・今後も、こうして皆さんと楽しいお酒を飲みながら人生を謳歌していければと心から思っています。これからもどうぞよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

注:本記事は、一弁護士の経験・見解に基づくものであり、すべての類似案件に必ずしも当てはまるものではありません。

※編集部追記(2017年7月6日):犯罪を計画段階から処罰できるようにする「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法が6月15日午前、参院本会議で可決、成立しました。

福崎聖子氏プロフィール
東京弁護士会所属弁護士。元日弁連理事、初代東京弁護士会新進活動委員会委員長、元法律相談センター副委員長等役職多数。多数の民事刑事少年事件ほか、一部上場会社役員等、企業法務も取り扱う。熊本市生まれ。上智大学卒業、途中ワシントン大学に一年間留学、東京大学大学院卒業。

FUMIKODA SALON

福崎聖子先生と、FUMIKODA SALONにご参加いただいたみなさま