カバンの街「豊岡」の魅力|FUMIKODA紀行

日本一のバッグ生産量を誇る、兵庫県豊岡市。そのバッグづくりの歴史はなんと紀元前27年にまで遡るそうです。

今回豊岡の街を訪問したFUMIKODAのクリエイティブディレクター幸田フミが、バッグの生産のみならずアートや工芸、そして豊かな自然の恵みを基盤とした地域創生事業にも注力しつづける、豊岡の魅力をレポートいたします。

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こんにちは、幸田フミです。
FUMIKODAはバッグのコレクションの一部を「カバンの街」として有名な豊岡で生産していただいています。

コロナ下でなかなか訪問が叶わなかったのですが、昨年末、豊岡市でワークイノベーション事業などのアドバイザーを務めていらっしゃる小安美和さんに同行させていただき、豊岡市役所の皆様に現地の見どころをご案内いただく機会に恵まれました。

思っていた以上にコンテンツが豊富で魅力的な街だったので、ご紹介したいと思います。

バッグ生産量日本一の街、豊岡

・カバンストリート

100社以上の企業がバッグの生産関連に携わっている豊岡。市街地に「カバンストリート」という通りがあるのはさすがです。

カバンストリートは地場の鞄産業と商店街が協力して2005年3月に開業して以来、豊岡の観光スポットの一つとして親しまれてきました。27のお店のうち、14店舗がバッグ関連のお店を営んでいます。

バッグのショップが軒を連ねる中、鞄職人を育成するスクールを併設している「Toyooka KABAN Artisan Avenue」と呼ばれる施設も。国産鞄の約7割が製造されている豊岡には、一流の鞄職人を目指すArtisanの卵たちが全国から集まってきているそうです。これからますます鞄産業が発展しそうですね。

道すがら、前豊岡市長で現在豊岡アートアクションの理事長を務めていらっしゃる中貝宗治さん、豊岡演劇祭実行委員会のプロデューサー田口幹也さんにばったりお会いしました。
(左から、田口幹也さん、小安美和さん、私、中貝前市長の奥様、中貝宗治前市長、ソーシャルピーアールの若林直子さん、メディアジーンの今田素子さん)

こんな偶然のご縁に遭遇するのも小さな街ならではの魅力ですね。

・松下ラゲッジ

FUMIKODAのダイバーシティコレクション、EDDYとFELIXの製作をお願いしているのが豊岡のバッグメーカー「松下ラゲッジ」さんです。
時代に合ったアイデア商品の企画、製作が得意なメーカーで、OEM生産を請け負う傍ら、アップサイクルプロダクトやエコ素材を使用したアスリートベストなどユニークな製品を生み出していらっしゃいます。

FUMIKODAの人工皮革を生産していただいている生地メーカーに松下ラゲッジさんをご紹介いただいて以来、クオリティの高い製品を提供していただいていましたが、この度初めて工房を見学させていただきました。

ここ最近はリサイクルやアップサイクルなど、サスティナブルな素材を使用したバッグ製作が増えているのだそう。お話をうかがいながら、環境への意識が高まるマーケットで、ただエシカルなだけではなく、機能性・デザイン性が高い製品を企画しながら、社会のお役に立てる仕組みをいかに構築していくか…というクリエイティブの力が求められているような気がしました。

・柳行李(やなぎごおり)

カバンの原点と言われている「柳行李(やなぎごおり)」。西暦27年(!)から運搬用の入れ物として使われてきました。コリヤナギの樹皮をはいで水洗いしたあと、天日で乾燥させた白柳(しろ)と呼ばれる柳を職人が編んで、一点ずつ丁寧に作られています。

今回豊岡市役所の方にご案内いただいたのは、出石蕎麦で有名な出石の街にある「たくみ工芸」さん。伝統的工芸品の豊岡杞柳細工を製造されていて、コリヤナギの栽培から加工、商品の製作、販売までを一貫して行っていらっしゃる国内唯一の工房だそうです。

工芸士の方にお話をうかがいながら、なにかFUMIKODAとコラボできないかなぁ、、と、イメージをふくらませていました。

アートと工芸の街、豊岡

・豊岡演劇祭

豊岡が「演劇のまち」だということはご存知でしょうか?実は私、訪問する直前まで知りませんでした。
その象徴的なイベント、観光とパフォーミングアーツを組み合わせた「豊岡演劇祭」は2019年にスタートしました。国際的なパフォーマーから若手アーティストまで、幅広い演者による多彩な舞台に触れることができる年に一度の演劇祭で、劇作家の平田オリザさんがフェスティバルディレクターを務めていらっしゃいます。

昨年は13団体、15演目の公演が予定されていましたが、直前になって兵庫県に緊急事態宣言が発令されたためやむなく中止されてしまったそうです。

けれども豊岡演劇祭は、5年でアジアNo.1に、10年で世界有数の演劇祭となることを目指しているのだとか。地域ビジネスの活性化や、新しいサービスの創出などまちづくり推進事業のロールモデルになりそうですね。

・出石永楽館

出石にある「永楽館」を案内していただきました。明治34年に開館した兵庫最古の芝居小屋で、その昭和初期のモダン建築は兵庫県有形指定文化財に指定されています。


当時は歌舞伎や寄席などが上演され、大衆文化の中心として栄えましたが、娯楽の多様化によって昭和39年に閉館しました。その後復活を望む声が高まり、約20年にわたる修復工事の末、平成20年に再び蘇ったそうです。

年末に歌舞伎俳優の片岡愛之助さんが出演する永楽館歌舞伎は、出石の一大イベント。舞台を楽しむだけでなく、廻り舞台や奈落、花道といった貴重な劇場機構を見学することもできるので、タイムトリップを体験できるスポットとしておすすめです。

・出石焼(いずしやき)

日本の伝統工芸品、出石焼の窯元直売所「虹洋陶苑」を訪問しました。
出石焼は、日本では珍しく白磁を中心に生産されている磁器で、真っ白で透き通った冷たい質感が特徴です。

出石の街には約50軒のお蕎麦屋さんが軒を連ねています。うどん屋さんやラーメン店はどこにも見当たりません。
5枚の小皿に盛られたお蕎麦を、徳利に入ったつゆをそば猪口を注いでいただくのが「出石皿そば」の定番スタイル。使われているのはもちろん出石焼です。

モノは、使われてこそ。地元の伝統工芸品が食器や酒器、花器などの装飾品として日常生活に溶け込んでいることに魅力を感じました。

豊岡の自然と観光

・コウノトリ

市内を移動中に、生まれてはじめて国の特別天然記念物コウノトリに遭遇しました。
一度は日本で絶滅してしまったコウノトリ。その後、最後の生息地だった豊岡で長年にわたってコウノトリを育む取り組みが実施され、再び野生のコウノトリが空を舞うようになりました。

この先コウノトリと人間が共生していくには、生活や経済活動を見直し、自然環境を整えるしかありません。その取り組みのひとつとして実施されているのが「コウノトリ育むお米」の生産です。
できる限り自然のままの田んぼで、コウノトリのエサとなる生物が育つ環境を整備し、種子の消毒にも農薬を使用しないなど工夫を凝らして生産されたお米。現地でいただいてとても美味しかったので、早速ふるさと納税で注文しました。

消費を拡大させ、コウノトリを守るために子どもたちが「給食で私たちが食べます!」と市長に直談判し、学校給食での使用が始まったというストーリーも素敵でした。

・城崎温泉

豊岡からほど近い城崎温泉は、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで二つ星評価を得ている開湯1300年の名湯です。

今回は「山本屋」さんに宿泊し、温泉街に立ち並ぶ7つの外湯のうち3つを巡ることができました。山本屋は創業350年の老舗旅館ながら、独自に麦芽100%地ビールを醸造されていて、エントランスに設けられたバーカウンターで4種類のビールを楽しむことができます。

川を見下ろす大きな窓には小さなデスクとライト、電源などが設置されていて、ワーケーションにも最適。デスクワークに疲れたら、ゆっくりと温泉に浸かったあと、極楽寺やアートセンターなどの見どころを散策しながらウォーキング…なんてこともできそうですね。

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バッグがご縁で訪れた豊岡は、二泊三日で味わいきれないぐらい魅力あふれる街でした。

今回の訪問がきっかけで、FUMIKODAからまた新しいアイテムが生まれることになりそうです。豊岡とFUMIKODAのコラボレーション、楽しみにしていてくださいね!