ただ「おいしい」ではもったいない。ワインは自分の感性を磨く最高の教科書:畑久美子氏CLUB FUMIKODAイベントレポート
特別なシーンではなく、カジュアルなお店でもリラックスしたご自宅でのお食事でも、気軽にワインを楽しむ人が増えています。
しかし、「その分、『本当にワインを楽しんでいる人』と『飲んではいるけど、ワインを知ろうとしない人』の差が大きくなっていることが残念です」と語るのは、都内に4つの拠点を構えるワインスクール、レコール・デュ・ヴァンで統括副校長を務める畑久美子さんです。
「ワインは『おいしかったらそれでいい』ではもったいないです。ワインは自分と感性の似た人と出会う機会を作ってくれますし、ワインを知ることで女性としてもビジネスパーソンとしても向上することができます」(畑さん)
そこでCLUB FUMIKODAでは、畑さんをお招きし、ワインのテイスティング、味わいの比較、料理とのあわせ方、ワインのあるシーンでのスマートな振る舞いやマナーについてレクチャーしていただきました。
知識を持ち、感性を研ぎ澄ませると、ワインの違った楽しみが見えてくる
「ワインを飲みに行きませんか?」と誘われたり、家でも「今日はワインでも開けようか」という雰囲気になったりすると、自然と心が華やぐのはなぜでしょう。ワインと聞くだけで、どこか知的な印象も受けますね。畑さんはワインを絵画にたとえて説明します。
「ルーブル美術館で絵を見て『ああ、いいな』と感じることはとても素敵なことです。しかし、作者の生き方や絵が描かれた歴史的背景などを知って見ると、解釈がまったく違ってきます。ワインも、ただ『おいしい、好み』という感覚だけではなく、多少の知識を持ち、感性を研ぎ澄ませて味わうと、また違った楽しみが見えてきます」(畑さん)
“ワインを知る”となると、産地や品種、土壌といった難しいことを学ばなくてはいけないと思いがちですが、「難しく考えなくていいですよ」と畑さん。さっそくご用意くださったワインをテイスティングし、解釈の方法を学んでいくことに。使用するのは数々のコンクールでも使用されている世界共通規格のテイスティンググラスです。
ワインテイスティングの方法
①色を見る
ワインを口にする前に、グラスを少しだけ傾けて色に注目してみましょう。このとき、白いクロスを背景にしたりすると、色そのものの特徴がよりわかりやすくなるそうです。
「同じ白ワインでも、レモンイエローやグリーンがかった色など、さまざまな色味があります。慣れてくると色と香り、味わいが線でつながることがわかったり、想像に反して新しい発見があったりして楽しいですよ」(畑さん)
②香りをとる
テイスティングでは香りを「嗅ぐ」ではなく「とる」という言葉を使うそうです。白ワインでは、リンゴのようなやさしい香り、レモンのような爽やかな香り、洋梨や桃のような甘い香りなど、じつにさまざま香りを感じることができます。
「具体的なフルーツやお花の香りはもちろん、エレガント、力強い、スモーキー、シャープといった香りの特徴を探してみるといいでしょう」(畑さん)
③口に含んで味わう
ここでようやく、口に含んでみましょう。味わいだけでなく、温度やテクスチャー、鼻から抜ける香りにも意識を向けましょう。色や香りから想像していた通りの味でしょうか。
「力強く果実味が凝縮されているから温かい気候の土地で作られたワインかな。ブドウの品種は何かなと、たった1杯のワインでさまざまなことに思いを馳せることができます。知識が増えるともっともっと勉強したくなるのもワインの大きな魅力のひとつです」(畑さん)
①から③までの流れは、慣れればスムーズに行えるようになるとのこと。まずはひとつひとつ丁寧に行ってみましょう。
④飲むシーンをイメージする
「さらに必ずやってほしいことがある」と畑さん。テイスティングのテクニックではありませんが、ワインのあるシーンをもっと楽しくするためのトレーニングになりそうです。
「旅先で、テラスで、海を眺めながら、大切な人と特別な夜に、というように、あわせたい料理やシーン、一緒に飲みたい人にまでイメージを膨らませると感性も磨かれます。妄想だけならお金もかかりませんしね(笑)。ジビエがテーマのワイン会に良さそう、BBQにピッタリだなという1本があれば、覚えておくと持ち寄り会のときにあれこれ悩まずに済みますよ」(畑さん)
この日テイスティングしたのは、この5種類。
(発泡の穏やかなスパークリングワイン)
ルミエール スパークリング 甲州 2016(ルミエール)
日本・山梨
【白ワイン 】
シャトー ジュン 甲州 2018(シャトー ジュン)
日本・山梨
【ロゼワイン 】
ロゼ ダンジュ 2017(シュマン・デ・サーブル)
フランス・ロワール
【赤ワイン 】
アタ・ランギ クリムゾン ピノ・ノワール 2016(アタ・ランギ)
ニュージーランド・マーティンボロ
【デザートワイン 】
(甘口)
シャトー ラボー プロミ 2003(シャトー ラボー プロミ)
フランス・ボルドー
ご参加の皆さんは、味わいの感想やあわせたい料理、産地などを口にしながら、テイスティングを楽しんでいました。また、5本目のデザートワインにあわせて、アルコールケーキ専門店「HappyRummy」を主宰する松尾裕子さんがラム酒とレーズンのケーキをご持参くださり、全員でそのマリアージュを楽しむといううれしいサプライズもありました。
ラム酒がたっぷり入ったHappyRummyのアルコールケーキ
ワインは理想の自分に近づけてくれるツールとなる
レッスンではスマートなチーズの選び方や、グラスに口紅のあとを残さないコツ、「レストランに入るときは男性が先? 女性が先?」といったマナーや、接待などの酔ってはいけない席でのワインの楽しみ方などにもふれました。
じつは、FUMIKODAクリエイティブデザイナーの幸田フミは大のワイン好き。畑さんのスクールでワインを学び、いまだにその知識が役に立っているといいます。
「接待の席では相手にお酌することもありますが、ワインはお店のサービスマンでなければ同席の男性が注ぐもの。相手を立てるという意味でも、女性はボトルを持たないほうがいいでしょう」(畑さん)
クラスのあるレストランでも、店の支配人や同伴の男性のエスコートに身をまかせ、自分が思うよりゆっくりと振る舞うこと。
「女性は30歳を過ぎたら、自分がどうあればその場にふさわしい存在になれるかを意識することが大切だと思います。身だしなみやお店での立ち居振る舞い、言葉選びなど、それはすべてワインのあるシーンで習得し、実践することができます。ワインを学ぶと感性が磨かれるとお話ししたのはそんな理由からです」(畑さん)
ワイン初心者の方も、十分飲みなれた方も、それぞれにワインから学ぶことの多さに気づかされます。お稽古事をいくつもこなすよりも、ワインやワインにまつわるマナーを知ることのほうが理想の自分に近づけるかもしれません。
新しいことを始めたくなる秋、ワインをその選択肢のひとつにするのも素敵。そう思わせてくれるワインセミナーでした。
FUMIKODAの大石から秋冬コレクションをご紹介させていただきました
講師の畑先生を囲んで参加者の皆様と記念撮影
畑 久美子(はた・くみこ)
白百合女子大学入学、結婚。1999年、日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー資格を取得。2006年、「ボルドー騎士団(ボルドーワイン最高評議会)」叙位。2003年に創立、2008年に株式会社レコール・デュ・ヴァン代表取締役に就任。現在はワインスクール レコール・デュ・ヴァン統括副校長(恵比寿校・新宿校)として教鞭を執るほか、直営レストラン2店舗と関連会社2社の代表を務め、都内に9店舗の飲食店を営業展開するなどの活躍をしている。『まわりの人が笑顔になるワイン選び』(宝島社)などの著書・共著を持つ。