慶應SDMヒューマンラボ「日本の美と技の未来」シンポジウム:幸田フミ登壇レポート

2020年10月12日、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科ヒューマンラボ(以下SDM)がシリーズで開催するオンラインイベント「日本の美と技の未来」第3回に、幸田フミがゲストとして招かれ、展開するプロダクトを紹介するとともに、FUMIKODAへの想いを語りました。
オンラインで配信されたシンポジウムの模様をレポートします。

日本が誇る「美と技」を
日常の中に取り入れ楽しむことの効用

ヒューマンラボを主催する前野隆司先生は、幸福学の第一人者。同じくSDMで研究員として活躍されている奥様の前野マドカさんと、ご夫婦でFUMIKODAを愛用してくださっており、FUMIKODA JOURNALでも登場していただいています。

FUMIKODA SALONにお越しいただいた時の前野隆司先生と前野マドカさん

シンポジウムは、主にこのお二人と幸田のトークを中心に行われました。美しいものを見たり触れたり作ったりする体験と、幸せな生き方には大きな相関があるという仮説のもと、FUMIKODAをプロデュースする幸田も、その美しいプロダクトを持つ人も、美しい心の持ち主であろうという議論が展開されました。

なぜFUMIKODAのプロダクトは、多くの人を魅了するのでしょう。そのヒントとなる自身の発想やこだわりを、幸田はトークの中でつまびらかにしました。

「ファッションブランドを作りたいと思って始めたわけではない。自分の頭の中にあるもの、自分が使いたいと思うバッグを、現実のモノにしたい。ただただそれだけを追求して、今に至っているという感じです。私自身は、ファッションをやっているというよりも、ツールを作っているような感覚なんです。」(幸田)

自分が使いたいバッグを形にする。その気持ちを糸口に、いくつもの「譲れない条件」をクリアしていったら自然と、多くの人に愛されるバッグになった。幸田が伝えたかったのは、そういうことでしょう。

ファッション業界のこともバッグのこともわからないまったくの素人だったからこそ、常識にとらわれず、「ああしたい、こうしたい」を詰め込んだ結果、他ではやらない、他ではできないクオリティを実現することができたわけです。

トレンドに左右されない「美」への追求

「私は業界のトレンドとかはあまり意識していないです。それよりも、ユニークな技術で開発された素材だとか、高機能なファスナーだとか、そういう話には飛びつくんです。」(幸田)

例えば機能性とデザインを両立することへのこだわり。機能性には富んでいるけれど素敵じゃないとか、美しく秀逸なデザインだけれど機能的にはいま一歩というのはダメ。幸田が目指したのは、「女性のための勝負バッグ」だからです。
勝負といっても、たんに恋愛やビジネスを成功させるということではありません。これさえ持っていれば、どんなシチュエーションでも堂々と振る舞える。そんなふうに、持つ人を鼓舞したり、引き立ててくれるバッグ。

出張の際には必ずFUMIKODAのバッグを持っていくという前野マドカさんも「自信をもたせてくれる」と、深く共感されていました。

講演で出張中の前野マドカさん。
GINAシリーズをサイズ違いで持っていかれるそうです。

シンポジウムでは、TBS日曜劇場「半沢直樹」で江口のりこさん扮する白井大臣のお仕事バッグとして、ARIANNAが採用されたことも話題に上りました

ドラマ制作スタッフのご要望は「強めのキャラの女性に合うバッグ」。ARIANNAのコンセプトが、大臣のキャラクターにぴったり合致したため採用に至りました。

ドラマをきっかけにFUMIKODAをビジネスバッグのブランドとして知ってくださった方も多く、オンエア後に同じブラックカラーのARIANNAは完売となりました。

ドラマ「半沢直樹」にARIANNAが登場したシーン
※画像はPrecious.jpより

前野先生からは、ユニセックス商品のラインナップが増えたことへの喜びの声が上がりました。

「奥さんからFUMIKODAの魅力をずっと聞かされていて、いいなあと思っていたところ、僕が持てるものも徐々に出てきて、うれしかったですね。」(前野先生)

FUMIKODAのリュック「BILLY」やトートバッグ「ALEX」を
お使いいただいている前野隆司先生

男性が持てるものも出してほしいというご要望は、ずっとありました。FUMIKODAには「女性をエレガントに見せる」という前提があるので、ユニセックスという形で展開したところ、性別を問わず人気のシリーズとなりました。

「超軽量2wayリュックBILLYを見て、初めてリュックを持ったという女性のお客様もいらっしゃいました。リュックなんてエレガントな装いに合わないし、通勤に持つのはおしゃれじゃない、と思っていた人が、これならいい、とBILLYを選んでくださったんですね。」(幸田)

カジュアルすぎてビジネス向きではない、というリュックに対するお客様の固定観念、先入観を覆したことは、FUMIKODAにとっても大きな体験でした。

メイドインジャパンへのこだわり

シンポジウムの主題は「日本の美と技」。日本製へのこだわりは、FUMIKODAの特徴の一つです。納得できるバッグを求めて試行錯誤する中で幸田が気づいたのが、「小さいものであればあるほど、日本製のほうがいい」ということ。そのためFUMIKODAでは、ネジやファスナーなど小さな部品まですべて、メイドインジャパンの素材を使用しています。縫製ももちろん国内で。

「日本製にこだわるとコストが嵩みます。でも品質が違う。日本の職人さんの高度な技術や伝統工芸の文化を守り継承させていくためにも、積極的に日本独自の技術や和の要素を取り入れていきたいと思っています。」(幸田)

前野先生の、「日本の古き良きものをもっと世界に、未来に、伝えていくべきなのではないか」という問いかけに対し、幸田が、FUMIKODAをグローバルブランドに育てたいという、強い思いを吐露するシーンも。

さらに「心の美しさとはなにか」という深長な問いに対しては、「魂の行き着く先のように思っています。誰にもいろいろな欲、性(サガ)があり、それに翻弄されそうになることもあれば、真面目に頑張っていても期待通りにならなかったり、理不尽なことに直面したりすることがあるはずです。そのたびにソリューションを考え、いろんな壁を乗り越えていくうちに行き着く先が美しい心かなあと。」と締めくくりました。

このシンポジウムの模様は、YouTubeで公開されています。
普段あまりご紹介する機会のない、幸田のバックグラウンドやブランド立ち上げ時のエピソードなども、前野ご夫妻に根掘り葉掘り聞かれています。ぜひご覧ください。

また、SDM「日本の美と技の未来」は、ゲストをお招きして「美」に焦点を当てながら幸せな生き方とは何かを探求する形で、今後もシリーズで続いていくそう。ファッションや美術にとどまらず、食、建築、茶道、華道、書道、写真、絵画、伝統工芸、伝統芸能、宗教など、さまざまなジャンルの方が登場するとのこと。こちらもおすすめです。