「ビジネスとファッションが目指すべき共通のゴールは“一体化”」ベアーズ取締役副社長 高橋ゆき:FUMIKODA WOMANインタビュー vol.02

FUMIKODA WOMANインタビュー」では、さまざまな仕事の現場で活躍する女性たちへのインタビューを通し、仕事への取り組み方から、ファッションの選び方といったライフスタイルまでお伺いします。今回は、家事代行サービスを行う株式会社ベアーズ取締役副社長 高橋ゆきさんに、今の社会の中で働く女性にとって大切なことについて伺いました。聞き手はFUMIKODAクリエイティブディレクター幸田フミです。

働く女性の課題は、自分自身が変わること

幸田フミ(以下、幸田):ゆきさんは、ご自身も子育てしながら家事代行サービスの会社を経営されてきたので、働く女性のリアルなご意見を伺いながらサービスを提供されていらっしゃると思います。

高橋ゆき(以下、高橋):もちろんです。基本的に弊社は、お客様のライフスタイルやご要望を反映した商品作りや新サービス、キャンペーンを展開しています。特に志を持って働く女性のスタイルをきちんと把握しようと努力しています。それに、自分自身がペルソナでもあるんですね。

私、こう見えても上昇志向は全然なかったので、与えられたご縁を大切にしながら、その時々をきちんと生きていければいいと思っていたんです。結果的に会社を経営していますが、起業家志向があったわけではありませんでした。

こんな私自身がベアーズのペルソナでもあるんです。つまり、好きな人と恋愛をして結婚をして子どもを産んでも、仕事やキャリアを諦めず、自分の夢に向かって邁進する女性ですね。それの暮らしをどう具体的にサポートするかという事業をしています。実際にお客様の7割くらいが働く女性で、専業主婦と言われている人たちは2割ちょっとです。

ベアーズ取締役副社長 高橋ゆき FUMIKODA WOMANインタビュー FUMIKODA

幸田:女性が働く時に、色々な課題があると思うんです。家庭と子育てとお仕事のバランスをどう取るか。とすると上司との軋轢もあるかもしれません。ゆきさんの目から見て、働く女性の課題はどう見えますか?

高橋:それは、女性自身の問題だと私は思っているんです。人生は誰の人生でもない自分の人生です。人生が何でできているのかと言えば、それは自分が見たもの、聞いたこと、感じたこと、触れたものだけなんです。百聞は一見に如かずですし、その場に訪れてみることもすごく貴重。例えば観てない映画について想像するだけじゃなくて、実際に自分が映画館に行って観ることが自分の人生を豊かにしてくれるんです。

そう考えると、誰と何をするかがすごく重要じゃないですか。仕事も職場環境も全部そうで、自分がそれを好きになれないなら、好きになる努力をすればいいんです。それでもダメなら、きっとそこはあなたのいる場所ではないから、変わった方がいいと思います。でも、その環境を選んだのは自分なので、それなら、環境や周囲に対する不平不満を言うのではなく、自分が変われるように意識を変えてみてほしいと思います。そうすることで、周りも変わるはずです。私はそういうことが、女性が仕事をしながら豊かに生きていく上で重要なことだと思います。

幸田:私も経営をしているので、すごく勉強になります。多くのスタッフと仕事をしているからこその苦労もあると思いますが、いかがですか?

高橋:それも結局、私自身がブレていたからだと思います。だいたい迷ったり、自信がなかったり、ちゃんと素直になれていない時に、衝突や問題が起きましたから。下は20代から上は80代まで、本当に幅広い年齢の多くのスタッフと仕事をしてきましたが、今はわだかまりが、ほとんどなくなりました。それはたぶん私の中にこだわりがなくなったからだと思います。それまでは心のどこかで、損得や地位、見栄、立場、権力とか責任とか、そういったことにこだわっていたのだと思います。そうではなく、一人の人としてスタッフと接したいと思った時から変わったんです。

それは私自身もたくさんの上司やリーダーを見てきて、学んだからだと思います。もちろん反面教師の方もいましたが、本当に素敵だと思う方もたくさん見てきました。そういう人たちの共通項は、その時々の心の突き当りに寄り添ってくれることなんですね。そんな素敵なリーダーに恵まれてきたことが、今の私を作ってくれたのだと思います。

幸田:良いものは吸収して、悪いものからも学んで何かのせいにしないという、素直なお人柄が伝わってきます。悪い状況からも、きっと色々学ばれているんだなと。

高橋:私がなぜ素直になったかというと、安泰で安定した時期が一度もないからだと思います。数年ごとに何か起こるわけです。だから私の去年からの講演のテーマは、全部「試練と逆境と苦悩」にしているんですね。そのようになったのは、自分で言うのもなんですけど、きちんとした身なりで笑顔の私しか知らないまま話を聞いていると、今の若い女性たちは、誰かと比較して自分の不足を環境のせいにしてしまうと思うんです。そんな生き方をしたら悲しいし、魅力がなくなってしまいます。だから私が思い切り先輩風をふかせて伝えてあげたいと思います。

幸田:働く女性の課題は自分自身の問題だとおっしゃっていたのと、今のお話ってすごく通じるものがあると思います。

高橋:そうですね。女性の課題は、世の中の女性がもっと自分の笑顔の価値を、ちゃんと捉えて磨くことだと思います。女性の笑顔って、ものすごいパワーを持っていると思うんですね。ですから社会を変えたいと思うなら、自分が変わらないとダメだと思います。

「人が物事を選ぶ基準は“共感”なんです」

高橋:私は家事というのは人生の所作だと思っています。なぜかと言うと、どんなに疲れていてしんどくても、「ママお腹すいた」って子どもに言われたら、絶対にご飯を作るじゃないですか。それは愛から始まる家事なんです。他のどの家事も愛から始まって愛に通ずる。そういう哲学のもと、家事は人生の所作だと言いたいのです。ただし、ここが大事なのですが、家事は、やりたくない時はやらなくていいのです。だから愛がモリモリしている時だけすればいいと思います。自分が常にがんばる必要はない。できたら、6割くらいのエネルギーでがんばって、あとの4割はかわいらしく、美しく、楽しく、明るく、自分にとって心地よい状況に身を置くことが、やがては素晴らしい人生につながると思います。

ですから先ほどお話した、人生って何でできているかというのは、そこに尽きるんです。自分が見たもの、触れたもの、香り、聞いたものでできていると。それなら、美しいものを見て、優しい音色を聞いて、楽しい話をして、たくさんの笑顔を見られる環境にいられる人にみんながなっていけばいいなと思います。

だけど、思っているだけじゃなく、まずは行動してほしいです。行動するならば、先ほども言ったように、6割くらいでやればいいんです。笑えない日に無理に笑う必要はないし、寝ていたいなら寝ていればいいと思います。

FUMIKODA ベアーズ取締役副社長 高橋ゆき FUMIKODA WOMANインタビュー

幸田:自分が欲しているものに対して、やっぱり素直にならないとですよね。受け身でいて規則の中に自分の身を置いて苦しんでいるばっかりでは、なかなかそういう思考にならない気がします。

高橋:そうですね。あとはビジネスや事業戦略については、昔からコンセプトやビジョン、ターゲッティング、ペルソナという言葉がありますけれど、それらを総称すると、私の中ではひとつのキーワードしか浮かばないんです。それは、「一体化」なんですよね。そして一体化の正体って共感だと思っています。だから、どんな方が代表で、どんなコンセプトでデザインがされて、どんなこだわりでやっているかということまでもが、人が物事を選ぶ時の基準になるのだと思います。

ファッションは場面ごとに一体感を出すことが大事

幸田:ゆきさんはお忙しくても、いつもすごくファッショナブルでいるじゃないですか。スタイリストさんはいらっしゃるんですか?

高橋:いないですね。メイクも全部自分でやります。ヘアセットはお願いしてやってもらっています。ヘアセットは不器用なので、自分ではできなくて…。

幸田:お洋服を選ばれる時にご自身の中で何かルールはあるんですか?

高橋:すごくたくさんあります。ほぼ毎日自分のコーディネートの写真を撮っておいて、誰とどこで何を着て会ったかを管理をしています。それからお取引先の会社に行く時には、その会社のコーポーレートカラーに合わせて着替えてから行くので、14回くらい着替えることもあります。やはり、さっきお話した一体感を私はすごく気にするタイプですよね。例えば皆がTシャツで来るような打ち合わせに、自分だけジャケットスタイルでは絶対に行きたくないんです。なので今日も幸田フミバージョンで来たんですよ。

幸田:嬉しい!そうかなと思いました。(笑)

FUMIKODA ベアーズ取締役副社長 高橋ゆき FUMIKODA WOMANインタビュー

高橋:スタイリストをつけることも何度かチャレンジしましたが、まず時間が合わないんですね。洋服を買う時も頻繁には買いに行かずにまとめて買っちゃいます。お店も決まっていません。通りすがりで気に入ったお店があったらそこで買ったり出張先で買ったりと、かなり行き当たりばったりです。

幸田:そうなんですね。FUMIKODAのバッグについても、もし気に入っていらっしゃったら、気に入っていらっしゃるポイントを教えていただけますか?

高橋:まず品がありますね。その品は、同じフレグランスをつけても、人によって漂う香りが違ってくるのと同じで、同じバッグを持っていても、たぶんその人の持つ品格によって見え方が変わるバッグだと思います。なので、同じ高橋ゆきが愛用させて頂いていても、たぶん1週間前の私と、3日前の私と、今日の私は違うオーラを発しているのではないかと思います。

FUMIKODA ベアーズ取締役副社長 高橋ゆき FUMIKODA WOMANインタビュー

幸田:私自身が働く女性が想定できるすべてのシーンで、使えるバッグが欲しかったんですね。オフィスはもちろん取引先に行っても、あからさまなブランドに見えるとマイナスイメージになる場合もあるじゃないですか。そうじゃなくて、パソコンが入っていても、そこまで堅く見えない、そのまま会食に連れて行っても浮かないものが欲しいと思って作ったんです。

高橋:まさに一体化できるバッグですね!

幸田:ありがとうございます!

 

高橋ゆきさんプロフィール

株式会社ベアーズ 取締役副社長。株式会社ベアーズ専務取締役を経て、2016年、取締役副社長に就任(現任)。主にブランディング、マーケティング、新サービス開発、人財育成を担当するほか、家事代行サービス業界の成長と発展を目指し、2013年、一般社団法人全国家事代行サービス協会設立以来、副会長を務める(現任)。経営者としても、各種ビジネスコンテストの審査員、コメンテーター等を務める。
2003年、家事研究家としての活動開始(現任)。
2015年、世界初の家事大学設立、学長として新たな挑戦を開始(現任)。2016年のTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でも家事監修を担当するなど、家事研究家、日本の暮らし方研究家としてテレビ・雑誌などで幅広く活躍中。1男・1女の母。
株式会社ベアーズ:https://www.happy-bears.com/