「強くてしなやかな女性が次の時代の日本を支える」弁護士 福崎聖子:FUMIKODA WOMANインタビュー vol.01

中堅以上の女性のビジネスプロフェッショナルが、その先のキャリアを考える際に、情報やロールモデルの少なさが課題になります。このシリーズでは、さまざまな仕事の現場で活躍する女性たちへのインタビューを通し、仕事への取り組み方から、ファッションの選び方といったライフスタイルまでお伺いします。今回は福崎法律事務所代表の、福崎聖子さんからお話を伺いました。

フットワークの良い女性だからこそできること

——以前FUMIKODA SALONでご講演いただいたように、福崎さんは個人を対象にしたお仕事もされていますが、企業関連のお仕事もされていますよね。

福崎:会社の顧問と、後は会社の社外取締役をやらせていただいています。最近は、特に女性の社外取締役を求めている企業が増えています。というのも、女性で企業の取締役クラスの仕事ができる人材が、日本の会社の中であまり育てられてこなかったという実情があります。だけど政府からの要請もあって女性役員の比率を高めないといけない。そういう背景もあって「社外の専門家かつ女性」ということで、私も取締役の仕事をさせていただいてます。

——福崎さんのご専門は法律ですけれども、そういうお仕事を受けるに当たって、経営のことも勉強されるのでしょうか?

福崎:例えば帳簿の見方や、相談を受けるにあたって最低限分かっていないといけない業務内容のことは勉強します。ただ、社外取締役というのは、会社外部からの発言を求められます。内部の人だとかえって言いにくいこともあるでしょう。また、外の目を導入することによって、倫理的なこともふくめたコンプライアンスについての方針を考えることもできます。

ですから、勉強はしないといけないけれど、あまりプロになりすぎてもいけない。会社が求めているのは、私の持っている専門家としての視点や、女性としての目線です。会社内部の方々とは違う視点を入れることによって、社会的な評価もふくめた生産効率を高めることを期待されています。特に今は、ダイバーシティをいかに実現させるかが課題になっているということで、女性のそういう立場の人が求められています。

——内閣府が女性管理職を30%に引き上げると言っていますが、目標達成への道のりはまだ遠そうですね。

福崎: 2020年までに企業の女性管理職を30%までに引き上げるという目標を政府が立てていますが、現状は厳しいものがあります。企業をはじめ、どの組織も今まで実績を作ってこなかったので、人材が育っていないし、現場もまたその意識を持っていないので、いざ女性の管理職が来ても現場が受け入れず、時には、いじめのような問題にもなるようです。今後は、単なる数合わせではなく、まずは、トップによる意識変革の方針を明確にし、これをいかに現場に浸透させ、実効性のあるものにしていくのかが課題になっています。

実際に、女性の社会的地位を向上させることは、人権的な意味だけではなく、経済的な合理性があることが具体的データにより世界的にも明らかになっています。でも残念ながら日本は色んな意味で最下位クラスです。201711月に発表された男女平等指数も、日本は144か国中、なんと114で、この順位も前年より後退しています。

——せっかくキャリアを積んだ女性が結婚や出産の後に職場復帰しても、2〜3年以内に辞めてしまう方がたくさんいます。また、職場に居続けてもマミートラックに乗らざるを得ず、男性と同じようにキャリアを積むのが現実的に難しいケースが多いという指摘もあります。

福崎:それは健全な社会ではないですし、日本の生産性の低さの原因にもなっていますよね。これは組織の構造上の問題でもあり、また日本社会全体の問題です。これまで管理職の女性が少なかったわけですから、キャリアを積んだ女性の先輩自体も少ない。その結果、ビジネスマナーやその場その場にふさわしい判断、振る舞いもふくめた仕事の仕方を、きちんと下の世代の女性に伝えるということも十分にはできていないのは、当然です。

また、そういう社会が是とされてきたのですから、当の女性自身にも、まだまだ意識が追いついていない人が多いのも仕方ない。そういう意味で、女性の中でも、意識の差が生まれていますし、全体として女性が能力を発揮できる社会になっていないのが現状だと思います。

これからは、そういう部分でもビジネスプロフェッショナルの女性が責任を果たすべき世の中になっていくように思います。まさにFUMIKODAのバッグを持つ世代ですね。一昔前のフェミニズムは比較的強者の理論を押し通す人たちが多かったので、世の中からの広い支持を得られなかった側面があります。でもこれからは、自分のことだけではなく、どうやって下の世代を育てていくかが、とても大事になっていくと思います。さまざまな立場の女性が十分に能力を発揮するためには、個々人や会社組織はもちろん、社会全体で環境を整備して、経済的基盤を整えていく努力をすることが必要です。

実際に、女性が職場に復帰できない、キャリア上不利だという問題は、色々な問題につながっています。例えば、女性と男性の給与格差が事実上大きいので、離婚した途端に女の人が暮らしていけなくなるケースも多いです。そうすると、一般的に、離婚した親の子どもは多くの場合母親について行くので、必然的に子どもまで貧しい環境で育つことになってしまう。しかも子どもだけの力でそこから這い上がることは難しいため、世代間で貧困の連鎖と言われる現象が起きてしまうのです。

子どもたちの未来のためにも、一部の管理職の女性のみならず、それを望んでいるすべての女性が、十分な賃金を得て社会で活躍でき、子どもたちを産み育てることが可能な社会にしていくことが必要です。

他方で男性と比べて旧来のしがらみから自由な分、ひとたび問題意識を持つと行動するのが早い、フットワークが軽いのが女性の強みでもあると思います。そのフットワークの軽さを生かして、グローバルな活躍の場を求めて外国に行くのも、もちろん素晴らしいことです。他方、日本の社会の中でどうやって女性の地位を上げて行くかということに取り組んでいくのも、今後私たち女性に託された大切なミッションだと思います。

つまり、繰り返しになりますが、今の日本の中で、さまざまな格差が生まれているのであれば、それをどうやって分散させて行くかを考えていくことも、まさに私たち女性が果たしていくべき社会的責任だと思うのです。

未来を担う子どもたちを生み育てつつ、さまざまな事情で貧困層に陥らざるを得なかった女性たちもたくさんいますから。「私には子どもがいないから関係ない」ということではなく、日本社会全体において未来を担う子どもたちを、どうやって支え育てていくのか、また、そのためにも母親となる女性の賃金をどうやって上げていくかということも考えないといけないと思うんです。そのために、私も少しでも何かができればいいなと思って仕事をしています。

仕事で服を選ぶ時は、相手目線を大切にする

FUMIKODA WOMAN

——指導的立場にある女性を増やしていくためには、多くの課題がありますね。先ほどおっしゃっていたように、例えば服装ひとつを取っても、女性の管理職や役員にふさわしいプレゼンスをどのように作って行くか、現場で判断に迷われている方が多いようです。

福崎:服装について言うと、TPOに応じて服装を変えるのは基本的なエチケットですよね。例えばパーティーの時に、会社にいるのと同じような服装で行くのは失礼にあたると思います。同じダーク系の服装でも、そこにきれいなアクセサリーをつければ華やかになりますから、そういう使い分けは必要だと思います。

そもそも黒って意外と使い方が難しい色なんです。光沢のある布ならいいけれど、光を吸収してしまう質感の布だと、華やかさがまるでなくなりますから。ある時、黒い服にパールを合わせたところ「お通夜?」って、男の人に言われたこともあります。悪気や冗談があるでもなく、本当にそう見えてしまうんですね。

——とは言っても、昼間にオフィスで仕事をして、夜にそのままパーティーやディナーに行くようなスケジュールという場合も多いと思います。そんな時、ジャケットだけ変えれば場にふさわしい格好になるコーディネートだと便利ですよね。

福崎:そうですね。ジャケットもそうだし、例えばブラウスが多少派手でも上に一枚ジャケットを羽織ればオフィスでも浮かないデザインのものもあります。そうでなければ、着替えを持って行くか一度帰宅しないといけないので、それに合わせてスケジュールを組む形になりますね。

——何かしらのキーアイテムがあって、それを軸にTPOに合ったスタイルに替えていけるようなアイテムや、それを選ぶコツのようなものはあるのでしょうか?

福崎:私の場合、仕事が弁護士なので、色としてはブラックやネイビー、ホワイトが中心になります。グレーやベージュという選択肢もありますが、自分の肌の色と合わないので、私はあまり使いません。人からもハッキリした色が似合うと言われますから。自分でいいと思っているもの、欲しいものと、人から「似合う」と言われるものは違うでしょう?私の場合は、そうであれば、「似合う」と言われる方に自分を合わせます。本当は、信頼できるパーソナルスタイリストが1人いたら楽だと思います。

あと日本の社会では、あまりスタイリッシュ過ぎても、気取っていると思われがちです。男の人は特にそうですね。だから、TPOによっては、あまり垢抜けすぎない方がいい場合もありますので難しいと思います。

例えば、離婚案件で精神的に辛い状態のクライアントに会う時には、派手なアクセサリーを着けないようにします。クライアントが持つ指輪にまつわるエピソードが、その人たちの辛い記憶を想起させる場合は、結婚指輪を外して行くこともありました。

特にクライアントとの信頼関係を築くまでは、私なりに少し控えめな格好でいます。最初から「元気にやりましょう!」と言っても、クライアントの気持ちが折れてしまいますから。本当に傷ついて弱っていて「がんばれない」と言う人は多いので、そういう時は「がんばらなくていい、私ががんばるから」とお伝えします。徐々に対応も服装も変えて行きますが、それには時間がかかります。12年と一緒にやっていくなかで信頼関係を構築して、とにかく最後には元気になっていただければいいと思います。

TPOと言うと堅く考えられがちですが、特に仕事で服装を選ぶ時は、可能な限りで相手の立場で考えることを基本にするといいと思っています。人と仕事をしていく以上は、ある程度相手の求める「枠」に自分を合わせることは必要だと思います。

もちろん時には、ちょっと外してすっ飛んだ格好をしていると、「話すと元気が出る」と言ってもらえることもあるので、必ずしも「これが正解」と考えることはできないとも思います。その判断が一番難しいかもしれませんね。言葉でも良かれと思って言ったことが裏目に出ることもあるでしょう? そういうことも経験して学んで行くのだと思います。ファッションも同じですね。

——TPOや場の文脈の中に自分を置いた時、違和感のないスタイルを選ぶことが大切ということですね。

福崎:そうだと思います。期待される役割がその場その場によってありますからね。例えばクライアント企業の取締役会があって、周りは70代の男性たちがいる時には花柄のジャケットで行くと違和感があるので、控えめなスタイルにしてメイクも薄くします。でも宴会だったら、もう少し明るい方がいいので、アクセサリーも華やかにします。

そういうことが自然とできる年齢になったということかもしれません。若い時は相手に自分を合わせるが媚びているみたいで嫌だと思うものですから。とは言っても、それまでは色々やってみることが大事だと思います。私も80年代にテクノカットが流行っていた頃に刈り上げだった時もあったんですよ。でも、それが全然似合わなくて(笑)。それを見た学校の男の子は笑うし、先生には「お前どうしたんだ?」と心配されたり。若い時は色々やって失敗もして、今は相手も自分も、一番楽な方が仕事をしやすいということが、だんだん分かってきました。

さまざまなシーンで使えて、失敗がない「理想のバッグ」

FUMIKODA WOMAN

今の私にとってファッションはツールです。人様のために本当にやるべきことをするために、何が必要か。それを考えた時に、必要なのは私自身のファッションでの自己主張ではないと気がついたんです。そんななかでFUMIKODAのバッグって失敗がないと感じました。だからたくさん集めて使い分けていますよ。海外旅行にも持って行きました。

——ありがとうございます。ちなみに気に入っていただいているポイントはどこですか?

福崎:メイド・イン・ジャパンというのは大きな魅力だし、着想がすごく好きです。アニマルフリーというのも腑に落ちます。時代はやっぱりそちらに動いていますからね。このまま限りある資源をどのようにサスティナブルに活用し、どうやって世界を保って行くかと世の中が動いているなかで、大きな意味を持つことだと思います。

なおかつ機能的。容量がとても大きくて、書類もパソコンも入るのに、軽いし雨に濡れてもいい。本当に助かります。雨の日タクシーで移動して降りた時に濡れることもたくさんありますから。日々バタバタと走り回る中でお天気を気にせず持てるカバンはすごくありがたいです。それに何より、人様からも素敵だと褒められます。プライベートは勿論、仕事の場でも持てて、しかも赤いフラップのARIANNAは一見派手にも見えますが、裁判所に持って行っても浮かないんですよ。同じ赤でも品がいいですから。

フラップを着け替えれば雰囲気がガラリと変わるのもいいですね。そこでTPOに合わせることも個性を出すことも両方できます。女性はこういう物ひとつで自分の気分までも変えられるというのが、すごく大きいと思います。

さらに言えば、バッグの中身を入れ替える手間も省けますよね。全部出して入れ替えて、そうしているうちに雨が降ってきたからと、また全部雨用のバッグに入れ直したり大事なものを入れ忘れてしまったり。でも、フラップの方を付け替えてしまえば、その心配もないので、本当にありがたいです。正に、私にとっては、いいことづくめの「理想のバッグ」です。

福崎聖子さんプロフィール
東京弁護士会所属弁護士。元日弁連理事、初代東京弁護士会新進活動委員会委員長、元法律相談センター副委員長等役職多数。多数の民事刑事少年事件ほか、一部上場会社役員等、企業法務も取り扱う。熊本市生まれ。上智大学卒業、途中ワシントン大学に一年間留学、東京大学大学院卒業。