AI時代の経営とリーダーシップを考える:FUMIKODA SALON レポート
AIは今や、業界や役職を問わず経営判断そのものに関わる課題になっています。にもかかわらず、意思決定を担う女性リーダーがAI経営について本音で議論できる場は、まだ多くありません。
FUMIKODAは「働く女性のためのビジネスブランド」として、2026年7月9日、AI活用や企業変革を数多く支援してきた馬渕邦美氏(Meta日本法人 元執行役員、現XinobiAI株式会社 Co-Founder)を招き、「FUMIKODA SALON」を開催しました。本レポートでは、当日語られた要点をビジネスエグゼクティブ向けに整理してお届けします。

AIは「仕事を奪うもの」ではなく「可能性を広げるもの」
「AIを効率化ツールとしてだけ捉えると、その価値を見誤る」
これが馬渕氏の第一のメッセージです。
今は、インターネット登場時に匹敵する規模の時代の転換点にあります。この変化に合わせて、会社の仕組みそのものを見直すことが求められています。AIについて「業務を効率化するための道具」というイメージを持つ方も多いですが、AIの本当の価値はそこにはありません。
「AIは、一人ひとりが持っている発想力や判断力、学ぶ力を、後押しし、広げてくれるものです」
AIの進化によって、今まさに産業革命に匹敵する変化が起きています。Claudeの登場によって、AIは『レシピを考える』段階から『実際に料理をする』段階へと進化しました。
経営者がAIを「作業の代替」ではなく「人の能力の増幅装置」として位置づけ直すこと。それが、組織的なAI活用の出発点になります。

「使ってみる」から「働き方そのものを見直す」へ
AI活用を組織に定着させるには、暗黙知の言語化と、業務プロセス自体の再設計が欠かせません。個人の頭の中にしかない「暗黙知」は、文章やデータとして残さない限り、AIは活用できません。リーダーには、データ蓄積を促す明確な指示が求められます。
象徴的な例として挙がったのが「会議」です。「毎週やっている定例会議」ほど、実は改善の余地が大きいといいます。目的をはっきりさせた上で、調査すべき事項をその場でAIに調べさせ、まとめさせながら進行する。この前提で会議を設計し直すだけで、これまで論点整理と調査報告を重ねて1か月かかっていたプロジェクトが、参加者全員がその場でAIを活用することで2〜3時間で形になることもあるそうです。

AIを活かすためにリーダーに必要なこと
リーダーの役割は、「この仕事はAIに」「この判断は人が」と、線引きをしていくことにあります。
「細かな作業はできるだけAIに任せ、人は判断すること、誰かと向き合って対話することに時間を使う。リーダーがこの役割分担を明確にできて初めて、組織全体でAI活用を進めることができる」
と馬渕氏は語りました。
AI活用の成否を左右するのは、ツール選定以上に、リーダー自身の役割設計だといえるでしょう。

人にしかできないこと
AIが浸透しても、人の仕事がすべて置き換わるわけではありません。
サロン終盤では、「人的資本をどう捉えるか」「人の仕事が不要になるのでは」といった質問が上がりましたが、馬渕氏は次のように明言しました。
「人の仕事がすべてAIに置き換わるわけではありません」
AIによる自動化を進め、組織設計も変えた企業は、生産性を飛躍的に向上させています。大切なのは、AIを脅威として恐れるのではなく「生産性を高めるパートナー」として捉え直し、自らもリスキリング(学び直し)を重ねていくことです。

加えて、日本はこれから本格的な人口減少社会を迎えます。人の手が足りなくなっていくからこそ、誰かの気持ちに寄り添い、信頼関係を築く「ヒューマンタッチ」の価値は、これからますます高まります。組織の全体設計を見直す今だからこそ、人にしかできない領域の重要性が一層際立つ。
そんな馬渕氏の言葉に、会場は少しほっとした空気に包まれました。
貴重なお話をお聞かせくださった馬渕邦美氏に、心より御礼申し上げます。
FUMIKODAはこれからも、働く皆さまのビジネスに役立つ知見を発信してまいります。

馬渕邦美氏のプロフィール
XinobiAI株式会社 Co-Founder / Co-CEO。AIとマーケティングを軸に、企業の成長戦略、ブランド体験、新規事業開発を支援。米国エージェンシーでキャリアを開始後、デジタルエージェンシーを起業・売却。OgilvyOne Japan CEO、Meta日本法人、Deloitte、PwCなどを経て、現在は生成AI・エージェントAIの社会実装に取り組む。
マーケティング、ブランド戦略、デジタル変革、AI活用の第一線を経験し、経営者やマーケティング責任者に向けて、AI時代における顧客理解、創造性、組織変革、事業成長のあり方を発信。AIを単なる業務効率化ではなく、人と企業の可能性をひらく新しい経営インフラとして捉え、次世代のマーケティングと人間中心のAI活用を探求している。
主な著書
AI駆動マーケティング(インプレス)
AI時代のベンチャーガバナンス(日経BP)
ジェネレーティブAIの衝撃(日経BP)















































