NY流「ラディカル・セルフケア」のすすめ 〜アフターコロナのライフスタイル

11月に入り、いよいよ2022年も残りわずかになりました。
今回はFUMIKODA JOURNALでも人気のニューヨーク在住の国際イメージコンサルタントで、Real Cosmopolitan Inc. CEOの日野ニーナさんに、現地のビジネスプロフェッショナルの間で支持されているセルフケアの方法について教えていただきました。

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今年も残り2ヶ月を切りました。2022年をよきものにして、2023年を心地よい状態の自分で迎えたいものですね。
そんな時こそ是非取り入れたい方法があります。それが「ラディカル・セルフケア」。コロナ禍の米国で注目された方法であり、新たなライフスタイルの一つです。

セルフケア、ウェルビーイング、セルフラブという言葉は日本でもよく耳にすることでしょう。しかし、「ラディカル・セルフケア」はきっと耳慣れないはず。

ラディカル・セルフケアとは?

まず、ラディカル・セルフケアの定義を説明しましょう。
ラディカル・セルフケアとは、他人をケアする前に、まず自分自身のケアをする責任があると主張する「自分中心」とした考え方。自分のコップを完全に満たすことを最優先にし、そこから溢れたものを他の人に与えることが大前提。まず自分自身の面倒をみる、それが自分の人生の次の章へと前進させる力となる。それをラディカル(徹底的・抜本的・急進的・革命的)に行う、それがラディカル・セルフケアです。



ニューヨークの友人でジャーナリストのシェリー・めぐみさんもご自身の記事の中で、

“セルフケアは自分の体や心を自分自身でケアすることで、エクササイズからダイエット、バスタイムでのリラクセーションなど、幅広い内容を含んでいます。
コンセプトとしてはそれほど新しいものではありませんが、コロナ禍でこれまでと生活環境が大きく変化し、強いストレスを感じたり、うつになる人も増えている中で、こうした環境から自分をもっと積極的に守っていこう、一歩進んだセルフケアをやっていこうというのがラジカル・セルフケアです。
方法はその人のコンディションやニーズによって異なるものの、よく言われるのはまず「自分中心に考える」こと。特に女性は子供や夫の健康を優先して考えがち。しかし、誰かの面倒を見ようと思ったらまず自分のケアをしっかりしなければならない。それを優先させるのに罪悪感を感じる必要はない、というのがラジカル・セルフケアの前提条件です。”

と非常にわかりやすく書かれています。

自分を中心に考えること、これは「自分勝手」と思われたり、自分自身でも罪悪感を感じてつい相手を優先してしまいがちですが、決してそうではありません。
自分自身でさえケアできない人が、他者をケアしたり守ったりできるわけがない。人に不快感を与えない判断と行動は、成熟した大人として重要、それを踏まえた上で何より大事なのは、自らが良い状態であること。そのためにはまず最初に自分に対して時間と労力を使い、自分が「快」の状態でいられるようにすること。
それができてこそ、自分以外への他者に十分な手を差し伸べられるわけです。

考え方として一番わかりやすい例は、機内の緊急時の案内です。子供と共に搭乗している場合、緊急時には親が先に自分の酸素マスクを確保し、それから子供のためのマスクをつけるようアナウンスされます。助ける本人が準備不足であれば、助けたい人を助けられないだけでなく、相互が危険にさらされ命を落とすことになりかねません。ラディカル・セルフケアの根本的考え方はこれと同じです。

自分に集中する時間、そして他者は関係なく自分が快適だと思う自分の状態や事柄を認識することは、無理なく満足度の高い自分自身でいられることにつながり、そこには力まずとも納得のいくパフォーマンスを発揮できるという良き結果もついてきます。またそこには、周囲の目を気にして、本当は好きではないけれど何かを行ったり、本当は自分自身は好ましく思っていない対象者をも含めた多数からの好感度を高めなくてはならないという妙な呪縛がありません。
ラディカル・セルフケアとは、「承認欲求」と真逆のところに存在するアイディアとも言えるでしょう。

すぐに実践できるラディカル・セルフケア6選

このラディカル・セルフケアが注目されたのは、コロナ禍で人と会うこともできず、自分もどうなるかわからない不安な時間の中で、自分と向き合い、自分自身のケアに意識を集中することが不可欠となったからです。
それを通して、それまでに溜まった不要なことを削ぎ落とし身軽になりながら「不確かな未来を生きる力」を自分に蓄えることにつながったのではないかとも思います。

そして、そのポジティブな行為に積極的に集中することで、不安な心境を抱く隙を作らずにすみ、いかなる状況においても、そして誰かに褒められることがなくても、自分にとって原動力になることが何か?他人との比較ではなく、自分自身が「快」となれる事柄とそのスイッチが何かをしっかり認識することができた人は多かったのではないかとも思うのです。

日本社会で生きるビジネス・プロフェッショナルの皆さんにも、ラディカル・セルフケアという方法と考え方を知っていただき、ご自分にあった内容で実践することを是非お勧めしたいと思い、ここで、ニューヨークの私の周囲で見聞きしたラディカル・セルフケア例と、私自身がコロナ禍から現在に至るまで継続し、見事に成果を手にした例など、合わせて6つ紹介しましょう。

1. 朝の時間、香りと味をじっくり味わい尽くす

常に何種類か用意してある大好きな紅茶の中から、一つを選び、丁寧に入れ、ゆっくり香りを楽しみ、お茶の味を堪能する。これを意識的かつじっくりと行う。

2. 家で過ごす環境を上質にする

家での自分の時間を大事に過ごすため、部屋の中の香りやキャンドル、今迄なら手を出さなかった何ランクも上質な最高の肌触りのブランケットを用意。

3. 誰にも見られなくてもメイクをする

人と会うわけではない、ウェブ会議があるわけでもない、それでもメイクをすることが自分を心地よくモチベートするので、積極的に行う。

4. 出かけないけれど、好きな服に着替える

外に出かけないし、誰に会うわけでもない。だからこそ、本当の意味で大好きで心地よく感じる上に、能率も上がる服を着て仕事をする。普段着を全て一軍の服にし、着ることを存分に楽しむ。

5. 自分の体の状態と向き合う

自分の身体のコンディションと正面から向き合い、人に会わない期間だからこそ誘惑が少なく、誰にも乱されず自分のペースを保てるメリットを活用し、1日の中にワークアウトをする時間を少しでも作り、継続する。

6. 本当に自分が食べたい必要なものだけを、厳選して食べる

外食が減り、付き合いで飲み・食べることが減ったのをきっかけに、本当に自分が納得して食べたいものを考え、厳選し、食べることを真剣に行う。

如何でしょう。これら6つの例に共通しているのは、

  • 自分がやりたいから集中してやる
  • 人の顔色は関係ない(迷惑がかかることは別)
  • 自分に集中、なので不要に誰かに干渉することもされることもない。

今までの日常にあった、自分は二の次で、周囲に合わせた判断をしていた様々なことを一気に省いて省いて、省きすぎるくらいまで徹底し、自分にだけ集中する時間を一日にわずかでも作る。そこで初めて自分にとっての本当の快適とその具体的な事や物が分かります。
誰かに褒められたり見せびらかしたりする為に行う事でも物でもなく、ただただ自分の為に自らに集中。これがコツ。


私は上に挙げた6つの殆どを行ってきましたが、特に”これぞ私にとっての「ラディカル・セルフケア」”であり、今日まで継続し大きな成果が上がっているのが、5.「自分の体の状態と向き合う」、それに関連して6.「本当に自分が食べたい必要なものだけを、厳選して食べる」です。

毎日ほぼ決まった時間に自宅ワークアウト。その他、椅子から立ち上がったら自重筋トレを数回などという感じで実施。日常の行動と紐付けるのが習慣化の秘訣。例え1日にプッシュアップ10回だけでも、1週間で70回。塵も積もれば山となる、ストイックにならず、自分の気持ちに負担をかけない方式。外に出られずにモヤモヤしていた時期でも、筋トレをしている間は正に自分(の体)だけに集中でき、他のことを考えずにすみ、頭の中がクリアになる心地よさを味わえていた為、継続できたと言えます。

大事なのは「自分にとって本当に必要な物事に集中」すること

何故私が自分の体に対するラディカル・セルフケアに没頭したのか? それは、コロナの危険性が報道され始めた2月、(後々胃腸炎と分かりましたが)原因不明の腹痛で1週間のたうちまわる経験をしたことに起因します。その後、NYは外出禁止令が出て、こんな時期に具合悪くなったらコロナじゃなくても大変!と、時間はたっぷりあったので体を作る為にワークアウトを開始し、外食も一切なくなったのをきっかけに食事を見直してみたのでした。

その結果、自分の体が見える形で変わっていく様を目の当たりにできたことは、先の見えない大きな不安を抱いていたあの頃、日々を過ごす非常に大きな安心とモチベーションになっていました。実際3年前の今頃の自分の体と比較すると、腹筋が割れ、体重は確実に15kg減、さらに一度もリバウンドなし。メンタルと思考が軽快になり、目的であったスタミナのある動ける体を手に入れることができています。体重を落とすことは当初全く目的にはしていなかったので、痩せたのは完全に副産物と言えるでしょう。

また、この自重筋トレのラディカル・セルフケアという方法を自分のライフスタイルの一部として定着させた今、一旦頭をクリアにしたい時や自分に集中したい時は、大抵の場所でたった数分でもそれを実行でき、それによって、確実に切り替えが早く自分の判断が明快になり、パフォーマンスが上がっていることを実感する機会が多くなったことも大きな利点として加えておきましょう。

この様にラディカル・セルフケアとは、自分を最優先で集中しケアをする考え方。非常に米国的かもしれません。しかし、忙しく活躍していらっしゃり、人の為に労力を使うことを厭わない素晴らしき日本のビジネス・プロフェッショナルの皆さんにこそ、是非とも取り入れていただきたい方法です。

日本では多くの方々が「自分へのご褒美」という言葉をつかっているのを目に、耳にします。褒美などという妙なエクスキューズは不要です。他者の目は一切関係ない、短くてもいい、自分だけに集中した時間の中で、「自分にとって本当に必要な物事」「自分にとっての本当の快適」を考え、「では、それを実施することを自分は美しいと思うか?」とその判断について自分に正直になり考えてみてください。これから先の世界で、あなたが最も快適で、本来の自然なあなたらしさのまま世の中を渡っていけるリアル・プレゼンス(真実のあり方)のヒントがそこに見えてくるはずです。 

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日野 江都子(Niena Etsuko Hino)

東京生まれ、NY在住。Real Cosmopolitan Inc. CEO、戦略非言語研究家、国際イメージコンサルタント、ブランディングプロデューサー。
米国NYのParsons School of Design, Fashion & Image Consultingコース修了。1994年フリーランス創業、2004年NYにReal Cosmopolitan Inc.設立しCEO就任。認知心理学×脳科学×五感・非言語コミュニケーション×ファッション×デザイン思考を基とした独自の分析・コンサル理論を確立・展開。
日欧米亜合わせ数千人の国際的な上場企業・ブランド・トップリーダー自身(経営層、政治家、財界人、セレブリティー含)などハイプロファイリング・クライアントを持ち、企業ブランドとトップのイメージを基に、世界に通用する存在感へと最適化する為の包括的ブランディングと施策提案、総合コンサルティングを手がけ高い評価を得ている。
著書『仕事力をアップする身だしなみ40のルール』(日経新聞出版社)、『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム)他、執筆多数。『銀座 英國屋 女性エグゼクティブ スーツ』監修、『某大手電気系企業 ヒューマノイドロボット』開発。講演多数。