こんにちは、幸田フミです。
突然ですが、漆塗りの器で白米を食べたことはありますか?
不思議なのですが、炊きたてのご飯を漆のお茶碗によそって食べると最後まであたたかくいただけます。
私たちの祖先が1万年も前から愛用してきた「漆塗」を、バッグのアクセサリーに使ってみたくて、能登半島の輪島を訪ねました。
☆☆☆☆☆
Q. バッグに伝統工芸を使用しているのはなぜですか?
FUMIKODAのバッグに高岡銅器などの伝統工芸を取り入れた理由のひとつは、美しいから。そしてもうひとつの理由は、人工皮革を使って精巧に作られたプロダクトに「あそび(曖昧さ・味わい)」を取り入れたかったからです。
FUMIKODAが使用している人工皮革は天然皮革のようにあそびがない分、熟練した職人でないと縫製するのが難しく、精確で美しいステッチに仕上げることができません。そのため、FUMIKODAのバッグは国内の数少ない縫製職人の手によって、大量生産では決して再現できない精巧なバッグに仕上がっています。ですがその反面、素材が人工物であることで、仕上げが精確になればなるほど、どこか味気なさを感じます。
一方、伝統工芸品はひとつとして同じものはありません。そんな曖昧さを感じさせる伝統工芸をプロダクトの一部に取り入れることによって、ひとつひとつのバッグに個性を宿しているのです。
Q. 漆塗をどうやってバッグのデザインに取り入れるのですか?
つい先週、輪島塗の塗師(ぬし)赤木明登さんの能登の工房にお邪魔してきました。
赤木さんはもともと「家庭画報」で雑誌編集のお仕事をされていたのですが、三十年前に一念発起してご家族とともに輪島に移り住み、漆塗の世界に飛び込まれました。今では年がら年中展覧会に引っ張りだこのスーパースターでいらっしゃいます。そんな赤木さんにバッグのアクセサリーパーツづくりをご相談しました。
漆塗は丹精込めて塗っては乾かす作業を繰り返し、月日をかけて美しい作品に仕上がります。FUMIKODAの漆塗バージョンが仕上がるまでまる1年は費やすことになるでしょう。
今はまだスケッチブック上の線でしかありませんが、ビジネスウーマンが日常でまとえるアクセサリーであるとともに、日本の美しい伝統工芸を漆器とは異なる切口で世界各国の方に知っていただくための作品に仕上げたいと思っています。
☆☆☆☆☆
写真の漆器は赤木さんにご紹介いただいた輪島の蒔絵作家、山口浩美さんの作品です。
蒔絵といえば、お正月に食卓に並ぶ漆器に使われているような古典的な絵柄を思い浮かべていたのですが、赤いドレスに黒のレースをあしらったような現代的な山口さんの作風にデザイン領域の可能性を感じました。
古来から日本で受け継がれてきた伝統工芸はだんだん日用品として使われなくなり、後継者不足によって途絶えようとしています。
働く女性がなんらかの形で伝統工芸を身にまとい、もう一度人々の目にふれるものになるといいなあ、と考えています。
FUMIKODA クリエイティブディレクター
幸田フミ