旅行や出張で海外に行く時に気になることのひとつがテーブルマナー。ナイフとフォークの使い方は習得したつもりでも、その使い方の細かいルールはアメリカとヨーロッパで違ったり、ヨーロッパの中でもフォークの向きに微妙な意味があったりなかったりします。さらにインドやアフリカなどでは、手づかみで食事をするためのルールもあります。そんな世界各国の意外なテーブルマナーを、シルバーウェアブランドのLangfordsがまとめているので、抜粋してご紹介します。
アメリカ大陸
アメリカ合衆国
ホストが座るまで、座ってはいけません。また、食べ物に息を吹きかけるのもマナー違反です。
移民国家で大らかな印象のあるアメリカですが、「ホストが座るまで座らない」「ホストに指示された席に座る」など、意外とはっきりしたルールがあるようです。
メキシコ
メキシコではホストが「Buen Provecho(召し上がれ)」と言うのを待ってから食べ始めるのがマナーです。食事の席に時間通りに到着するのはマナー違反。30分ほど遅れて行きましょう。
時間に大らかなメキシコ人、待ち合わせの時は待たされる前提で、時間つぶしの手段を用意していったほうが良いようです。
ヨーロッパ
イギリス
必ずフォークは左手に、ナイフは右手に持ちましょう。食べ物が口いっぱいに入っている時に会話をしてはいけません。
「肉料理は最初に切り分けて、フォークを右手に持ち替えて食べてもいい」という説を時々見かけますが、それはアメリカのマナーです。イギリスで同じことをすると「子どもっぽい」と思われるので、気をつけましょう。
相手の口に食べ物が入っている時に話しかけない方がいいのは、多くの国で共通しています。では、まだ食べている時に話しかけられたら、どうすればいいのでしょうか?
The Etiquette School of New Yorkのパトリシアさんはハフィントンポストの記事で、「そういう時は『ちょっと待って』というように指を上げて合図をすればいいんですよ」とコメントしています。
デンマーク
おかわりが欲しい時は、フォークの歯を下に向けて置きましょう。お皿に残った最後のものを取るのは厳禁です。欲しい時は残ったものを半分に切り分けて取り、その次はその半分…と繰り返していきます。最後には、小さなかけらが残るようにしましょう。
遠慮深い日本人が最後の1ピースに手を出すことはあまりないかもしれませんが、逆にいえば、「最後の1ピースを食べたい時は半分に分ければOK」ということでもありますね。
ドイツ
じゃがいもなどの柔らかい食べ物は、なるべくフォークで切りましょう。ナイフで切ると、暗に「固いからナイフが必要」と言っていることになるのでマナー違反です。サラダのレタスをナイフで切ってはいけません。フォークとナイフを使って、折りたたんで食べましょう。
ドイツでもイギリスと同様、フォークは左手、ナイフは右手という原則があります。左手でじゃがいもを切ったり、レタスを折りたたんだりするのは慣れない人には訓練が必要になりそうですね。
フランス
パンはかじらず、必ず一口大にちぎって食べましょう。パンに乗せたチーズを伸ばすのはマナー違反です。
カマンベールやロックフォールのような柔らかいチーズは、ついバターのようにパンにのばしたくなります。でもフランスでは、小さく切ったパンに小さく切ったチーズをちょこんとのせて一口で食べるのが良いようです。
ロシア
花を手みやげにするときは、必ず奇数本にしてください。ウォッカを飲む時には何も混ぜず、氷も入れません。
偶数本の花は、ロシアではお葬式に使われるそうです。さらに黄色の花もお葬式用なので、避けたほうが良いでしょう。
アジア・中東
韓国
韓国では食べるペースを周りの人と合わせるのがマナーです。早すぎたり、遅すぎたりしてはいけません。スプーンや箸をお皿にあててカチャカチャ音を立てないようにしましょう。
日本では「早飯も芸のうち」と言いますが、韓国では周りの人に合わせて食べるのが良いとされています。
フィリピン
隣の人の飲み物が半分空いたら、注ぎ足してあげましょう。食事の席に早めに到着するのはNGです。必ず15〜30分遅れていきましょう。
日本と同じ「差しつ差されつ」の文化があるフィリピン。フィリピンの人と一緒に食事をする機会があったら、その人の飲み物がちゃんと入っているか、気を配りたいものです。
タイ
タイの人にとって食事とは社交の場であり、その場で一番裕福だと思われている人が支払いをします。お箸を器に置きっぱなしにするのは縁起が悪いのでやめましょう。
タイでは外国人の方が裕福であることが多いため、タイ人と日本人が一緒に食事をすると、日本人が支払うものだと期待される傾向があります。この点は覚えておいた方がよさそうです。
アフガニスタン
床にパンが落ちたら、拾ってキスをするのがマナーです。ゲストをドアの近くに座らせてはいけません。
アフガニスタンでも、お客様はドアから遠いところに座ることになっているそうです。日本の上座・下座と似ていて、興味深いですね。
中東全般
食事中は静かにしましょう。食べ物を口に運んだり、人に渡す時に左手を使ってはいけません。
中東やインドでは「左手は不浄」とされています。彼らが右手だけで食事をするのはそのためです。食べ物以外のものを人に渡す時にも、必ず右手で渡します。
アフリカ
ケニア
必ず食事の前に手を洗います。そのための水が入った鉢が食卓に運ばれてくることもあります。ケニアのマナーでは、その場で最年長の男性より先に食べ始めるのはNGです。
ケニアでは食事を手で食べるので、手を洗うのが大事な習慣なのですね。またアフリカや中東でも、日本と同じように年長者を敬う文化があるようです。
タンザニア
ビールはボトルからではなく、必ずグラスに注いで飲みます。床に座って食べる時であっても、靴の底を人に見せてはいけません。
最近は日本でも小さな瓶で飲むビールが定着してきましたが、タンザニアではマナー違反なのですね。
エチオピア
ウェイターを呼ぶときは手を叩いて呼びます。食事中に汚れた指をなめるのはとても行儀が悪いとされています。
エチオピアでも手づかみで食事をするので、手についた汚れをとりたくなります。でも手が食器と同じだと考えたら、指をなめるのは日本で言うところの「ねぶり箸」のようなものなのかもしれません。
海外に行かなくても活きる、マナーの知識
こうして見てみると、国や地域が違えば、気にするポイントもそれぞれまったく違うということが改めてわかります。初めて行く国では、ポイントだけでも押さえておきたいところですね。eDiplomatやetiquette scholarといったサイトでは世界各国のマナーを広範囲にまとめているので、こういった情報を事前にチェックしておくのもよいでしょう。
また欧米人から見ると、麺類をすする音とオナラやゲップは同じレベルで不快なもののようです。日本にいる時も、異文化の人と近くにいる時は配慮したいものですね。それと同時に、こういった異文化のマナーを知っておけば、日本に来た外国人の「えっ?」と思うふるまいを見ても寛容になれる気がします。
Source: Langfords, Huffington Post, german-way, goabroad, Thrillist
Writer: MIHO FUKUDA