アップルのSiriやマイクロソフトのCortana(コルタナ)など、最近のコンピューターやスマートフォンの多くには何らかの人工知能(AI)が搭載されています。現在ハイテク企業各社が競うようにAIを開発していますが、近頃海外で急速に存在感を見せているのが、アマゾンから発売されているスピーカー型の音声アシスタント端末Amazon Echo(以下Echo)です。
検索や入力は話しかけるだけでOK
Echoはアマゾンが開発したAI「Alexa(アレクサ)」を搭載し、音声で対話できます。Wi-Fi経由でネットにつながっており、「今日の天気は?」「ニュース速報を教えて」といった質問に答えてくれたり、音声コマンドでSpotifyなどの音楽アプリやPrime Music上の曲を再生してくれたりします。アマゾンのサイトでの買い物も、Echoを使えば音声だけでできます。2014年11月にアメリカで発売されたEchoは、2016年の年末商戦前の時点で累計1100万台以上売れたと報道されています。日本ではまだ発売されていませんが、2017年内には上陸するのではないかと予想されています。
Echoに搭載されているAlexaはスマホやパソコンで言えばOSのような位置づけです。「スキル」と呼ばれるアマゾン以外の企業が自社に合わせて開発したアプリをEchoに追加することで様々な機能を使うことができます。すでに今の時点で、照明をコントロールしたり、ピザを注文したり、Uberを呼んだりといった1万5000ほどのスキルがリリースされています。
私も自宅でEchoを使っているのですが、いつでも声だけで操作できることがとても便利です。たとえば食事の支度中にBGMが欲しくなったとき、スマートフォンだと自分がスマートフォンのある場所まで移動する必要があるし、手が汚れていたら洗わなくてはいけません。でもEchoなら、声で「Play 80s Music(80年代音楽をかけて)」と言うだけでいいのです。
各社が音声アシスタント端末を発表、あなたはどれを選ぶ?
そんなEchoには、すでにいくつかのバリエーションがあります。
初代Echoに加え、それを小さくして家の各部屋に配置できるようにしたEcho Dot、持ち歩いて使えるAmazon Tap。さらに最近ではカメラが付いたEcho Lookや、スクリーン搭載のEcho Showが発表されました。
Echo Lookでは、日々のコーディネートを撮影して自分だけのルックブックを作ったりできるだけでなく、ユーザーの好みをAIが学習することでAlexaがコーディネートを提案したり、ファッションの専門家の知見に基づくアドバイスをしてくれたりもします。Echo Showはビデオ通話をしたり、セキュリティカメラやベビーモニターとつなげられます。
Echoがヒットしてからというものの、グーグルからはGoogle Homeが発売され、マイクロソフトのCortana搭載スピーカーInvokeも2017年秋に発売されることになりました。6月6日に開催されたWWDCでは、アップルもSiriを搭載した音声アシスタント端末HomePodを12月に発売すると発表(今の時点では米英豪のみ)、さらに6月15日にはLINEもAIプラットフォームClobaを搭載したスマートスピーカーWAVEを発表し、まさにハイテク企業各社がしのぎを削っている状態です。
また、据え置き型の端末だけではなく車載の音声アシスタント端末も登場し、使える場所が屋外にも広がっていく見込みです。たとえばフォードの車では2017年夏からAlexaが搭載され、運転中に音声で天気予報を聞いたり、ショッピングリストを編集するといったことが可能になる予定です。
これからは、より「察してくれる」サービスが増える
こうしてAIが生活の隅々に行き渡っていくと、アマゾンやグーグルといった企業は私たちの生活や消費に関する、より多面的なデータをリアルタイムで入手できるようになっていくでしょう。そこにはちょっとした怖さもある半面、多くの人の利用パターンを分析することで、より便利でかゆいところに手の届くサービスへとつながっていく期待もあります。
たとえば、買い物リストを自動作成し、ユーザーが承認すれば発注までしてくれる、よく履いているパンツに合うジャケットを流行や体型まで加味してお勧めしてくれる、疲れ気味のときはリラックスできる音楽を流して照明も自動調整してくれる、ということまでできるようになるかもしれません。
実際に今の時点で、文字通り指一本動かすことなくピザのデリバリーを注文したり、Uberを呼んだりできています。5年後、10年後には、その利便性が広く普及するとともに、さらに洗練されていることは間違いありません。その頃には、AIアシスタントが人間のアシスタント以上に有能な存在となり、今の私たちがインターネットなしの生活ができなくなっているのと同じように、もはやAIなしの生活が考えられないほど当たり前の存在になっているのかもしれません。
Source: アマゾン, アップル, グーグル, ハーマンカードン, TechCrunch Japan1, 2
Image by: アマゾン, アップル, グーグル, ハーマンカードン
Text by: MIHO FUKUDA