足元はかく語りき:NY流ビジネスの第一印象を制するイメージマネジメントvol.04

「女性ビジネス・プロフェッショナルに必須とされる三種の神器は?」

そう聞かれたら迷わず答えるアイテムのひとつが靴。その人の本質と日常が現れるのが「○○元」と付く先端の部分であり、中でも「足元」は顕著にその人の存在や生き様を映す「佇まい」が現れます。私自身、小さい頃からこの部分に関して厳しくしつけられてきたことにも関係しますが、大人になり、人を分析する仕事についてからは一層、足元を見れば色々な意味でその人がわかると実感しています。

間違った靴選びは、チーム全体のパフォーマンスを低下させる

ビジネス・プロフェッショナルの女性の足元に求められるのは、「端正さ」と「快適さ」。そして「はいた瞬間、身体中に心地よい緊張感が走り、意識が本番モードに切り替わる」そんな感覚を覚える靴。

たとえ宝石のように美しい靴でも、はき心地が悪ければ「ビジネス・パンプス」としての意味を成しません。反対に、はき心地ばかりが重視されて緊張感のない靴など、ビジネスシーンでは問答無用で却下。前者を重視する人は、仕事をする意識を疑われ、後者を重視する人は美的感覚と緊張感が欠如していると思われます。あちらを立ててればこちらがたたず、なかなか難しいのが自分に合った「ビジネス・パンプス」選びでしょう。

以前、仕事で一緒になった女性は前者でした。かなりの頻度で“可愛い基準”で選んだ靴を履いており、思い出すだけでも「足が痛い」「歩きにくい」という言葉をかなり耳にした記憶があります。道でも階段でも靴がパカパカするため行動が鈍くなり、完全に仕事のパフォーマンスが悪くなっている女性。そして、彼女の「可愛い」基準の靴選びによって、一緒に動く人の仕事のパフォーマンスまでをも落とすという、悪影響を与えていました。

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靴はその人の動きと直結するため、周囲を巻き込むマイナス作用をも引き起こすのです。宝石のようだけれど歩きにくい靴は、お付きの人がすべて身の回りの世話をしてくれて、歩くのは数歩、お車で移動する方向け。ビジネス・プロフェッショナルはクイーンでもプリンセスでもありません。役目が違います。颯爽と歩く姿勢を見せ、その行動で周囲に認めさせるのも力のひとつです。

また、足の快適さばかりを考えて、ちゃんとしたパンプスを履こうとしない後者の方々も多数。実は日本にかなり多くいらっしゃると見ています。さまざまな理由がありますが、その多くは外反母趾。確かにハイヒールを長時間履いていると痛いし辛い、それは理解できます。しかし、だからと言って、ビジネス・プロフェッショナルとしての重要な場面における役割としてのプレゼンスを放棄してしまっていいものなのだろうか?と時々思うのです。

快適な靴は、締め付けがなく安定していることが何よりも重要なため、つま先が太くて丸い、踵が太い。どれもビジネスシーンに求められるシャープさや洗練とは対極です。そうなると、重要な場で服を決めたとしても、足元ですべてが帳消しになってしまうのです。もしくは、靴との調和を取ることになり、自然と丸みのある傾向の装いになります。

いずれにせよ、ビジネス・プロフェッショナルが、いざという時に見せるべき「威厳」と「無言の説得力」が出力できないというお粗末な結果になってしまうのです。実際、とある女性エグゼクティブで、丸めの楽な靴を履いて柔らかめの装いをしていた方が、クライアントとの打ち合わせをしている時に、後輩男性の方が上司に見られてしまっていたという例もあります。

足が痛いからハイヒールは履けないと決めつけず、大事なその時だけでも靴を履き替えることはできるはず。誰も、朝から晩まで履いていろとは言わないですから。持ち歩きの荷物が増える? 靴一足持ち歩いて履き替えることを億劫がって正当な評価が得られないのと、どちらが得かよく考えれば、知的なビジネス・プロフェッショナルであれば答えはひとつ。ひと手間かけることで、自分も楽で正しい評価がついてくる、その上オン・オフも切り替えられるメリットもあると思えば、良きことです。

足元を見られるとは、覚悟を見られること

靴は服などとは比較にならないほど選ぶのが難しく、足元は社会的立場にも影響を及ぼす重要な部分。柔軟な考えと行動で結果を出す、それがビジネス・プロフェッショナルのあり方です。

かくいう私は、靴が合わなすぎて、もうすべてを投げ打って本気で帰宅したくなったことが過去に数回ありました。とはいえ、そんなことはできるわけもなく、見つけた靴屋に飛びこみ、まったく納得はいかなかったけれど、履いていたものよりもマシなものを購入。

最悪の事態回避策としては正解でしたが、その靴が陽の目を見ることはその後なく、二度とこんなことをしないと誓ったあの日以来、自分の目的と自分の足の両方にかなう靴探しと、購入後に自分の足に完全にフィットさせる調整には、時間も労力もかけるようになりました。自分の体を一番下で支え、パフォーマンスを上げてくれる靴、気分を引き締めてくれて社会的な存在感を底辺で支える足元には、それくらいの価値があるのです。「足元を見られる」とは覚悟を見られることにもつながります。

ビジネス・プロフェッショナルな女性のパンプスと言えば、思い出してしまうのが、元米大統領ビル・クリントン氏の娘、元ファースト・ドーターのチェルシー・クリントン氏のお話。彼女が頻繁にはいているというヌードカラーのパテントレザー・ハイヒールは、まさに「ビジネス・パンプス」です。ところが、意地悪なメディアに「お気に入りのボロ靴で現れた」と報道されてしまいました。

その報道に対しての彼女の回答は「どうして私が傷のある靴を履いているのか? それは本当に快適だから。働いている女性特にニューヨークの働く女性は共感してくれるのではないかと思います。良い靴を見つけると、そればかり履いてしまうんです」。まったくもって同感です。ご興味のある方は、この映像をどうぞ。

Chelsea Clinton Laughs at Critics Hating on Her Worn-Down Shoes

彼女は衣装提供スポンサーのいるモデルでも女優でもありません。メディアに露出する機会があるとはいえ、履いている靴は当然毎回新品ということもなければ、実はそこまで傷んでいるわけでもありません。履き癖だって、ヒールについた少々の傷だって、あるのが自然でしょう。それだけ自分の足と立場や目的にかなうパンプスを選ぶことは、忙しいビジネス・プロフェッショナルにとって至難の技なのです。

ハイヒールの高さは最低でも7センチ

ここで「ビジネス・パンプス」を選ぶ際の基準を、いくつか挙げてみましょう。世の中的に、本などではビジネス・パンプスのヒールの高さは、次のように記されています、「歩きやすいスタイルは3センチ、ビジネスシーンでは5センチ」。しかし、私は常に強調します「ビジネス・パンプスのヒールは少なくとも7センチ必要」と。ビジネスシーンでは、大きく見えることはいいことです。大きいということは、その存在感が大きいということ。それは実寸の話ではなく、イメージ的に。なので、視覚のトリックだろうがなんだろうが、背が高く見えることは威厳があり、その場において優位に働くのです。

より自分に合いやすいハイヒールの高さを算出できる計算式がこちら。

「身長÷30センチ+2センチ

その他、低めの楽な靴を選ぶ時「身長÷30-2センチ」、華やか過ぎてはいけない場面には「身長÷30センチ」というのもご参考までに。

さらに、もうひとつお伝えしたいのは、背を高く見せるということは、むやみやたらと高いヒールのパンプスを履くこととイコールではないということです。そこで参考になるのが、全身のバランスを重視したこの計算式。

美脚の黄金比率「腰上:腰下=1:1.618

「高いヒールを選ぶ時」が想定された、全身の比率が考えられています。

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以前パーティ会場で、身長が150cmそこそこと思しき女性が、12cmくらいのピンヒールを履いているのを見みて、思わず「竹馬?」とつぶやいてしまったことがありました。黙って立っているときも、残念ながらきれいには見えず、歩くと重心のバランスが崩れているため、体が安定せず動きがユラユラしてしまいます。

その様子は「私は自分を客観的に見ることも、自分の状態も把握できていない女です」と宣言してしまっているようで、何とも残念でした。自分なりのバランスがすべての土台。それがあってこそ、その人の存在感を最大化できます。姿勢も歩き方も颯爽と美しく保てることこそ、ビジネス・プロフェッショナルが目指すべき知性あるエレガンスですから。

最後に、靴にまつわるこのような言葉を。

“For women, shoes are the most important. Good shoes take you good places.”

調べてみると、出典はイタリアだとか、ヨーロッパだとか、Seo Min Hyunが言ったとか、説はあれこれあります。日本語訳すると「女性たちよ、靴は最も重要です。良い靴はあなたを良い場所へ連れて行ってくれるのです」という意味。ここで大事なのは考え方です。この言葉の本質にあるのは「連れて行ってくれる」という受動的なことではありません。自分の立場や目的、場面のすべてを把握し、それにふさわしい適切な靴を選ぶことのできるあなた自身であれば、周囲も認め、自分の足で望む場所へと難なく歩いていけるということです。

「足元」には、その人の存在・生き様の「佇まい」がはっきり現れる。そう、すべてはあなた次第。あなたの足元は見られていますよ。

日野 江都子  Niena Etsuko Hino
日野 江都子
Niena Etsuko Hino
国際イメージコンサルタント /株式会社リアル コスモポリタン CEO
東京生まれ ニューヨーク在住


武蔵野美術短期大学在学中、コロンビア大学(米国・NY)へ留学。武蔵野美術大学卒業後、パーソンズ美術大学(米国・NY)に留学、「ファッション&イメージコンサルティング」コース修了、ディプロマを取得。フリーランスを経て、2004年、ニューヨークで株式会社リアル コスモポリタンを設立。

ニューヨークと東京を拠点とし、国際的に活躍するトップエグゼクティブ・ビジネスプロフェッショナルを対象に、国際イメージコンサルタントの第一人者として20余年にわたり活動。NY在住の最新かつ生のグローバル感覚と俯瞰的なビジネス知識を持ち、日欧米亜合わせ数千人のハイプロファイリング・クライアント(日系企業や外資企業日本法人の経営層、政治家、財界人、セレブリティーなど)を対象に、企業ブランドとトップのパーソナルイメージを含めた、包括的なブランディングと施策提案など総合的なコンサルティングを手がけている。

近年は男性トップに加え、女性トップエグゼクティブ(経営者・執行役員・上級管理職)対象のプレゼンス向上コンサルティングや講演・研修、執筆に力を入れており、銀座 英國屋との提携による、女性エグゼクティブ向けスーツ監修のほか商品開発監修、国際基準のビジネス・スタイルや国際的なビジネス・ルールの提起、アドバイザリー、海外進出を目指す企業・個人に対し、グローバルマーケットでのブランディングやビジネス・コンサルティングまでプロフェッショナルチームを組み、総合的に行っている。

AICI(国際イメージコンサルタント協会)ニューヨーク支部元ボードメンバー。スティービーアワード審査員。

■主な著書・執筆

『仕事力をアップする身だしなみ 40のルール』(日本経済新聞出版社) 、
『Premium Image management for Men』DVD監修(SONY PCL)、
『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム) 等

■連載
『Business Rule Book』(小学館「Precious」2016年10月号別冊より「precious.jp」連載中)
https://precious.jp/category/business-rule/
『ニーナ 江都子 日野の戦略的プレゼンス』(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/052600138/

その他、メディアへの執筆多数


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