洗濯最後の砦、たたみ・仕分けをAIで。次世代神器ランドロイド
かつて洗濯は、すべて女性の手作業で行われ、労力的にも時間的にも家事の中に占める割合がもっとも高い作業のひとつでした。1950年代以降の洗濯機の普及は女性を重労働から解放し、社会進出の後押しになったとも言われています。
現在では洗濯乾燥機が、食器洗い乾燥機や掃除ロボットと併せて「三種の神器」と呼ばれています。 とはいえ、洗濯のための家事労働がゼロになったわけではありません。乾燥した洗濯物を、たたむ・仕分ける・しまうという作業が残っているからです。洗濯物の山から直接洋服を探し出して着るという手もありますが、洋服をたたまずに放置しておくと、しわが付いてしまいます。私たちはまだまだ、洗濯に関わる労働から完全には解放されていないのです。
そこで考案されたのが、全自動洗濯物たたみ機「ランドロイド」です。ランドロイドは、洗濯・乾燥が終わった洗濯物を入れると、それがTシャツなのかタオルなのかといったことをAIで識別して分別し、きれいにたたんでくれるマシンです。2015年10月にseven dreamers laboratories(以下、セブンドリーマーズ)とパナソニック、大和ハウス工業の三社での共同開発が発表され、2017年5月30日に予約が開始されました。Engadgetによると、出荷開始は2017年度内に予定されているとのことです。
現在開発中のランドロイドには洗濯・乾燥機能はありません。使い方としては「日中に洗濯乾燥したものを夜ランドロイドでたたむ」といったイメージになります。それだけでもかなりの手間が省けますが、将来的には洗濯乾燥機と一体化したものも目指しているそうです。
Tシャツや下着を見分け、たたむという作業は、人間であれば子どもにもできることですが、機械にとっては簡単ではありません。セブンドリーマーズは2005年にランドロイドの研究開発をスタートし、10年以上かけて画像解析や人工知能を駆使した独自の基礎技術を作り上げました。動作音の音量を低下させることにもこだわり、ベッドルームに置いても睡眠を妨げないほどの静かさです。
世界初のマシンということで、価格は185万円程度と車1台分ほどになりますが、車よりもランドロイドの方が欲しい、という人は少なくないことでしょう。ただサイズが大型の冷蔵庫ほどあるので、最初に導入するのは経済的にも空間的にも余裕のある家庭からとなりそうです。
でもランドロイドには、単に今ある家事を省力化すること以上の可能性があります。月額制ファッションレンタルの「airCloset」との協業によって、ランドロイドアプリを通じて「あまり着ていない服を活かすコーディネート」を提案するサービスも開発されています。 またネットに接続する家電を開発するスタートアップ企業・Cerevoとも連携し、同社のロボットデスクライト「Lumigent」に話しかけることでランドロイドを操作することもできるようになりそうです。
セブンドリーマーズの社長、阪根信一氏はTHE BRIDGEのインタビューの中で、ランドロイド開発のきっかけは「妻の一言」にあったと語っています。今後開発すべき商品を検討している中で、どんなものがあったらいいかと妻にたずねたところ、すぐに「洗濯物をたためる機械にきまってるじゃない」という答えが返ってきたそうです。
独自技術を使った家電というと、技術ありきのとっつきにくい製品も少なくない中、ランドロイドはまさに女性のニーズが技術を引っ張っていった好例なのです。 このような姿勢が掃除や食器洗い、そして現在まだ機械化が進んでいない料理といった分野にも反映されていけば、家庭における家事負担はますます少なくなることでしょう。そうすれば仕事や子育てをしながらでも、家族や友人とゆったり過ごす時間や、趣味に打ち込む時間を増やせるようになるのではないでしょうか。