「あっ、こう言えばいいのか!」仕事の人間関係を円滑にするコツ 〜専門家に学ぶコミュニケーション力〜

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「パワハラ」のつもりはないのに、注意すると部下がへこむ。良かれと思ってアドバイスしているつもりなのに、相手に通じない…
リーダーになると、職場でコミュニケーションの悩みがついてまわります。

「親業訓練協会」のインストラクター養成や「日本アンガーマネジメント協会」のファシリテーターとしてご活躍されているコミュニケーション専門家の瀬川文子さんも、キャビンアテンダントを経たあとのご結婚で継子との関係づくりに深く悩まれ、それをきかっけに円滑なコミュニケーションの取り方を必死に学ばれたそうです。

数多くの書籍の執筆や講演を通して、人間関係に悩むビジネスマンや子育て中の親たちに相手とのより良い関係を築く方法を伝えている瀬川さんに、「人間関係を円滑にするコツ」を教えていただきました。

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こんにちは、コミュニケーション・インストラクターの瀬川文子です。

職場でもプライベートでも生きていく上で人間関係は、人生に大きな影響を与えます。皆さんは職場やプライベートで人間関係に悩んだことはありませんか?

私自身もコミュニケーションの取り方を学ぶ前は、子育ての過程で長女(夫が再婚のため血の繋がりがない娘です)との人間関係が上手くいかず、深い悩みを抱え、人生そのものが灰色の辛い時期を過ごした経験があります。長女との人間関係の悪化がきっかけでゴードンメソッドに出会いました。お陰様で今は良い関係が築け、とても幸せです。

FUMIKODA JOURNAL コミュニケーション

私が22年間学び続け、今はコミュニケーションのインストラクターとして提供している「ゴードンメソッド」はアメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士が考案したコミュニケーションのトレーニングプログラムです。

頭の知識だけではなく、実際の生活の中で活かせるように理論と同時にロールプレイやグループディスカッションを積み重ねます。新しいコミュニケーションスタイルを身につけていく実践的なプログラムです。

最初に開発されたプログラムが親向けであったため、日本では「親業訓練」(おやぎようくんれん)という名前で広く知られています。「ゴードンメソッド」はあらゆる人間関係に効果的で、現在は様々な人間関係に焦点を当てたプログラムを提供しています。

もちろんビジネスにも効果的です。自分の人生を自分らしく、仕事でも前向きに生きていくためには周りの人の協力が必要です。お互いに気持ちよく協力したり、協力されたりできることで、仕事も人生も豊かになります。そのためには周りの人と分かり合えるコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことが不可欠です。特に職場では価値観も考えも違う多様性の中で、お互いに気持ちよく、そして一人一人が自己実現できるようにしたいものです。

それにはコミュニケーション力は欠かせません。効果的なコミュニケーションのポイントを身につけることが職場やプライベートで役に立ち、人生が好転することを私自身が実感しています。とても楽に生きられるようになりました。

コミュニケーションの大切な3つのポイント

ゴードンメソッドの中で大切にしているポイントがいくつかあります。今回は問題所有の原則」「行動、事実を捉える」「権威の使い方の3つを取り上げてみます。
それぞれについて順を追って、例をあげながらお伝えします。

まず、問題所有の原則とは、悩みや問題を抱えている人にその悩みや問題の所有権があるという考え方です。他者が問題を取り上げて解決することは依存を助長し、自立を妨げます。また、その人が本来持っている解決力を尊重しないことになるのです。

キャリアを積まれた皆さんは職場では人材を育てる立場にいらっしゃることと思います。新人が仕事を覚えて経験を積んでいく過程では教えることも必要です。ただ、やがては自分の頭で考え、自分で判断し、自分で責任を取れる人材に育つことを期待しているのではないでしょうか? 

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そのためには問題や悩み、壁にぶち当たっている人の問題の所有権を侵さずに見守ることも大切です。自分が所有権を取り上げ、その人に代わってなんでも解決してしまうと、相手はあなたに依存し、責任も取らなくなります。その人が自分で解決に向かえるように援助に留めておくことが実は効果的なのです。

もちろん状況によっては上位のものが自ら解決に乗り出し、責任をとることが必要な場面もあります。

例えば、部下や同僚が「クライアントが無理なこと言ってくるんですよ」と悩みを打ち明けた時に、こんな対応をすることはありませんか?

「無理なことは無理ってはっきり言いなさい!」(指示・命令)
「はっきり言わないとあなたが後で困ることになるんだよ」(脅迫)
「無理だって分かってるなら、きちんと言うべきでしょ!)」(説教)
「あなたも曖昧な態度を取ってるからじゃないの」(分析・解釈)

 

などなど。このような対応は、こちらとしては相手のためを思い、善意のアドバイスをしているつもりでも、相手は「この人に相談してもダメだ」「言われなくても分かってるよ」と抵抗や反発の気持ちが湧いてきます。

「自分は仕事ができないダメな人間だ」と自尊心が傷ついたりもします。これらはコミュニケーションが止まりやすい対応なのです。まさに「問題所有の原則」を侵し、相手の問題解決力を信用せず、尊重していないコミュニケーションなのです。

このような対応は「お決まりの12の型」と言い、コミュニケーションの障害になるリスクが高いので注意が必要です。(その他のお決まりの12の型については「職場に活かすベストコミュニケーション」(日本規格協会)をお読みください。)

むしろ、こんな時には相手の話をしっかり聞くことです。聞くことで悩みや問題を抱えている本人が自分で解決策を考え、問題を整理する援助ができます。

聞くことで相手の考え、解決能力を促す援助ができる

 聞き方には大きく分けると「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」があります。

「受動的な聞き方」は、黙って聞く、あいづちを打つ、促すなどして受け身で聞く方法です。相手は話しやすくなりますので効果的なのですが限界があります。受動的な聞き方だけで対応していると、相手は私が本当に理解して聞いているのか、私に受け入れられているのかが分からなくなり不安になることがあります。

その限界がないのが「能動的な聞き方」です。相手が言っていることを理解したことを確認していく聞き方です。「あなたが言いたいことは~ですね。そのように私は理解しましたが、それで正しいですか?」というような確認のフィードバックをすることです。

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先ほどの例「クライアントが無理なこと言ってくるんですよ」に対して、3つの「能動的な聞き方」ができます。

「クライアントが無理なことを言ってくるんだね?」(繰り返す)
「クライアントが一方的なんだね?」(言い換える)
「クライアントに無理なこと言われて困っているんだね?」(気持ちをくむ)

 

これらの聞き方は、善悪の判断や自分の意見は交えていません。相手の言いたいことを正確に理解しよとする姿勢が相手に伝わります。相手はこのように確認されたら「そうなんです」と、自分の言ったことが正確に理解されたとホッとします。

自分が抱えている事情や問題を話しやすくなります。安心して自分のことを話せます。話すことで自分の問題点が明確になったり、整理できたりします。自ら「クライアントにもう一度こちらの状況を丁寧に説明してきます」などのように自分なりの解決策を考えることができるようになります。

「もう一度説明してきなさい」と指示されて嫌々行うのと、自ら考えて行動するのでは本人のやる気にも違いが出ます。もちろん、解決策が出てこない時もあります。

しかし、充分に自分の状況を理解してもらった後なら、上司の指示や解決策も抵抗なく、受け入れやすくなります。自立や責任感の育成につながる対応です。ただし、能動的な聞き方が効果的なのは、相手が困っている時、それに共感できる時だけです。

相手の言っていること、やっていることがイヤだ、困ったと感じたら
「行動、事実を捉える」ことが大切 

一方、相手の言っていること、やっていることがイヤだと思ったときには、冒頭にあげた行動、事実を捉えることがとても大切になります。

イヤだと思うとつい相手にレッテルを貼って態度や性格を非難するような言い方になることが多くなります。私が問題所有者になった時に、私を語らずに相手を責めがちなのです。「あなた」つまり相手を主語にして相手を責める言い方です。

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日本語は主語があいまいで、いちいちあなたとは言わないかもしれませんが、「あなたのせい」「あなたが悪い」「あなたの配慮が足りない」というような伝え方をしてしまうことが多々あります。このような表現を「あなたメッセージ」と名づけています。

「(あなた)自分勝手ですよ」
「(あなた)だらしないな」
「(あなた)なんて無責任なの」

 

自分勝手、だらしない、無責任と感じる前には、必ず相手の行動や事実があるはずです。

「会議の日程を自分の都合に合わせて直前に変えた」「連絡もなしに会議に遅れた」などという相手の行動がまずあるはずです。その行動に対して「自分勝手だ」とあなたがレッテルを貼っているのです。

何を見て「だらしない」と判断したのでしょうか?どんな言葉を聞いて「無責任だ」と判断したのでしょうか?態度や性格について否定的な感情を相手にぶつけたら、全否定されたと相手は感じます。抵抗や反発が強くなります。自分の行動を変えてあなたに協力しようという気持ちが生まれません。または行動を変えたとしても相手は内心では納得していません。

一方的な言い方をするあなたに対して良い印象は持てなくなります。協力し合える豊かな関係、信頼関係は築きにくくなります。

こんな場面では自己表現することが大切なのです。困っているのは私なのです。私を主語に相手の「行動」、私に対する「影響」、影響に対する私の「感情」の3つの要素を入れて伝えることが効果的です。このような伝え方を「三部構成のわたしメッセージ」と名付けています。

  1. 行動:見たり、聞いたりした相手の行動・事実(非難がましくなく)
  2. 影響または理由:相手の行動によって被る具体的な影響、または相手や周りへの影響
  3. 感情:影響に対する私の率直な気持ち

相手の行動が私に影響を与え、その結果私が否定的な感情を持っていることを直接、本心で伝えるので勇気がいるかもしれません。しかし、お互いの望んでいることを尊重し合うコミュニケーションの土台になるものの言い方です。

「あなたメッセージ」に比べると相手の自尊心や相手との関係を傷つけるリスクが少ないのです。率直に正直でいられることで自分自身の自己肯定感も高めます。 

例えば、以下のような伝え方になります。

「会議の日程をご自分の都合に合わせて直前に変えられると、私も日程調整が大変で、慌てて混乱します」

このように「わたしメッセージ」で伝えても、相手の行動が嫌だ、困るという内容になりますので、相手は抵抗や反発をする可能性があります。

その時には相手の言い分や抵抗を「能動的な聞き方」で確認します。言いたいことを言ったら、相手の言い分を聞くことです。聞くことで相手を尊重していることが伝わります。双方向のコミュニケーションを目指すことが協力を得られるポイントになります。

ゴードンメソッドの自己表現の仕方には、この他にも問題を予防するわたしメッセージ、返事をするときのわたしメッセージなどの構文があり、とても便利に使えます。 

権威の使い方で人材の育ち方に差が出る

3つ目のポイントは権威の使い方です。組織では縦型の指示命令系統に従って仕事をすることが大半です。その時に気を付けたいのが「権威の使い方」です。

辞書を引くと、この権威には2つの意味があります。

①他人を強制し、服従させる威力。権力と同じ意味。=POWER

②その道で第一人者と認められる人。大家。 =AUTHORITY

私たちは、この①と②の権威の違いを意識せずに使っています。しかし、どちらの権威を使うかによって、人間関係に大きな差を生み、人材育成にも影響します。

自分では②の権威を使って、部下や後輩を育てているつもりが、一方通行のコミュニケーションをすると誤解されることがあります。

一方通行は相手に①の権力を使われたと感じさせてしまうのです。権力を使えば上司と部下が支配者と被支配者の関係になります。支配される者は、支配する者を心から信頼することができません。いつ力をふるわれるかを常に心配し、恐れ・不安・悲しみ・無力感・欲求不満に陥ります。そういう理不尽な力から自分を守ろうとします。嘘をついたり、反抗したり、いやいや服従したり、弱いものいじめで自分の鬱憤をはらしたりします。

しまいには支配者から逃げ出したりすることになります。組織の中で権力がはびこれば、生産性は上がらず、心理的安全性の確保、人材の確保も難しくなります。

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しかし、②の意味の権威を使う場合には、人間関係には問題が起きることが少ないのです。なぜなら第一人者とは他者から尊敬され、認められる存在だからです。

周りの人は、一目置いているので、その第一人者の意見を聞きたい、教えを請いたいと自ら願うからです。第一人者が強制しなくても、相手が進んで相談に来るのです。

優秀な人材を育てたいと望むなら、支配者になるのではなく、第一人者になる努力が必要です。パワハラだと相手が受け取らないように、意識的に相手の言い分にも耳を傾けるのです。このような双方向のコミュニケーション力がリーダーには必須なのです。 

コミュニケーションの取り方については様々な情報がありますが、これを機会に真のリーダーシップが学べる「ゴードンメソッド」に関心を持っていただければ嬉しいです。 

 

瀬川文子氏 FUMIKODA

瀬川 文子(せがわ ふみこ)

 

1973年日本航空客室乗務員として入社し、14年間国際線勤務後、結婚のために退社。 子育てをする傍ら、米国のコミュニケーション訓練のプログラム「P.E.T.親業」の指導員 資格を取得。お互いが分かり合えるコミュニケーションの大切さを、講演、研修、著作 で伝えることをライフワークとして活躍中。家庭教育も企業人教育も基本は分かり合える 信頼関係がポイント。子育て支援から企業研修まで幅広い視点で、コミュニケーションの 極意を楽しく、分かりやすく、参加型の講演スタイルで伝授。企業の安全大会の講師とし ても活躍。2010年より親業訓練協会・企画室主任としてインストラクター養成を担当。 2015年には日本アンガ―マネジメント協会のファシリテーター資格取得。 

【著書】 

  • 『職場に活かすベストコミュニケーション』 日本規格協会
  •  『あっ、こう言えばいいのかゴードン博士の親になるための16の方法』 合同出版 
  • 『ママがおこるとかなしいの』 金の星社 
  • 『ファミリーレッスン』 合同出版 
  • 『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち』 元就出版社 
  • 『ほのぼの母業のびのび父業』 元就出版社

【メディア】 

  • BSフジ「プライムニュース」生出演(2014年8月20日)
  • 月刊誌「STORY」インタビュー記事記載(2015年8月号)
  • リクルート「保護者のためのキャリアガイダンス」インタビュー記事記載(2017年〜2019年)

  • 2019.08.07
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